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第1章
33 偶然にも予定通り。
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「はいどうぞ、ハーブティーですよ、大丈夫ですか」
『いえ、僕は、本当にクズだと思います』
「確かに脇の甘さが有りましたが、まさか知り合いからの菓子に睡眠薬が入っている等とは思わない、しかも図書室で盛られる等。そもそも睡眠薬の入手は非常に困難で、しかも本来なら未成年の所有は禁止、親は厳罰に処される。前代未聞だそうですし、お気になさらず」
『そこでは無いんです』
「と言いますと」
『アナタと知り合おうとも、分かり合おうとも、話し合おうともしなかった。戸惑い、躊躇うだけで』
「興味が無いなら仕方が無いでしょう、お気になさらず」
『僕に、一目惚れをしたんですよね?』
「そこまでは言い切れませんが、近い事は起こりましたけど、ローズ嬢の様になる程の熱量は有りませんよ」
『アナタは選べる立場なのに、どうして僕なんですか』
「選んだ上で君なんですが、文句が有る様なので引き下がりますよ」
『その程度なんですか』
「明らかに無理な相手を追い掛け続ける趣味は私には有りませんし、暇も無い。それとも、やっぱりローズ嬢の様に想われたいんですかね、男性も女性も、なら今でも引きずってらっしゃるのも頷けますね」
『僕は別に』
「学園にさえ通わなければ、それなりの関係が保てていた。アナタを愛している、としおらしく、可愛いらしく囁く女が良いんでしょう。皆さんそんなものですよ、結局は外見、か弱さ愛らしさ見目の良さ、外見には中身が滲み出るそうで。分かりますよ、自信が無い者は何だかんだ言ってもそうした女を選びますからね、自尊心を保ち優位性を感じられますから」
部分的には自覚が有る事も指摘され、直ぐに否定が出来なかった。
しかも呆れられた表情も相まって、それに酷く傷付いてしまって。
『確かに、ローズ嬢には同情する部分も共感する部分も有ります。初めて会った時、可愛らしい子だ、守らなければと思ったのは確かです。それと同時に自信も、そう有りませんでした、兄も彼女を好いていましたから』
けれど兄は気が多い。
彼女を守らなければ、しっかりしなければ、自分に気を向けて貰わなければと。
そして学園に入り、彼女の存在は確かに自慢でもありました。
けれど、それは直ぐに失意へと変わった。
あまりにも愚かで、手の施しようが無い。
早々に諦めてしまっていた、後は出来るだけ無難に、卒業か破棄が出来ればと。
「あの部屋は運気が悪いみたいですね」
『僕が関わっているからかも知れませんね』
イーライ君を閉じ込めたのも、浮気をされたのも、裸にされたのも全てあの部屋。
「で?」
『少なくとも自尊心を高められた、自信が持てた、優位性を感じられた事は有りません。本当に、出来れば、誰かに助けて欲しかった』
何を言っても嫉妬としか受け取られない。
惚気だと言って相手にされない。
辛かった。
本当は逃げ出したかった。
「カッコ付けたかったから、では」
『ですね、かも知れません、それこそイーライ君の様に走って追い掛けてでも良いから、行動すべきでした』
「ですが」
『味方は誰も居ない、大人は分かってくれない、そう視野狭窄が起きていたのだと思います』
「で、今は」
『まだ、怖いですね、恋愛だとか情愛、好かれる、好く事について非常に憶病です。だからこそ、アナタに迷惑を掛けるだけだと、そう認められなかったんです。認めてしまえば、以前の事を乗り越えられていないと認めるも同義ですから』
「結構酷い事が起きたんですし、そらそうなるでしょう」
『そう言って貰えて嬉しい反面、難しいですね、好意に同情が混ざっていて欲しく無いんですよ』
「でしょうね」
『ですけど、進み方が分からないんです。留まるか、後ろに下がるかで、身動きの取り方が分からない、その感覚に近いですね』
「バラしては?」
『僕は構いませんが、お相手が』
「そんな重要な相手にあんなヤベェ女を宛がうワケが無いじゃないですか、バカだなぁ君は」
『ふふふ、ですよね』
「陛下は常に国民の為を思っていらっしゃいます、後は、決めるのは国民ですよ」
『ご配慮に感謝し、甘えさせて頂きたいと思います』
知ってしまえば好いてしまうかも知れない。
そう無意識に、無自覚に進む事を拒絶し、戸惑い躊躇うだけだったのかも知れない。
《あ、ライアン、久し振りね》
ライアン君の元婚約者を学園に呼び出し、生徒達には決して騒ぐなと厳命し、茶番劇を繰り広げる事になった。
本来なら、生徒が散らばっていると言えど、公衆の面前では気を付ける筈。
が。
凄い、凄いな中世女子。
大勢の目が有るのに名で呼んだ後、ベタベタ触って。
『止めてくれないかな、僕には新しい婚約者が居るんだ』
《あ、そうなのね、ごめんなさい。でも、どちらにいらっしゃるの?》
あぁ、笑いそう、彼の斜め後ろに居ますよ。
周りは凄い凍り付いてるのがまたね、逆にヤバいわ。
『近くに居るのは勿論、本当に止めてくれないかな』
《確かに破棄はしたけれど、私達は幼馴染でしょ?》
はい、コレ悪しき見本な。
ダメだよ生徒諸君、幼馴染でも接触は御法度。
そして貴族だからこそ、この距離の近さも御法度。
『君はもう結婚している筈だよね』
で、既婚者が触るのも御法度。
もう完全にレッドカードですが。
《でも、私は、今でもアナタの事を、アナタもそうでしょう?》
周りが見えていない愚かさ。
若しくは敢えてなのか、どちらにしろ醜悪さにドン引きしてる令嬢が確認出来ている。
凄い、凄いぞ中世女子。
『いや、確かに君に浮気され破棄した。強がりに聞こえるかも知れないけれど、もう、あの時には既に僕は破棄するつもりだったんだ』
《どうして?どうして信じてくれないの?アレは浮気じゃなくて》
『婚約者以外と体を重ねるのは浮気と言うんだよ』
《でも私には気持ちは無かったの》
『だとしても、浮気は浮気なんだ。と言うか論点はそこじゃないんだ、君に気が有ったのは学園に入った直前まで。こうして既婚者なのにも関わらず、しかも僕の婚約者の前で僕に触る、こうした行動と同じ事をしていたから、僕の好意は直ぐに枯れた』
《そんな、騙していたの?》
『僕が僕を、自分自身を誤魔化していたけれど、婚約者としての立場や行動には沿っていたつもりだ。そこを逸脱したのは君だよ』
《でも、私はただ、アナタの為に皆と仲良く》
『だからと言って婚約者を持つ者と寝るのは有り得ない』
《どうしてそんなに不機嫌なの?》
『君が愚か過ぎて、婚約者に嫉妬すらされなさそうで不安で堪らないよ』
《じゃあ一緒になりましょう?》
凄い、トリプルアクセル越えて4回転半を2連続。
最早、人の壁を越え。
「心中、お察し、申し上げます」
『ほらもう、彼女が半笑いじゃないか』
《彼女?》
『彼女が僕の婚約者だ』
「はい、再々の申し出を無視し近衛班長の私の婚約者を触りまくる不貞行為、王侯貴族裁判所へ提訴させて頂きます。警備の方、宜しくお願い致します」
《そんな、ライアン》
『止めて下さい、と何度もお伝えしましたよね』
《ごめんなさい、でも私、アナタが婚約者だなんて》
「私が女かどうか、婚約者かどうか、今回はさしたる問題にはなりません。既婚者が婚約者の居る者に再三の注意を受けながらも身体接触を継続した事が問題なのです、証人はココに沢山。彼女の不貞行為を見た者は、手を挙げなさい」
雨後の筍の様に生え伸びる手。
うん、実に笑える。
《そんな、冗談よねライアン》
『いいえ、学園に入った時から僕は常に真面目に注意していました。貴族なのにも関わらず、婚約者が居る者に身体接触をし、果ては浮気し婚約破棄に至らしめた。今でも、全く、改善されていませんね』
「あ、庶民でもクソ、外道、下品な行為ですからね皆さん。分かりましたか」
『《「はい!」》』
「うん、宜しい」
《どうして虐めるの?》
「はい注目!コレが虐めに各当すると思う者は前へ!成績には影響しませんから大丈夫ですよ、さ、どうぞ」
《そうやって、私からライアンを奪っ》
「いつでもお返しは可能ですが、落とせるならどうぞどうぞ」
『それ僕が傷付くんですが』
《ライアン、こんな男か女か分からない人なんて婚約破棄しましょう、私、ずっと待ってたの》
『待っていたと言う割に数ヶ月前に出産したそうですが』
《それは、夫婦だから仕方無く》
『夫を愛して無かったんですか?』
《夫としては愛してるけど、大好きなのはアナタだけよ?》
すげぇ。
すげぇヤベェ女じゃん。
あ、真っ青じゃんライアン先輩。
布を振って合図しないと、マジで倒れそうだわ先輩。
「諸君!コレで悪しき見本の開示は終了だ。一見、劇に見えたかも知れないが、コレには打ち合わせも台本も無い。その証拠に、彼女の夫と家族を紹介しよう!」
『お前は』
《止めてあげて頂戴!》
『どう言う事ですかお義母さん!』
《あ、待ってライアン》
「待ってあげるかい?」
『絶対に嫌です』
俺みたいに、ちょっとした裏方は居るけど。
マジで台本も打ち合わせも無し。
生徒は学園の噴水広場に呼ばれて、好きな場所で待機してろって。
でガブリエラさんは皆の為にお菓子を配って歩いてて、上級者のライアン先輩が来て直ぐに、事が始まって。
マジで、打ち合わせが有るにしても、コレはもう。
「何すかアレ、ローズ嬢と違う意味でヤバい女じゃないっすか」
「まぁまぁ、世の中には色々な女性が居るって事だよ」
『君は稀有だとは分かってくれるだろうけれど、女性に失望しないでくれるかな』
「いや、まぁ、近しいのがコレですし」
「おう、なんせ私は良い女だからな」
『ですね、本当に。ですけど、反動で全く違う毛色を選んだ、と思われたく無いんですよね』
「マジでガブリエラさんで良いんですか?何か脅されてます?」
聞けって、ガブリエラさんが。
ライアン先輩が断れる様にって。
『ありがとうケント君。恩や反動では無く、彼女の良さから、一緒に居たいと思って婚約したんだ』
「何処が良いんすか?」
『強くて、変態な所かな』
「まぁ、運動に関しては明らかに変態っすけど」
『それに優しいし賢いし、僕を守ってくれる所かな』
「並みの貴族も令嬢も太刀打ち出来ないとは思いますけど」
『見目は確かにパッと見は男性だけれど、声も違うし、良く顔を見れば分かる筈だよ』
「確かに、可愛いとは言い難いですけど」
「将来の上司の顔面を査定をするな、このまま顔を握り潰すぞ」
「ひゃい」
『まぁ、君は範囲外だそうだけど、この位にしておくよ』
「取られる事は無いと思うんすけどねぇ」
『あんな女性が居たのにかい?』
「あぁ、確かに」
「ライアン君を送ってくるから、皆を教室に集めておきなさい、頼むよケント君」
「うーっす」
コレからイチャイチャ。
無いか。
生徒と教員だし。
あの人、規律にはクソ厳しいし。
『いえ、僕は、本当にクズだと思います』
「確かに脇の甘さが有りましたが、まさか知り合いからの菓子に睡眠薬が入っている等とは思わない、しかも図書室で盛られる等。そもそも睡眠薬の入手は非常に困難で、しかも本来なら未成年の所有は禁止、親は厳罰に処される。前代未聞だそうですし、お気になさらず」
『そこでは無いんです』
「と言いますと」
『アナタと知り合おうとも、分かり合おうとも、話し合おうともしなかった。戸惑い、躊躇うだけで』
「興味が無いなら仕方が無いでしょう、お気になさらず」
『僕に、一目惚れをしたんですよね?』
「そこまでは言い切れませんが、近い事は起こりましたけど、ローズ嬢の様になる程の熱量は有りませんよ」
『アナタは選べる立場なのに、どうして僕なんですか』
「選んだ上で君なんですが、文句が有る様なので引き下がりますよ」
『その程度なんですか』
「明らかに無理な相手を追い掛け続ける趣味は私には有りませんし、暇も無い。それとも、やっぱりローズ嬢の様に想われたいんですかね、男性も女性も、なら今でも引きずってらっしゃるのも頷けますね」
『僕は別に』
「学園にさえ通わなければ、それなりの関係が保てていた。アナタを愛している、としおらしく、可愛いらしく囁く女が良いんでしょう。皆さんそんなものですよ、結局は外見、か弱さ愛らしさ見目の良さ、外見には中身が滲み出るそうで。分かりますよ、自信が無い者は何だかんだ言ってもそうした女を選びますからね、自尊心を保ち優位性を感じられますから」
部分的には自覚が有る事も指摘され、直ぐに否定が出来なかった。
しかも呆れられた表情も相まって、それに酷く傷付いてしまって。
『確かに、ローズ嬢には同情する部分も共感する部分も有ります。初めて会った時、可愛らしい子だ、守らなければと思ったのは確かです。それと同時に自信も、そう有りませんでした、兄も彼女を好いていましたから』
けれど兄は気が多い。
彼女を守らなければ、しっかりしなければ、自分に気を向けて貰わなければと。
そして学園に入り、彼女の存在は確かに自慢でもありました。
けれど、それは直ぐに失意へと変わった。
あまりにも愚かで、手の施しようが無い。
早々に諦めてしまっていた、後は出来るだけ無難に、卒業か破棄が出来ればと。
「あの部屋は運気が悪いみたいですね」
『僕が関わっているからかも知れませんね』
イーライ君を閉じ込めたのも、浮気をされたのも、裸にされたのも全てあの部屋。
「で?」
『少なくとも自尊心を高められた、自信が持てた、優位性を感じられた事は有りません。本当に、出来れば、誰かに助けて欲しかった』
何を言っても嫉妬としか受け取られない。
惚気だと言って相手にされない。
辛かった。
本当は逃げ出したかった。
「カッコ付けたかったから、では」
『ですね、かも知れません、それこそイーライ君の様に走って追い掛けてでも良いから、行動すべきでした』
「ですが」
『味方は誰も居ない、大人は分かってくれない、そう視野狭窄が起きていたのだと思います』
「で、今は」
『まだ、怖いですね、恋愛だとか情愛、好かれる、好く事について非常に憶病です。だからこそ、アナタに迷惑を掛けるだけだと、そう認められなかったんです。認めてしまえば、以前の事を乗り越えられていないと認めるも同義ですから』
「結構酷い事が起きたんですし、そらそうなるでしょう」
『そう言って貰えて嬉しい反面、難しいですね、好意に同情が混ざっていて欲しく無いんですよ』
「でしょうね」
『ですけど、進み方が分からないんです。留まるか、後ろに下がるかで、身動きの取り方が分からない、その感覚に近いですね』
「バラしては?」
『僕は構いませんが、お相手が』
「そんな重要な相手にあんなヤベェ女を宛がうワケが無いじゃないですか、バカだなぁ君は」
『ふふふ、ですよね』
「陛下は常に国民の為を思っていらっしゃいます、後は、決めるのは国民ですよ」
『ご配慮に感謝し、甘えさせて頂きたいと思います』
知ってしまえば好いてしまうかも知れない。
そう無意識に、無自覚に進む事を拒絶し、戸惑い躊躇うだけだったのかも知れない。
《あ、ライアン、久し振りね》
ライアン君の元婚約者を学園に呼び出し、生徒達には決して騒ぐなと厳命し、茶番劇を繰り広げる事になった。
本来なら、生徒が散らばっていると言えど、公衆の面前では気を付ける筈。
が。
凄い、凄いな中世女子。
大勢の目が有るのに名で呼んだ後、ベタベタ触って。
『止めてくれないかな、僕には新しい婚約者が居るんだ』
《あ、そうなのね、ごめんなさい。でも、どちらにいらっしゃるの?》
あぁ、笑いそう、彼の斜め後ろに居ますよ。
周りは凄い凍り付いてるのがまたね、逆にヤバいわ。
『近くに居るのは勿論、本当に止めてくれないかな』
《確かに破棄はしたけれど、私達は幼馴染でしょ?》
はい、コレ悪しき見本な。
ダメだよ生徒諸君、幼馴染でも接触は御法度。
そして貴族だからこそ、この距離の近さも御法度。
『君はもう結婚している筈だよね』
で、既婚者が触るのも御法度。
もう完全にレッドカードですが。
《でも、私は、今でもアナタの事を、アナタもそうでしょう?》
周りが見えていない愚かさ。
若しくは敢えてなのか、どちらにしろ醜悪さにドン引きしてる令嬢が確認出来ている。
凄い、凄いぞ中世女子。
『いや、確かに君に浮気され破棄した。強がりに聞こえるかも知れないけれど、もう、あの時には既に僕は破棄するつもりだったんだ』
《どうして?どうして信じてくれないの?アレは浮気じゃなくて》
『婚約者以外と体を重ねるのは浮気と言うんだよ』
《でも私には気持ちは無かったの》
『だとしても、浮気は浮気なんだ。と言うか論点はそこじゃないんだ、君に気が有ったのは学園に入った直前まで。こうして既婚者なのにも関わらず、しかも僕の婚約者の前で僕に触る、こうした行動と同じ事をしていたから、僕の好意は直ぐに枯れた』
《そんな、騙していたの?》
『僕が僕を、自分自身を誤魔化していたけれど、婚約者としての立場や行動には沿っていたつもりだ。そこを逸脱したのは君だよ』
《でも、私はただ、アナタの為に皆と仲良く》
『だからと言って婚約者を持つ者と寝るのは有り得ない』
《どうしてそんなに不機嫌なの?》
『君が愚か過ぎて、婚約者に嫉妬すらされなさそうで不安で堪らないよ』
《じゃあ一緒になりましょう?》
凄い、トリプルアクセル越えて4回転半を2連続。
最早、人の壁を越え。
「心中、お察し、申し上げます」
『ほらもう、彼女が半笑いじゃないか』
《彼女?》
『彼女が僕の婚約者だ』
「はい、再々の申し出を無視し近衛班長の私の婚約者を触りまくる不貞行為、王侯貴族裁判所へ提訴させて頂きます。警備の方、宜しくお願い致します」
《そんな、ライアン》
『止めて下さい、と何度もお伝えしましたよね』
《ごめんなさい、でも私、アナタが婚約者だなんて》
「私が女かどうか、婚約者かどうか、今回はさしたる問題にはなりません。既婚者が婚約者の居る者に再三の注意を受けながらも身体接触を継続した事が問題なのです、証人はココに沢山。彼女の不貞行為を見た者は、手を挙げなさい」
雨後の筍の様に生え伸びる手。
うん、実に笑える。
《そんな、冗談よねライアン》
『いいえ、学園に入った時から僕は常に真面目に注意していました。貴族なのにも関わらず、婚約者が居る者に身体接触をし、果ては浮気し婚約破棄に至らしめた。今でも、全く、改善されていませんね』
「あ、庶民でもクソ、外道、下品な行為ですからね皆さん。分かりましたか」
『《「はい!」》』
「うん、宜しい」
《どうして虐めるの?》
「はい注目!コレが虐めに各当すると思う者は前へ!成績には影響しませんから大丈夫ですよ、さ、どうぞ」
《そうやって、私からライアンを奪っ》
「いつでもお返しは可能ですが、落とせるならどうぞどうぞ」
『それ僕が傷付くんですが』
《ライアン、こんな男か女か分からない人なんて婚約破棄しましょう、私、ずっと待ってたの》
『待っていたと言う割に数ヶ月前に出産したそうですが』
《それは、夫婦だから仕方無く》
『夫を愛して無かったんですか?』
《夫としては愛してるけど、大好きなのはアナタだけよ?》
すげぇ。
すげぇヤベェ女じゃん。
あ、真っ青じゃんライアン先輩。
布を振って合図しないと、マジで倒れそうだわ先輩。
「諸君!コレで悪しき見本の開示は終了だ。一見、劇に見えたかも知れないが、コレには打ち合わせも台本も無い。その証拠に、彼女の夫と家族を紹介しよう!」
『お前は』
《止めてあげて頂戴!》
『どう言う事ですかお義母さん!』
《あ、待ってライアン》
「待ってあげるかい?」
『絶対に嫌です』
俺みたいに、ちょっとした裏方は居るけど。
マジで台本も打ち合わせも無し。
生徒は学園の噴水広場に呼ばれて、好きな場所で待機してろって。
でガブリエラさんは皆の為にお菓子を配って歩いてて、上級者のライアン先輩が来て直ぐに、事が始まって。
マジで、打ち合わせが有るにしても、コレはもう。
「何すかアレ、ローズ嬢と違う意味でヤバい女じゃないっすか」
「まぁまぁ、世の中には色々な女性が居るって事だよ」
『君は稀有だとは分かってくれるだろうけれど、女性に失望しないでくれるかな』
「いや、まぁ、近しいのがコレですし」
「おう、なんせ私は良い女だからな」
『ですね、本当に。ですけど、反動で全く違う毛色を選んだ、と思われたく無いんですよね』
「マジでガブリエラさんで良いんですか?何か脅されてます?」
聞けって、ガブリエラさんが。
ライアン先輩が断れる様にって。
『ありがとうケント君。恩や反動では無く、彼女の良さから、一緒に居たいと思って婚約したんだ』
「何処が良いんすか?」
『強くて、変態な所かな』
「まぁ、運動に関しては明らかに変態っすけど」
『それに優しいし賢いし、僕を守ってくれる所かな』
「並みの貴族も令嬢も太刀打ち出来ないとは思いますけど」
『見目は確かにパッと見は男性だけれど、声も違うし、良く顔を見れば分かる筈だよ』
「確かに、可愛いとは言い難いですけど」
「将来の上司の顔面を査定をするな、このまま顔を握り潰すぞ」
「ひゃい」
『まぁ、君は範囲外だそうだけど、この位にしておくよ』
「取られる事は無いと思うんすけどねぇ」
『あんな女性が居たのにかい?』
「あぁ、確かに」
「ライアン君を送ってくるから、皆を教室に集めておきなさい、頼むよケント君」
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