エイトゲヘナ~出会って秒で食べられました、けど今は凄く幸せです~

中谷 獏天

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243 1日目。

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 終業式を終え荷物を整理した後、クラム夫人の家にお邪魔しました。

 荷解きをした後、先ずは家のお手伝いをしました。
 私はお店の名刺の裏にハンコを押し、シイラは説明書の裏にハンコを押しました。

 ひっくり返す前に、先ずは明らかな印刷ミスが無いかを軽く見てから、裏にハンコを押します。
 単に印刷した紙だけだと、信用度が低いからです。

 更に高級なお店だと、割り印や蝋封を後付けします。

 クラム夫人のお店の品物は価格に上下は有りますが、お安い店です。
 ですが信用が何より大事な店、だそうです。

 そしてお手伝いが終わると、オヤツが出ました。
 それから私は宿題、シイラはお手伝いをしにお店に行き、私には貝の聖獣と執事が付き添いました。

 先ずは向日葵の観察日記です。
 事前に家で植えていたので、陽当たりが良く風通しの良い場所を貝の聖獣に教えて貰い、そこで水をあげます。

《ココ》
『水やり器は有りますか』

《コッチ、使い終わったら元に戻して》
『はい、ありがとうございます』

 水をあげても種は見えなかったので、植え方は正しく行われています。
 後は乾燥具合次第で、お水をあげるかどうかを見極めます。

《暫く土だけを見る事になりそうだね》
『はい』

 それからは書く練習です。
 私は1文字だけなら綺麗に書けるので、単語の練習が課題です、筆記体は3年生からです。

《字を読むのは簡単だけれど、書くのは本当に難しい》
『はい、綺麗に書く事は特に難しいです』

 貝の聖獣も一緒に書く練習をしました。
 fatherお父さんmotherお母さんsister姉妹

 この4つの単語を、先ずは10回ずつ書きました。
 どれも私には無い単語ですが、5文字以上の単語との指定だったので、コレにしました。

「あら、一緒にやってるのね」
《うん、カリグラフィーにも先ずは基本だって言われたから》
「あぁ、それで愛の言葉なんですね」

 貝の聖獣は、愛しているや大好きを練習していました。
 クラム夫人は赤くなって、照れ笑いをしながら、お茶を淹れに行きました。

「お茶を、入れ直してくるわね」
『はい』

 次は音読です。
 その場で保護者等に書いて貰い、ちゃんと音読が出来たかを確認して貰います。

「じゃあ、ちょっと待ってね」
『はい』

 クラム夫人が書いた文章は。
 Take care of the pence and the pounds will take care of themselves.

 小銭を大切にすれば、大金は自然と集まる。
 だそうです。

「コレに書いて有ったの」

 クラム夫人が手に取った本は、堅実な最初の経営学、と書かれた本でした。

『商売はお好きですか』

「んー、最初は全く興味が無かったのだけれど、今はお金の次に好きかも知れないわね」

「やってみて、意外と嵌った、そんな感じでしょうか」
「そうそう、勿論手助けが有ってこそなんだけど、以外と苦じゃなかったのよ」

 大人になっても好きになる事が有るのだと知りました。
 ですのでシイラやレンズにも、好きな事が増えるかも知れません。

「成程」
「あ、お夕飯、迷いに迷ってまだ決めて無いのよね。何か食べたいモノは有る?」
『向こうで良く食べていた、好きな食べ物が食べてみたいです』

「あー、じゃあはい、このまま食べに行きましょう」

 クラム夫人は料理があまり好きでは無いそうなので、幾つかのお店に外注しているんだそうです。
 ですので今日は、そのまま食べに行く事にしました。

「コレは、もしかして」
「エビピラフ、冷凍食品で良くお世話になってたの」

「あぁ、分かります、凄く美味しいですよね」
「しかも、コスパが良い」

「ですよね、コレとサラダとスープで完成」
「そうなのよぉ」

 嗅いだ事の有る匂いに似ていました。

「あ、頂きます」
『頂きます』
「はい、どうぞ」

 食べた事の有る味でした。

『食べた事が有りますが、エビが大きいです』
「あ、食べ辛いかしらね?」

『いいえ、食べ応えが有ります、美味しいです』

 私の知っているエビピラフのエビは小さいですが、コレは大きな海老がブツ切りになっています。
 プリプリでは無く、ブリブリです、ですが美味しいです。

「ブリンブリンで、何か凄い、贅沢」
「けどコレ、敢えて簡単に作って貰ってるの、もっと力を入れた方も有るんだけど。やっぱり慣れ親しんだ味って、コレじゃない?」

「はい、ですね」
『はい、慣れているけど豪華です』
「明日以降も、慣れ親しんだ味が良いかしら?」

『はい、出来ればお願いしたいです』
「じゃあ、明日も楽しみにしててね」

『はい』

 デザートはイチゴの入ったバニラアイスでした。

 それから家に帰り歯磨きをし、お風呂に入りました。
 クラム夫人の家のお風呂は大きいので3人で入って、洗いっこをしました。

 そして就寝前に、コレを書いています。

 今日の分の宿題は済ませました。
 後は確認をして貰い、署名を貰うだけです。

「はい、上手に出来ました」

『このマークは何ですか』
「あ、花丸、とっても良く出来た時のマーク」

 初めて花丸を貰いました。
 グルグルして、花びらが付いたマークです。

『ありがとうございました』
「いえいえ、じゃあ、おやすみなさい」

『はい、おやすみなさい』

 以降は大人の時間です。
 シイラとクラム夫人は、もう少し後で寝る筈です。



「最後のが、キたわね」
「ですよね」

 1つの事柄だけなら、まだ、偶々そう育っただけなのかも知れないと思える。
 けれど、どう考えても、ヒナちゃんは。

「どうしても、何故、と思ってしまうわね」

 幾ら施設の評判が悪くても、手元に置くより遥かにマシだろう、と。
 何故、どうして、そう思えなかったのか。

「ですよね」

 シイラさんの事もそう。
 金遣いの荒いヒステリックな母親に育てられ、大学資金まで使い込まれた、と。

 その事を含め考えると、つまりは維持以外、特に興味が無かった。
 と、どうしようも無い結論に至ってしまう。

 子供を設けたのも維持の為。
 自分の現状を維持する為だけに、手元に置いていた、だけ。

「何が、出来るのかしらね」

 私は普通に育ってきた。
 確かに紆余曲折は有ったけれど、少なくともマトモ親元で育った。

「花丸って、やっぱり、普通は貰えますよね」

「貰った事は」
「今さっき思い出したんですけど、姉から、だけですね」

「加害は、する行為、ネグレクトはしない行為。する意味は、何となく分かる気がするけれど、何故しないで居られるのか全く分からないのよね」

 つい、キツく叱ってしまった。
 心配のあまり、つい熱が入ってしまった。

 それとは真逆の、行わない、と言う行為。
 嫌い、とはまた違う方向の、無関心と言う状態。

「嫌いにも種類が有るのかな、と。1つは無関心、1つは嫌味を言う、嫌うと言う行為。好きの嫌いは反対、の場合の人と、攻撃せずには居られない人が居るのではと」

「確かに、無関心なんて別にダメージが無いじゃないか、そう思っていたけれど。子供には、物凄いダメージがいくのよね」

 攻撃性が表立っているかどうか。
 嫌悪が、どうやって現れるか。

「なので、好きの反対は嫌悪、拒絶か攻撃だと思うんですが」
「そうね、確かに好きの反対は無関心、だけじゃ説明が難しい事が有るものね」

 嫌悪故の無関心さなのか、攻撃性なのか。

 関心が無くとも、気にしなければならない様な状態なら、嫌でも気にせざるを得なくなる。
 安全が確保されるまでは、寧ろ無関心ではいられない。

 ソレが動く生き物なら、特に。

「あの、虫って」
「苦手なの凄く、だから海でお願いしたんだけど。良く考えたら、フナ虫も居るのよね」

「私、凄く、苦手で」
「大丈夫よ、私も苦手だし、ココには守りが有るから。それにどちらかと居れば、大丈夫だから」

「そうなんですね、良かった」
「分かるわ本当、本当に、無理」

「コレ、本能らしいんですよ、目端で動く黒い物体をつい目で追ってしまう。なので軍隊では、主に迷彩なんだそうです」
「あぁ、成程」

「すみません、ありがとうございます」
「いえいえ、コチラこそ」

「じゃあ、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」

 シイラさんにも、花丸をあげようかしら。
 でも、大人が大人にって。

 いえ、後でレンズさんに相談してみよう。
 最高齢の最長老だ、とでも思ってくれ、と言ってくれたのだし。

 シイラさんはレンズさんの妹も同然だ、と。
 ネネさんとは違い、どうやら本当にそう思っているらしいので、甘えてみる事にしよう。
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