conspiracy intrigue plot 〜こんすぺらしーんとりっくぱぁー、って何ですか?〜

中谷 獏天

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42 柵。

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『そう、許可するわ、行ってらっしゃい』
「はい、それと、1つお伺いしても」

『何かしら?』

ヒト種の罪悪感についてです、抱えるべき事なのでしょうか」

『私としては、あくまでも御す側として、幾ばくかは抱えていて欲しいと思っているわ。けれど過度な柵は害となる、柵は柵、檻では無い。でも知る者にとっては檻となり、至る者にも又、強固な檻だと気付いて欲しいわね』

「東の魔女をご存知ですか」
『知っているわ、ヒト種ながらに人種に死を齎した、来訪者の子』

「悪でしょうか」
『人種の決まりの中では、けれども至る過程を知っている以上、必要悪で有ったのだろうと思うに留めているわね』

「早朝から失礼しました」
『良いのよ、もう行って、準備が有るでしょう』

「はい、行って参ります」
『はい、行ってらっしゃい』

 この世は、この世界は良いモノ、善い事だけで成り立っているワケでは無い。
 けれど、それが悪い事、だとは思わないわ。

 だって、良い事しか無い、だなんて不健全ですもの。

 良き見本のみ、悪しき見本は無く誰もが間違いを犯さない、だなんて。
 とても有り得ない事。

 悪しき見本無しに間違いを避けるなど、机上の空論、いえ妄想。
 理想論にも程が有る。

 過去の人種が伝えたい事、それは人種が如何に愚かか、そして賢いか。

 賢き者は、自らの愚かさに怯え慎重になり、愚か者は他者の賢さに怯え身勝手に振る舞う。
 無知の知、賢人は時に追い遣られてしまう事も有る。

 もし人種が精霊や悪魔程に賢ければ、けれど、それは叶わぬ事。
 それらは最初から知識を分け与えられ、知能が既に存在しているからこそ賢い。

 コレは、単なる生き物としての違い。
 獣とて最初から狩りを完璧には行えず、精霊とて次に愛するモノを知らず、悪魔とて誰を愛してしまうか分からない。

 完璧なモノなど、世には存在しない。
 それを証明する為、神々は世に存在しない事にしたのだろう、私はそう思っている。

 では何故、人種ばかりを戒める神話が存在しているのか。
 それはまだ、あの子が知らないだけ。



《失礼しますわ陛下!お姉様は?!》
『あら残念、入れ違いね』

 ココの近衛兵が、お姉様が来たと教えて下さって、だからお兄様と仲直りして下さったのかと思い急いで来ましたのに。

《はぁ、お食事のお時間ですわ、陛下》
『あら、その前に、何か有ったのでは無いかしら?』

 陛下は、何を知ってらっしゃるのかしら。

《何だか、お兄様が変でしたの、とても機嫌が宜しくて。私、どうしてか、とても不気味に感じてしまったのですけれど》
『ふふふ、エル、恋と愛の違いを知っているかしら?』

 もしかして、お姉様が心変わりをして下さった?

《んー、恋とは淡く、消えても死なない事ですかしら》
『では恋から愛へ変わるのは、どんな時かしら』

 あぁ、お姉様は心変わりをしてはいないのかしら。

《体の関係の有無だと教わりましたけれど、本当かは分かりませんわ、まだ清い身ですもの》
『ふふ、そんな事が無くても、時に愛と変わってしまうものなの。だからこそ、精霊や悪魔すらも、人種と関わる事には慎重になってしまう』

《それは、脆く弱く、出来にムラの有る種族だからでは無くて?》
『ふふ、そこよ、意外性は何者も魅了してしまう。だからこそ、神々は人種をお創りになったのだと、私はそう思っているわ』

 答えを、はぐらかされてしまっているわ。
 お兄様は大丈夫なのかしら。

《お答えに、なっております?》
『そうね、どちらかと言えば曖昧な答え、ね』

《陛下》
『ふふふ、さ、行きましょう』

 そして陛下は、部屋を出て直ぐ、衛兵に楽しそうにお伝えしたの。

 オペラ座でチェスが始まる、ジュリエット産の卵を全てロミオへ変えておいて、と。
 私、暗号は得意な筈ですのに、全く分かりませんでしたわ。

 ですから、大した暗号では無く、お料理を変更したのだと思いましたの。
 だって、それ程に軽やかに、楽しげに言ってらしたんですもの。



『私、コレが美味しいと思うんですが、お口に』
「とても合います、凄く、美味しいです」

 ゲヘナでの朝食は。
 食べ慣れた、とても美味しいフレンチトースト。

『良かった、ですよね、うん』

 それは完璧なモーニングプレートだった。

 少し厚めで良く焼かれたベーコン、程良くハーブの効いたソーセージ、新鮮なサラダ。
 ミニクロワッサンと薄いトーストが1枚、キノコのクリームスープに、良い塩梅でふわとろなスクランブルエッグ。

 そしてデザートに小さなフレンチトースト2枚と、フルーツのヨーグルト合え。

 完璧だ、この子と味覚が合い過ぎる。

「和食なら、どの様なメニューがお好きですか」

『ごめんなさい、良く知らなくて、でもコレは良く見てて、想像通りですよね?』
「はい、私も好きな様に並べると、こうなります」

 コレが、彼女の知る、最高の理想の朝食。

『あの、スズランの君の、お好きな和食は?』

「ひきわり納豆と、紫蘇の実漬けとシラス入りの卵焼き、ほうれん草の胡麻和えとキンピラ、お味噌汁はわかめと豆腐」
『わぁ、凄い、紫蘇の実漬けってどんな味なんですか?』

「酸っぱくない梅干しの様な、ツブツブの少し塩辛い、薬味の様なものです」
「あぁ、では良い香りがするんですね」

「はい」
『私も好きでした、青紫蘇ドレッシング、ツナゴハンに掛けてました』

「私はツナと豆腐に掛けてました」
『私も、懐かしい、似たモノって外に有るんでしょうか?』

「探した事は無いんですが、多分、ココの方なら似たモノは作れるかと」
『確かに、ですね』

 もし懸念通りなら、彼女はネグレクトの被害者か、まだ幼いか。
 若しくは、その両方。

 聞き出す事に、どうしても罪悪感が湧いてしまう。
 けれど、彼女こそ恐れるべきユノかも知れない、若しくはそれ以上かも知れない。

 いや、本題はココへユノが来たかどうか。

「今日の今日で、会う事が叶うのでしょうか」
『んー』
「運、それと内容次第かと」

『あ、人探しですよね、どの様な方をお探しで?』
「危ない方です、私はそうした者も探しに来ました」
「では、他に目的がお有りなんですね」

「戻るかどうかも含め、様々な事を検討する為に訪れました」

『外は、どうですか?怖いですか?危ないですか?』

 今なら、さして怖くは無い。
 そして危険も、無かったのは適切な後ろ盾が有ったから。

 でも大き過ぎる後ろ盾には、不安が残る。

 持つ者も持たざる者も、結局は悩みを抱える。
 お金が有り過ぎても、無さ過ぎても、悩みは尽きる事は無い。

「ココでは、外で言う来訪者、とは呼ばないのでしょうか」

「星の子、そう呼ばれています」
『あ、そうなのね、なら私は何なのでしょう』

「お嬢様も星の子です、ココの者が、誰かが認めたなら星の子と呼ばれるんです」
「では、あのゴミ捨て場の者達は」

「星屑です。砕かれた者、砕いた者、星の子になれなかった者は全て星屑と呼ばれます」
『そう、綺麗な言い回しね』

「では、ココでの、星の子の扱いは」
「ココに星の子は滅多に訪れません、両方の意味で。ですが外とは違い、保護はすれど囲いはしません。既に必要な事は全て、悪魔が知っている筈ですから」

『囲う?困っているんですか?』

「複数人に結婚を申し込まれたりと、そう困っています」
『わぁ、凄い』
「お嬢様、そろそろ」

『あ、危ない人を探すんですよね、お食事は足りましたか?』
「はい、ご馳走様でした」

『いえいえ、お粗末様でした』
「では先ず紹介所へご案内致します、少々お待ち下さい」



 今朝、強欲の王から聞かされたんすけど。
 来訪者様は、この幼女もヤバい奴かも知れない、そう思ってるんすよね。

 でもぶっちゃけ、大丈夫なんすけどね。
 首輪無し、しかも既に悪魔と融合を果たしてるんすから、寧ろ逆に安全なんすけど。

 それ、言うなって命令なんすよねぇ。

 めっちゃ心苦しい。
 疑わなきゃならない立場だったってのは分かるんすけど、はぁ、見てらんない。

 つか、何で言うなって命令が出たのか分かんないんすよね。
 もう試さなくても良いだろうって思うんすけど、まだ見極めの最中なのか何なのか。

「旨そうでしたねぇ、メシ」
「あ、すみません、護衛って大変ですね」

「いえいえ、その分の特別手当は出るんで、じゃんじゃん食ってくれて構わないっすよ」
「すみません、胃腸も丈夫でないと護衛って難しそうですね」

「そっすねぇ、胃が痛くなるとか滅多に無いっすね」
「有るには有ったんですね」

「嫁の両親への挨拶っすね、向こうはエルフ種だったんで、最初から反対されてたんすよ」

「えっ、じゃあ寧ろ婚期が遅い方では」
「そう焦って失敗、とかが嫌だったそうなんすよ、向こうのご両親。で片や俺は、短命種だからかなって、それでも変わらず長続きしてたから許してやるって感じで。もう、気が緩んだ途端、キリキリと。ぶっちゃけ吐きましたね、緊張と緩和が激し過ぎて」

「おぅ」
「何だー、そんな事かよって思いましたし、さもありなんって。種族が違うと離婚率って高いんすよ、それこそ寿命の差が大きいと特に、しかも子供の孤児院行きも増えるんで」

「あぁ」

「何となく、理由察してそうっすね、離婚理由」
「自分は酷く衰えても、相手はまだ若々しい」

「それっす、覚悟してても難しいらしいっすよ。それこそ浮気も気にしちゃったらもう、大変っす」

「最弱、最短命に手を出すなんて、そう思ってしまいますね」
「言われてましたねぇ、俺を目の前にして、獣とそう変わらないだろうって」

「寧ろ、獣に近いですか」
「そっすね、ペット程度で留めておけ、とかも言われてたんで」

「あぁ、でも、ペット扱い。に対して、想像とズレが有りそうですね」
「あー、確かに」

「お待たせしました、ご用意はお済みでしょうか」
「いや未だっすね、どうぞ、最終準備を」
「あ、はい、ありがとうございます」

 異種との結婚って、大変っすけど良い面も有る。

 まぁ、結局はどっちか、なんすよね。
 同種の苦労か、異種の苦労か。

 そもそも、その苦労を苦労と感じるかどうか。
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