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43 悪魔。
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紹介された方は、ボティス伯爵。
茶色い髪に瞳、お顔立ちは平凡、装いも落ち着いた上品な色合いと装い。
そして特徴的なのは、牙を彷彿とさせる白く鋭い角が2本、額の生え際から生え。
凄く、綺麗な歯。
《ボティスだ、伯爵をさせて貰っているよ、宜しく》
「はい、宜しくお願い致します」
『宜しくお願い致します』
《さ、君はコッチだ、おいで》
伯爵は彼女を抱き上げ、専用にと整えられたであろう席へと座らせた。
そして彼女も彼女で、座り心地や触り心地を確かめ、満足気。
それを見て伯爵も、満足気。
『ありがとうございます』
《いえいえ、さ、君も座っておくれ》
「はい」
ココで、ふとロリコンの文字が頭に浮かんでしまい。
更に驚愕の事実に気付く事になった。
長命種が短命種を愛する事が、そもそもロリショタコンでは無いのだろうか。
つまり、ケント氏はオネショタ。
そして影さんは、もう、何だ。
実質不死にしてみれば、もう、ペドか。
いや、だが寧ろペット感覚の場合も加味すると。
ドラゴンカーセ〇クス的な異次元さだろうか。
《何やら、グルグルと考え込んでいる様だけれど》
「あ、失礼致しました、先ずはコチラをお読み下さい」
《どれどれ、成程。うん、念の為に簡易で構わないから、口頭でも説明をお願い出来るかな》
「はい、ざっと言うと他の世界を何度も繰り返させた者、ユノ・ナダギの周知とココへ来ていたかの有無。そして来た場合の対処について、です」
『繰り返し?』
「彼女が死んだ場合、若しくは何かしらの条件が揃った段階で、巻き戻り現象が起こっていたそうです。一部の者は一時的に記憶を引き継いでいたり、若しくは再び記憶が無いままに同じ事を繰り返す、若しくは記憶を引き継ぎ続ける」
《成程、確かに警戒すべきだろうね、人種にその因果律の調整は難しいのだから》
『じゃあ、悪魔が居ない世界なんですか?』
《若しくは、神も居なかったか。いや、成程、さぞ悲劇が繰り返されたのだろうね》
「だそうです、本物のユノ・ナダギが訪れた事で、そのユノ・ナダギが何者なのかと言う事になったそうです」
《なら、偽ユノ・ナダギについて、だね》
「はい」
《君は、どう思う?》
『人種への脅威は排除したいです、それに懸念も、出来れば遊びに来て欲しいですから』
《ふふふ、だそうだ、協力させて貰うよ。全ての悪魔が、ね》
「ありがとうございます」
《先ずは偽ユノ・ナダギ、らしき者が来たか》
「はい」
そして彼が右手を挙げると、影から古い電話機を持った若い執事が跪いたまま生え、電話機を差し出した。
その受話器を取ると同時に、秘匿の結界が張られた。
けれども音を遮るだけ。
非常に薄い膜の向こうでは、僅かに口が動いている事が分かる。
そして受話器を置くと共に、その結界は溶けて消え。
執事も影へと戻っていった。
《お待たせ、どうやらまだ、らしい。困ったね、他に行っているのだろう》
「そこまでお分かりに」
《死者に詳しいガミギュン、ゴミ捨て場の管理者であり一帯を治めるバアル・ゼバブ王に。あぁ、先ずはこの国について、君にも教えてあげよう》
『はい、宜しくお願いします』
《先ずは、お茶をどうぞ、地図を用意させるから》
『はい』
彼は非常に外交上手、いや接待上手なのだろう。
彼女にお茶を差し出すと、自動式人形にお菓子を運ばせ、妖精にお菓子の紹介を。
妖精。
いや、元は悪いイメージが有ったと言うし、生息域を選ばないのかも知れない。
と言うか、お菓子の種類が異常だ。
3段の回るガラスのケーキスタンドに、和洋折衷、中華のお菓子まで乗っている。
マカロンにギモーヴ、ミニショートケーキにクッキー、キャラメルに金平糖に。
龍鬚糖、作るの大変な筈。
職人がココに流れ着いて、いや、本場からお取り寄せか。
「凄い種類ですね」
《あぁ、大変だったろうに、けれどココでは心配する事は無いよ》
何の事か、一瞬分からなかった。
けれど、理解した時には思わず溜息が出そうになってしまった。
彼らにしてみれば愚かな決まり事の中、態々無駄に苦労させられ、見極められていたのだろうと思っての言葉。
つまりは情報統制され、物に不自由していたのだろう、と。
「いえ、不自由は無かったのでご心配無く」
《柵を出たからと言って、鞍が付いたままで不自由が無いとは、相当に躾けられてしまったのかな》
成程、馬扱いですか。
面白い、確かに血筋のコントロールは必要、しかも狙い通りの子が生まれるとは限らない。
そして某国の最高位は馬がお好きだったそうだし、引退すれば自由になれる。
「成程、正に馬」
《ふふ、すまないね、少し挑発したつもりだったんだけれど》
『ボティス伯爵、私の友達に意地悪は止めて下さい』
本当に、真剣に怒ってくれている。
血反吐を吐きたい。
罪悪感を血に変え吐き出してしまいたい、3ℓは吐き出したい。
《君の友達なら、余計に見定めさせて欲しいんだよ、愚か者と親しくなる事は損でしか無いからね》
「ご尤も、仰る通りです、不愉快では無かったのでご安心を」
『飼われた馬だって言ったんですよ?怒って良いんですからね?』
「いえ、言い得て妙なんですよ、私の後ろには帝国と強欲の王が既に居りますから」
『でも、飼われてるんですか?』
「ココの方にしてみれば、ですが本当に柵は有って無い様なもの、馬にも分かる様に境界線を教えてくれているに過ぎない。それこそ人種としての作法、ココの当たり前、常識を教えて貰っているんです」
『良い子だって分かりましたか?』
《はい、十分に、失礼致しました》
「いえ、向こうでは人か獣だけ、ですので獣と同じ様に言われて怒る方も居ますが。ココには様々な種が居ますし、どちらかと言えば獣に近いだろう、そう思われているのだと思いますから」
《獣にココまでの複雑性は無い、それに個体差も、何かを新たに生み出す能力も無い。そこまで見下げていると捉えられてしまったなら、改めて謝罪致します、我々は人種にも敬意を払っておりますから》
「では、星の子にはどうでしょう、偶々星屑にならなかった」
《それは違います、ココに存在した時点である程度を精霊や悪魔は理解する、だからこそ迎えに行く者が居る。不当に扱われるだろう、若しくは既に扱われている、そう察した段階で我々は使者を送る。ココに居るべき者、ソチラに居るべき者、そして選ぶべき者がココに居る事を補助する事も、楽しみとしています》
悪魔とは、天使の一側面に過ぎない。
そう説明した場合、星屑は驚嘆し、時に動揺し怒り出す事も有る。
星屑とは、ココで生きる適応力が無い者も指す。
「かなり、大半の方は困惑するかと」
《けれどアナタは既に腑に落ちている、理解しましたね》
『スズラン?』
「天使とは、天の国へ導く神の使い、若しくは善行へ導く翼を持つモノ」
《そして悪魔とは、地獄へ導くモノ、悪行へ引きずり込むとされている》
「向こうでは、ですがココでは違う、あくまでも適材適所へと導くモノ」
《はい、何故ならココが天国であり地獄であり、現世なのですから》
心根に悪を顰め、いつか悪行を成そうと企む者へ、敢えてその道を教授する。
そして正しく地獄へと落ちる様、補佐をする。
「善人と悪人が同じ場所に住んでは、いずれ善人が困る事になる」
《適時、住み分けられる様にと、そう助力しているに過ぎない》
「悪人とは、他者へ害なす者、ですか」
《はい、例えそこに悪意が無かったとしても、害となる者を選り分ける》
だからこそ、善人には天使に、悪人には悪魔として見える。
筈なんですが、天使の姿のままに見えるモノも居ますし、悪魔の様な姿に見えるモノも居る。
「だからこそ、向こうでは混乱してしまうのでは、と」
《はい》
『あぁ、成程、しかも嘘を言うかもですしね』
《はい、ですね》
「最初を、覚えてらっしゃいますか」
朧げに意思を持ちながらも、我々は他を認識し、ただ生きていた。
そうしていつしか、疑問が湧く様になった。
どうして他は食し、死に、繁殖するのか。
我々には食べる欲も睡眠欲も無く、生殖や繁殖の本能も無く、死も病も無かった。
だからこそ群れる事も、番う事も無く、ただ存在しているに過ぎない。
《仲間の分身に、1人と数えるべきか、問うてくれましたね》
「はい、どう数えるべきかと思ったので」
《我々は孤独でした、1体、では無く1人だと思っていたんです》
そう考える様になればなる程、何処からか知恵が湧いてきた。
我々は悪魔だ、我々と言う事はつまり、仲間が居る。
今となれば、思い出す感覚に似ていたと思いますが、そこにはまだ不思議だと言う考えは有りませんでした。
当然で、当たり前、考えれば分かる事に何の疑問も有りませんでした。
そうして幾ばくか過ぎた頃、知識と実態に差異を見付けた。
そして、人種の存在の欠如も。
そこで初めて、我々は精霊との対話を始めた。
けれど、精霊は人種の存在を拒絶した。
「では、精霊の方からも聞かなければいけませんね」
《そうだね、来て貰っているよ、少し待っていておくれね》
私達は悪魔と似た存在ながらも、幾ばくか異なっていた。
番い、家族を持ち、眠る。
『だからこそ、私達は人種を拒絶した、分かりますかスズランの』
「相性が、悪いかと」
『そうですね、相性が悪い、私達はその事を既に理解していた』
互いに惹かれ易く、時に異常なまでに執着し、諍いすら巻き起こす。
けれどココにはそうした悩みの種が存在しない、その平穏を私達は維持したかった。
それは他の種も同じく、悩みの種、人種の存在を拒否した。
「残念ですが、致し方無いかと」
『ありがとう、ですが悪魔達は折れなかった、そして私達は受け入れた』
《欠けを感じていたんだ》
私達も、何処かで欠けを感じていた。
けれども人種と精霊に起きた事を、私達は既に知り、理解していた。
人種が存在する事で発生し得る害悪を鑑みれば、人種への思いを無視すべきだ、私達はそう考え無視を続けた。
『人種には分からないでしょう、衰える事の無い記憶、感情。更にはそれらを抑える辛さを、同種も、悪魔も理解していた』
騙され虐げられたモノ、虐げるよう強いられたモノ、ただただ無惨に殺されたモノ。
ココはそうした役割から解放され、神に用意された楽園。
人種と言う暴力装置の無い、天国なのだと、そう理解しようとしていた。
《けれど、何にでも例外は有る》
『そう、人種を求める精霊が現れた』
あのか弱くも愚かで、群れなければ容易く滅ぶ種が、愛おしくて堪らない。
存在の欠如を無視する事は出来無い、我々は必要としている。
と、人種を作り出そうとした同種が現れた。
私達は説得した。
アレらが起こす問題は、様々な種を滅ぼす事だけでは無い。
悪魔なる、悲劇の種を生み出したのだから、と。
「すみません」
《いや、少なくとも君達はそうでは無いだろう、それこそ大元は僅かな数の者が考えた事。それに、君が生まれた時には既に覆せない程の存在だったなら、君に責任は全く無い》
「それでも、悪魔と言う概念には幾分かの固定概念が有ります」
《犬は噛むかも知れないから危ない、その程度だろうし、その程度は許容しているよ》
「それでも、どうして人種の存在を許してしまったのか、全く分からないのですが」
『忌む者、憎む者、愛する者。其々に派生を始め、其々に話し合い、先ずは人種に近いエルフを生み出した』
長命で賢く、大人しい種で手打ちとならないか、と譲歩してみたのです。
けれども納得せず、次はドワーフを、小人種を生み出した。
そこに文化文明が花開き、それぞれが切磋琢磨し、異種間でも交配が起きた。
当然、見た目は様々なモノが生まれ、殆どのモノが納得した。
けれど、人種でなければ愛せないモノ達は、相変わらず人種を求め続けた。
いえ、寧ろ悪化したとすら言えるでしょう。
《二足歩行の文明開化は、結局は僕らの知る人種の文明開化と似通る。思い出させる物が増え、懐かしさを呼んだ》
良く知っているモノに近い、けれども似て非なるもの。
物足りなさを覚え、人種を請うモノが増えてしまった。
『私達は制約を設け、一部の繁殖のみを許しました』
《けれど、最初は大失敗だったね》
時に短命である事に恨みを持ち、私達を恨み、人種では無いモノになった。
《コレが神の立場なのか、そう思わされたね》
『えぇ、大変でした』
いずれも人種である事を拒み、エルフやユニコーンとなった。
どの様に育てたとしても、違いを理解してしまうと、私達と同じ何かになってしまった。
「そんなに、根付かなかったんですね」
《今となっては、環境が整っていなかったから、だね》
『そして求めるモノ達も、いつしか声を上げなくなっていった』
けれど、そうして幾年か経った頃、先祖返りが起きた。
エルフとユニコーン、魔獣とドワーフの子に、稀に人種が現れる様になった。
けれども相変わらず人種して生を終えようとする者は現れず、とうとう、悪魔達が引き取ると言い出した。
「何故」
《1人は自らの理論の正しさを証明する為、1人は観察の為だったり、繁殖の為。けれど殆どのモノは、懐かしさと欠けた感覚を補う為》
茶色い髪に瞳、お顔立ちは平凡、装いも落ち着いた上品な色合いと装い。
そして特徴的なのは、牙を彷彿とさせる白く鋭い角が2本、額の生え際から生え。
凄く、綺麗な歯。
《ボティスだ、伯爵をさせて貰っているよ、宜しく》
「はい、宜しくお願い致します」
『宜しくお願い致します』
《さ、君はコッチだ、おいで》
伯爵は彼女を抱き上げ、専用にと整えられたであろう席へと座らせた。
そして彼女も彼女で、座り心地や触り心地を確かめ、満足気。
それを見て伯爵も、満足気。
『ありがとうございます』
《いえいえ、さ、君も座っておくれ》
「はい」
ココで、ふとロリコンの文字が頭に浮かんでしまい。
更に驚愕の事実に気付く事になった。
長命種が短命種を愛する事が、そもそもロリショタコンでは無いのだろうか。
つまり、ケント氏はオネショタ。
そして影さんは、もう、何だ。
実質不死にしてみれば、もう、ペドか。
いや、だが寧ろペット感覚の場合も加味すると。
ドラゴンカーセ〇クス的な異次元さだろうか。
《何やら、グルグルと考え込んでいる様だけれど》
「あ、失礼致しました、先ずはコチラをお読み下さい」
《どれどれ、成程。うん、念の為に簡易で構わないから、口頭でも説明をお願い出来るかな》
「はい、ざっと言うと他の世界を何度も繰り返させた者、ユノ・ナダギの周知とココへ来ていたかの有無。そして来た場合の対処について、です」
『繰り返し?』
「彼女が死んだ場合、若しくは何かしらの条件が揃った段階で、巻き戻り現象が起こっていたそうです。一部の者は一時的に記憶を引き継いでいたり、若しくは再び記憶が無いままに同じ事を繰り返す、若しくは記憶を引き継ぎ続ける」
《成程、確かに警戒すべきだろうね、人種にその因果律の調整は難しいのだから》
『じゃあ、悪魔が居ない世界なんですか?』
《若しくは、神も居なかったか。いや、成程、さぞ悲劇が繰り返されたのだろうね》
「だそうです、本物のユノ・ナダギが訪れた事で、そのユノ・ナダギが何者なのかと言う事になったそうです」
《なら、偽ユノ・ナダギについて、だね》
「はい」
《君は、どう思う?》
『人種への脅威は排除したいです、それに懸念も、出来れば遊びに来て欲しいですから』
《ふふふ、だそうだ、協力させて貰うよ。全ての悪魔が、ね》
「ありがとうございます」
《先ずは偽ユノ・ナダギ、らしき者が来たか》
「はい」
そして彼が右手を挙げると、影から古い電話機を持った若い執事が跪いたまま生え、電話機を差し出した。
その受話器を取ると同時に、秘匿の結界が張られた。
けれども音を遮るだけ。
非常に薄い膜の向こうでは、僅かに口が動いている事が分かる。
そして受話器を置くと共に、その結界は溶けて消え。
執事も影へと戻っていった。
《お待たせ、どうやらまだ、らしい。困ったね、他に行っているのだろう》
「そこまでお分かりに」
《死者に詳しいガミギュン、ゴミ捨て場の管理者であり一帯を治めるバアル・ゼバブ王に。あぁ、先ずはこの国について、君にも教えてあげよう》
『はい、宜しくお願いします』
《先ずは、お茶をどうぞ、地図を用意させるから》
『はい』
彼は非常に外交上手、いや接待上手なのだろう。
彼女にお茶を差し出すと、自動式人形にお菓子を運ばせ、妖精にお菓子の紹介を。
妖精。
いや、元は悪いイメージが有ったと言うし、生息域を選ばないのかも知れない。
と言うか、お菓子の種類が異常だ。
3段の回るガラスのケーキスタンドに、和洋折衷、中華のお菓子まで乗っている。
マカロンにギモーヴ、ミニショートケーキにクッキー、キャラメルに金平糖に。
龍鬚糖、作るの大変な筈。
職人がココに流れ着いて、いや、本場からお取り寄せか。
「凄い種類ですね」
《あぁ、大変だったろうに、けれどココでは心配する事は無いよ》
何の事か、一瞬分からなかった。
けれど、理解した時には思わず溜息が出そうになってしまった。
彼らにしてみれば愚かな決まり事の中、態々無駄に苦労させられ、見極められていたのだろうと思っての言葉。
つまりは情報統制され、物に不自由していたのだろう、と。
「いえ、不自由は無かったのでご心配無く」
《柵を出たからと言って、鞍が付いたままで不自由が無いとは、相当に躾けられてしまったのかな》
成程、馬扱いですか。
面白い、確かに血筋のコントロールは必要、しかも狙い通りの子が生まれるとは限らない。
そして某国の最高位は馬がお好きだったそうだし、引退すれば自由になれる。
「成程、正に馬」
《ふふ、すまないね、少し挑発したつもりだったんだけれど》
『ボティス伯爵、私の友達に意地悪は止めて下さい』
本当に、真剣に怒ってくれている。
血反吐を吐きたい。
罪悪感を血に変え吐き出してしまいたい、3ℓは吐き出したい。
《君の友達なら、余計に見定めさせて欲しいんだよ、愚か者と親しくなる事は損でしか無いからね》
「ご尤も、仰る通りです、不愉快では無かったのでご安心を」
『飼われた馬だって言ったんですよ?怒って良いんですからね?』
「いえ、言い得て妙なんですよ、私の後ろには帝国と強欲の王が既に居りますから」
『でも、飼われてるんですか?』
「ココの方にしてみれば、ですが本当に柵は有って無い様なもの、馬にも分かる様に境界線を教えてくれているに過ぎない。それこそ人種としての作法、ココの当たり前、常識を教えて貰っているんです」
『良い子だって分かりましたか?』
《はい、十分に、失礼致しました》
「いえ、向こうでは人か獣だけ、ですので獣と同じ様に言われて怒る方も居ますが。ココには様々な種が居ますし、どちらかと言えば獣に近いだろう、そう思われているのだと思いますから」
《獣にココまでの複雑性は無い、それに個体差も、何かを新たに生み出す能力も無い。そこまで見下げていると捉えられてしまったなら、改めて謝罪致します、我々は人種にも敬意を払っておりますから》
「では、星の子にはどうでしょう、偶々星屑にならなかった」
《それは違います、ココに存在した時点である程度を精霊や悪魔は理解する、だからこそ迎えに行く者が居る。不当に扱われるだろう、若しくは既に扱われている、そう察した段階で我々は使者を送る。ココに居るべき者、ソチラに居るべき者、そして選ぶべき者がココに居る事を補助する事も、楽しみとしています》
悪魔とは、天使の一側面に過ぎない。
そう説明した場合、星屑は驚嘆し、時に動揺し怒り出す事も有る。
星屑とは、ココで生きる適応力が無い者も指す。
「かなり、大半の方は困惑するかと」
《けれどアナタは既に腑に落ちている、理解しましたね》
『スズラン?』
「天使とは、天の国へ導く神の使い、若しくは善行へ導く翼を持つモノ」
《そして悪魔とは、地獄へ導くモノ、悪行へ引きずり込むとされている》
「向こうでは、ですがココでは違う、あくまでも適材適所へと導くモノ」
《はい、何故ならココが天国であり地獄であり、現世なのですから》
心根に悪を顰め、いつか悪行を成そうと企む者へ、敢えてその道を教授する。
そして正しく地獄へと落ちる様、補佐をする。
「善人と悪人が同じ場所に住んでは、いずれ善人が困る事になる」
《適時、住み分けられる様にと、そう助力しているに過ぎない》
「悪人とは、他者へ害なす者、ですか」
《はい、例えそこに悪意が無かったとしても、害となる者を選り分ける》
だからこそ、善人には天使に、悪人には悪魔として見える。
筈なんですが、天使の姿のままに見えるモノも居ますし、悪魔の様な姿に見えるモノも居る。
「だからこそ、向こうでは混乱してしまうのでは、と」
《はい》
『あぁ、成程、しかも嘘を言うかもですしね』
《はい、ですね》
「最初を、覚えてらっしゃいますか」
朧げに意思を持ちながらも、我々は他を認識し、ただ生きていた。
そうしていつしか、疑問が湧く様になった。
どうして他は食し、死に、繁殖するのか。
我々には食べる欲も睡眠欲も無く、生殖や繁殖の本能も無く、死も病も無かった。
だからこそ群れる事も、番う事も無く、ただ存在しているに過ぎない。
《仲間の分身に、1人と数えるべきか、問うてくれましたね》
「はい、どう数えるべきかと思ったので」
《我々は孤独でした、1体、では無く1人だと思っていたんです》
そう考える様になればなる程、何処からか知恵が湧いてきた。
我々は悪魔だ、我々と言う事はつまり、仲間が居る。
今となれば、思い出す感覚に似ていたと思いますが、そこにはまだ不思議だと言う考えは有りませんでした。
当然で、当たり前、考えれば分かる事に何の疑問も有りませんでした。
そうして幾ばくか過ぎた頃、知識と実態に差異を見付けた。
そして、人種の存在の欠如も。
そこで初めて、我々は精霊との対話を始めた。
けれど、精霊は人種の存在を拒絶した。
「では、精霊の方からも聞かなければいけませんね」
《そうだね、来て貰っているよ、少し待っていておくれね》
私達は悪魔と似た存在ながらも、幾ばくか異なっていた。
番い、家族を持ち、眠る。
『だからこそ、私達は人種を拒絶した、分かりますかスズランの』
「相性が、悪いかと」
『そうですね、相性が悪い、私達はその事を既に理解していた』
互いに惹かれ易く、時に異常なまでに執着し、諍いすら巻き起こす。
けれどココにはそうした悩みの種が存在しない、その平穏を私達は維持したかった。
それは他の種も同じく、悩みの種、人種の存在を拒否した。
「残念ですが、致し方無いかと」
『ありがとう、ですが悪魔達は折れなかった、そして私達は受け入れた』
《欠けを感じていたんだ》
私達も、何処かで欠けを感じていた。
けれども人種と精霊に起きた事を、私達は既に知り、理解していた。
人種が存在する事で発生し得る害悪を鑑みれば、人種への思いを無視すべきだ、私達はそう考え無視を続けた。
『人種には分からないでしょう、衰える事の無い記憶、感情。更にはそれらを抑える辛さを、同種も、悪魔も理解していた』
騙され虐げられたモノ、虐げるよう強いられたモノ、ただただ無惨に殺されたモノ。
ココはそうした役割から解放され、神に用意された楽園。
人種と言う暴力装置の無い、天国なのだと、そう理解しようとしていた。
《けれど、何にでも例外は有る》
『そう、人種を求める精霊が現れた』
あのか弱くも愚かで、群れなければ容易く滅ぶ種が、愛おしくて堪らない。
存在の欠如を無視する事は出来無い、我々は必要としている。
と、人種を作り出そうとした同種が現れた。
私達は説得した。
アレらが起こす問題は、様々な種を滅ぼす事だけでは無い。
悪魔なる、悲劇の種を生み出したのだから、と。
「すみません」
《いや、少なくとも君達はそうでは無いだろう、それこそ大元は僅かな数の者が考えた事。それに、君が生まれた時には既に覆せない程の存在だったなら、君に責任は全く無い》
「それでも、悪魔と言う概念には幾分かの固定概念が有ります」
《犬は噛むかも知れないから危ない、その程度だろうし、その程度は許容しているよ》
「それでも、どうして人種の存在を許してしまったのか、全く分からないのですが」
『忌む者、憎む者、愛する者。其々に派生を始め、其々に話し合い、先ずは人種に近いエルフを生み出した』
長命で賢く、大人しい種で手打ちとならないか、と譲歩してみたのです。
けれども納得せず、次はドワーフを、小人種を生み出した。
そこに文化文明が花開き、それぞれが切磋琢磨し、異種間でも交配が起きた。
当然、見た目は様々なモノが生まれ、殆どのモノが納得した。
けれど、人種でなければ愛せないモノ達は、相変わらず人種を求め続けた。
いえ、寧ろ悪化したとすら言えるでしょう。
《二足歩行の文明開化は、結局は僕らの知る人種の文明開化と似通る。思い出させる物が増え、懐かしさを呼んだ》
良く知っているモノに近い、けれども似て非なるもの。
物足りなさを覚え、人種を請うモノが増えてしまった。
『私達は制約を設け、一部の繁殖のみを許しました』
《けれど、最初は大失敗だったね》
時に短命である事に恨みを持ち、私達を恨み、人種では無いモノになった。
《コレが神の立場なのか、そう思わされたね》
『えぇ、大変でした』
いずれも人種である事を拒み、エルフやユニコーンとなった。
どの様に育てたとしても、違いを理解してしまうと、私達と同じ何かになってしまった。
「そんなに、根付かなかったんですね」
《今となっては、環境が整っていなかったから、だね》
『そして求めるモノ達も、いつしか声を上げなくなっていった』
けれど、そうして幾年か経った頃、先祖返りが起きた。
エルフとユニコーン、魔獣とドワーフの子に、稀に人種が現れる様になった。
けれども相変わらず人種して生を終えようとする者は現れず、とうとう、悪魔達が引き取ると言い出した。
「何故」
《1人は自らの理論の正しさを証明する為、1人は観察の為だったり、繁殖の為。けれど殆どのモノは、懐かしさと欠けた感覚を補う為》
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