エイトゲヘナ~出会って秒で食べられました、けど今は凄く幸せです~

中谷 獏天

文字の大きさ
59 / 255

57 帰還と寂しさ。

しおりを挟む
「お帰りなさいませ」

『ただいま、お帰りなさい』

 アズールが帰って来ました。

「はい、ただいま戻りました」
『ピースが埋まるが分かりました、見えない何処かに穴が空いていたんです、静かで広くて違和感ばかりでした』

「そうだったんですね」
『はい、アズールはどうでしたか、忙しくて忘れていましたか』

「いえ、常にヒナ様の事を考えていましたよ」
『そうだったんですね』

「はい」
『あ、無理にハグしてしまいましたが、嫌だったらすみません』

「いえ、大丈夫ですよ、構いません」
『以後気を付けます、あ、今日は可哀想な王子様と言う物語を読みました。終わった筈なんですが、明日にも続くんだそうです』

「成程、そうだったんですね、詳しくは馬車でも宜しいですか」
『あ、はい、そうします』

 ネネさんに会ったみたいに興奮してしまいました、不思議です。
 ネネさんとは違って約束が有るので、急に離れる可能性は少ないのに、何故か嬉しかったです。



『そう、なら、寂しかったのかも知れないね』

『でも、アズールとは約束が有りますし、役割や役目が有って出掛けているだけです。お買い物に出たのと同じです、必ず戻ってくる筈なのに、どうして寂しいのですか』

『そう思うんだね、ならネネさんと会えない寂しさは、どんなものなんだろうか』
『約束が有りません、いつ会えるか分かりません、会ってくれるか少し分からない部分が有ります。でもアズールは違います、約束が有りますから』

『その約束とは何だろうか』
『辞める時は辞めると言う約束です、契約しました、執事と主人になるって。ですがネネさんとは何も有りません、でも不満は無いです、友達とは契約では有りませんから』

『なら、その契約が無くなるかも知れない、その事についてはどうだろうか』

『残念ですが、次はもっと長く居て貰える方を探します』
『何故かな』

『仲良くはしたいです、あまり仲良くなれない者より、ずっと仲良く居られる方が良いです』

『それは何故だろう、ヒナが嫌いでは無くても、家の事情や仕事内容に不満が有れば辞めてしまうかも知れない』

『信頼だと思います、新任は分かってくれているか少し不安になります、少しの不安でもあまり持っていたくは有りません』

『なら、つまりは面倒だからかな、慣れる手間が有る。信頼する手間も有るし、仲良くなる手間も有る、それらを省く為だけに長く勤めて欲しい』

『それと別れが少し寂しいからだと思います、それに少し悩みます、何度も続いたら私に何か問題が有るのではと悩むと思います』

『もし問題が無いのなら、長く続けて欲しい』
『はい、ずっと居て欲しいです』

『いつまで、かな』

『死ぬまで、ですが、私には多分寿命が無いです。任意です、死にたい時に死ねます、そして生まれ変わります』
『君の意志を持って』

『それは選べると思います、先代は私に殆どを分けてくれたと実感しています。私が生まれ変わった様に、誰かを取り込んで違うモノになる、そこへの意志の存在は任意です』

『なら、アズールを取り込みたい?』
『いいえ、アズールはアズールです。ですが、取り込むべきかどうか、どうして私なのかが分からないので。基準の引き継ぎが有りません、今の私は嫌ですが、答えは変わるかも知れません』

『アズールのまま、長く傍に居て欲しい』
『はい、嫌で無いなら』

『置き換えるなら、ネネさんはお父さん、アズールはお母さんかな』

『分かりません、お母さんが居ないと困ります、でも寂しいと思ったかどうか分かりません。お父さんもです、居ないのが当たり前なのは同じですが、だから困っているのか分かりませんでした』

『君は寂しいと困る、の切り分けがしっかり出来ているんだね』

『いえ、不出来でした。アズールが居ないと寂しいです、寂しいは困る事です、少し困って寂しいが大きいです。ネネさんと比べていました、ネネさんが居なくても困らないのに寂しい、でも寂しいは少し困る事です』

『ヒナの場合、冷静に判断するのが基本だけれど、人種の殆どは違うのは分かるね』
『違うと言う事だけは分かります』

『君は頭で物事を分類している、だからこそ、寂しいかどうかについて少し間違えた』

『他は、そんなに違うんですか』

『以前はどうだったのかな』

『空っぽです。流れる映像を眺めて、お腹が空いたら食べ物が有る筈の場所を探して、喉が渇いたら蛇口を捻って水を飲んで。映像が消えていたら粘土で遊んで、トイレに行きたくなったらトイレに行く。眠るのも同じです、眠くなったら寝て、置きて、そう過ごすだけです』

『今の様に考える事が無かった』
『はい、情報も何も無かったので分類も何も無いです』

『知らなかったから分からない』
『はい、でも知っても分からない事が多いです、それに間違える事もします』

『それは情報が足りないから、君の前世は有って無い様なもの、今日は少し動物園に行こうか』
『はい、行きます』

 ヒナちゃんの新しいお友達、ジュリアさんと一緒に隠れて聞いていたけれど。
 血反吐が止まらない。

《ネネさんだけが、最初、全てを受け止めていたんですね》

「ココまででは無いですが、まぁ、はい」
《ご苦労様です、本当に、心中お察し申し上げます》

 血反吐が目から出てしまっているジュリアさんのお陰で、コチラは何とか表に出さず堪えられていたけれど。
 代わりに言葉が止まる気がしない。

「アレでは、それこそ動物園の動物です」
《しかも劣悪な環境でのネグレクトです、思考を止め反復行動を繰り返すだけ、そうなって当然です》

「けれど、目の当たりにさせようとしている」
《多分、私達の代わりに受けてくれるつもりなんだと思います。私達人種の弱さを、彼は良く理解していますから》

「そこに甘えて、良いのでしょうか」

 コレはコチラの世界での問題。
 向こうの世界で起きた問題。

 それを、何も介入せず。

《正義感が強いのは、ネネさんの影響なのかも知れませんね》

「正義感、いや、あの子は元から」
《他の子は、もっと無関心なんです、そして気に入った庇護者に阿ろうとする。それか根本を真似る子、似たモノになろうとするんです。まぁ、本の知識が殆どですが、話を聞いても似た話題が多いですよ》

「私を、真似ている」
《言葉を崩さないのもそうかも知れませんし、出来るだけ冷静に判断する事も、それを良しとして継続しているんじゃないかなと》

「ちょっと、変えるべきか悩み所なんですが」
《確かに他の子とは少し違いますけど、私を見ていても崩す気配は無いですし、何よりヒナは貴族なので問題無いかと》

「良いんですかね、本当に」
《大丈夫ですよ、学園から問題提起も無いですし、実際にも問題は起きていない》

「それは、今だけ、なのでは」
《それもヒナの選択ですし、ヒナは間違いを正せる、見た目以上に大人ですから》

「大人、とは、何でしょうか。私はヒナちゃんは見た目通り、まだ子供だと思います。知識の足り無さだけでは無く、経験の少なさこそ子供の証。私は確かに成人していますが、大人、だと言い切れる自信は全く有りません」

《すみません、途中から逆の事を言ってました》

「何故」
《本音を引き出す為に、敢えて逆を言えって。すみません、少し試しました》

 凄い、申し訳無さそうな顔を。

「それは、私を知る為」
《はぃ、万が一にも、一応念の為にと。はい、すみませんでした》

「あの精霊種の彼ですか」
《はぃ》

「では、信用頂けたと言う事で宜しいでしょうか」
《はい、勿論です、何なら殆ど信用してたんですけど。出来る機会が有ったので、させて頂きました》

「そうでしたか、分かりました」
《ほら、やっぱり似てる、さっきの何故も凄く似てましたよ》

「アレは、大概は、あぁなるかと」
《そうでも無いかと、もっと驚嘆が出る人種が多いですよ、お国が違うからかも知れませんけど》

「あぁ、確かに。でも、敢えて、私に分かり易くしてくれているだけ、かと」
《全然、と言うか貴族の方こそ出さないって感じなんですよ、だからそこはヒナは適してるなとも思います》

「あの年で、出さない子が居ますかね」
《そこですよね、出さない様にするのと、出ないのは違うから》

「そこなんです」
《でも私、出さない良さも有ると思うんですよ、だって凄く気を遣うじゃないですか出まくる人って》

「まぁ、ですが」
《もしかすればアレは、ヒナの心遣いなのかも知れないなって、無意識で無自覚な》

「心遣い」
《あ、実際は全く分かりませんけど、出ない理由の1つに有るかもなって》

 表情を出さない、心遣い。

「すみません、確かに子供扱いが過ぎたかも知れません」
《かもですからね、かもで、そうだったら良いなって程度ですから》

「ですが有り得ないとも言いきれない、検討させて頂きます」

《ふふふ、ほら、やっぱり似てる》
「ど、どうしたら良いんでしょうか」

《私がこうですし、良いバランスだと思います、色々居るってヒナは分かってる筈ですから》

「でも、私が見本は、あまり歓迎出来無いんですが」
『あらあら、ココでコソコソしてるのは誰かしら?』
《あ、ラプラス、アナタが関わってるんですね》

『ふふふ、そうなの』

 ラプラス。
 ラプラスの悪魔。

「居るとは、思いませんでした」
『ふふ、良く言われるわ、宜しくね』

「あ、はい、宜しくお願いします」
『じゃあ、行きましょうか、動物園に』

「え、あ、はい」
《ですよね、見守らないは居心地が悪いですし》
『でしょうね、ふふふ』

 ラプラスの悪魔が居るなら。
 マクスウェルの悪魔も居るのでは。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】 普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます) 【まじめなあらすじ】  主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、 「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」  転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。  魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。  友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、 「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」 「「「違う、そうじゃない!!」」」  これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。 ※他サイトにも投稿中 ※旧タイトル 病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai
ファンタジー
不慮の事故で亡くなった中学生、朝霧詠無。 彼の魂はそのまま天国へ……行くことはなく、異世界の住人に転生。 ゲームや漫画といった娯楽はないが、それでも男であれば心が躍るファンタジーな世界。 転生した世界の詳細を知った詠無改め、バドムス・ディアラも例に漏れず、心が躍った。 しかし……彼が生まれた家系は、代々ある貴族に仕える歴史を持つ。 男であれば執事、女であればメイド。 「いや……ふざけんな!!! やってられるか!!!!!」 如何にして異世界を楽しむか。 バドムスは執事という敷かれた将来へのレールを蹴り飛ばし、生きたいように生きると決めた。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

処理中です...