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クラス会の誘い
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頭がクラクラして風景がぼやけて見える。
長年の過労で真っ直ぐ歩くのに苦労する。自分の身体が否が応でも睡眠を欲している。
今日は何とか終電に滑り込むことができたが、電車に間に合わずに会社で寝泊まりすることも珍しくない。今日は帰宅できるだけ良い方だ。足を一歩踏み出すだけでも億劫な反面、少しでも早く家に滑り込みたい。
腕時計に眼を向けて日付けが変わっていることを知ると、軽く舌うちした。
11月下旬にもなると、夏の鬱陶しい暑さは遠い記憶になり、クリーニングに出していたコートを取り出すことを考える時期になる。吐息が白く変色するのももうすぐだろう。
スーツの左ポケットから太ももに、微かに震える感触が伝わってきた。それが携帯電話だと気付くのに若干の時間を要した。この時間に掛かって来る電話は大抵が会社からの緊急な問い合わせで、ろくなことがない。
モニターを確認すると、幼馴染の佐々木圭吾からだった。社会人も二年目に入り少しだけ仕事に慣れた今、中学時代からの親友である佐々木とは、たまに連絡を取り合うようになっていた。
と言っても、私から連絡を取ることはあまりなく、電話掛かってくる割合の方が圧倒的に多いが、自分にとっては数少ないありがたい電話だ。
「もしもし?」
「伊吹か?おー久しぶり」
自分から電話を掛けておいて名前を確認するなよ、そう思いながらも懐かしい声に少し元気が出た。男にしては少し声が高く、人懐っこい話し方は中学時代から何も変わっていない。
「こんな時間になんだよ」
「いや、わりい。夕方にも電話したんだけどな。相変わらず忙しそうだからこの時間に掛け直した んだよ」
「そうか?気付かんかった。で、何の用だ?」
「今度12月5日に中学ん時のクラス会やるんだよ。お前も来るだろ?」
「あー多分無理だわ。仕事でいっぱいいっぱいだからよ」
「そっか、大変そうだな。でも行けるようだったらまた連絡くれよ」
「分かった。お前の顔も見たいしな」
幼馴染との会話を楽しみながら、自宅マンションに近づくに連れて街灯の少ない夜道に引き込まれていく。
そう言えば佐々木に報告しておかなければいけないことがあった。
「そうだっ、言うの忘れとったけど、俺今度婚約することになってな」
「あっ?8月に訊いてたじゃねえか。相手は前言ってた人と変わってないだろ?もしかして変わっ たとかか?伊吹、相手をコロコロ帰るなんてのは……」
「バカか、変わってる訳ないだろ」
「分かってるよ。結婚式には呼べよな」
分かってるなら言うなよ、と思いながら了承する。
「伊吹の惚気話を訊いてる程俺は暇じゃねえんだ。気分を害されたから電話を切る、じゃあな裏切 り者め」
24歳にもなって学生時代と変わらないノリで佐々木は一方的に電話を切った。
こいつはいくつになっても変わらないのだろう。予想通りの反応にモニターを見つめてほくそ笑んだ。
中学時代のクラスメイトの顔ぶれを思い出してみた。
勉強や部活で大変だったが、今思うと充実した日々を送っていたと思う。時間の経過とともに思い出は美化されるもの。そんなことは分かっているつもりだ。
学校を卒業して社会に出ると、誰もがその厳しさに負けそうになる。
自分も例外ではない。そんな時、ふと学生時代を思い返して、「あの時は楽しかったなあ」と考えずにはいられなくなる。
今頃になってようやく、しがらみが少なく、自由だったことを痛感させられる。
昔を思い出す時、必ず1人の同級生の顔が思い浮かぶ。
彼女は今何をやっているのだろうか。
アスファルトばかりを見ていた視線を夜空に向けると、「月野遥(つきのはるか)」という名前が辞書のように脳裏によぎる。
24歳になった彼女の姿を一度見てみたい。
長年の過労で真っ直ぐ歩くのに苦労する。自分の身体が否が応でも睡眠を欲している。
今日は何とか終電に滑り込むことができたが、電車に間に合わずに会社で寝泊まりすることも珍しくない。今日は帰宅できるだけ良い方だ。足を一歩踏み出すだけでも億劫な反面、少しでも早く家に滑り込みたい。
腕時計に眼を向けて日付けが変わっていることを知ると、軽く舌うちした。
11月下旬にもなると、夏の鬱陶しい暑さは遠い記憶になり、クリーニングに出していたコートを取り出すことを考える時期になる。吐息が白く変色するのももうすぐだろう。
スーツの左ポケットから太ももに、微かに震える感触が伝わってきた。それが携帯電話だと気付くのに若干の時間を要した。この時間に掛かって来る電話は大抵が会社からの緊急な問い合わせで、ろくなことがない。
モニターを確認すると、幼馴染の佐々木圭吾からだった。社会人も二年目に入り少しだけ仕事に慣れた今、中学時代からの親友である佐々木とは、たまに連絡を取り合うようになっていた。
と言っても、私から連絡を取ることはあまりなく、電話掛かってくる割合の方が圧倒的に多いが、自分にとっては数少ないありがたい電話だ。
「もしもし?」
「伊吹か?おー久しぶり」
自分から電話を掛けておいて名前を確認するなよ、そう思いながらも懐かしい声に少し元気が出た。男にしては少し声が高く、人懐っこい話し方は中学時代から何も変わっていない。
「こんな時間になんだよ」
「いや、わりい。夕方にも電話したんだけどな。相変わらず忙しそうだからこの時間に掛け直した んだよ」
「そうか?気付かんかった。で、何の用だ?」
「今度12月5日に中学ん時のクラス会やるんだよ。お前も来るだろ?」
「あー多分無理だわ。仕事でいっぱいいっぱいだからよ」
「そっか、大変そうだな。でも行けるようだったらまた連絡くれよ」
「分かった。お前の顔も見たいしな」
幼馴染との会話を楽しみながら、自宅マンションに近づくに連れて街灯の少ない夜道に引き込まれていく。
そう言えば佐々木に報告しておかなければいけないことがあった。
「そうだっ、言うの忘れとったけど、俺今度婚約することになってな」
「あっ?8月に訊いてたじゃねえか。相手は前言ってた人と変わってないだろ?もしかして変わっ たとかか?伊吹、相手をコロコロ帰るなんてのは……」
「バカか、変わってる訳ないだろ」
「分かってるよ。結婚式には呼べよな」
分かってるなら言うなよ、と思いながら了承する。
「伊吹の惚気話を訊いてる程俺は暇じゃねえんだ。気分を害されたから電話を切る、じゃあな裏切 り者め」
24歳にもなって学生時代と変わらないノリで佐々木は一方的に電話を切った。
こいつはいくつになっても変わらないのだろう。予想通りの反応にモニターを見つめてほくそ笑んだ。
中学時代のクラスメイトの顔ぶれを思い出してみた。
勉強や部活で大変だったが、今思うと充実した日々を送っていたと思う。時間の経過とともに思い出は美化されるもの。そんなことは分かっているつもりだ。
学校を卒業して社会に出ると、誰もがその厳しさに負けそうになる。
自分も例外ではない。そんな時、ふと学生時代を思い返して、「あの時は楽しかったなあ」と考えずにはいられなくなる。
今頃になってようやく、しがらみが少なく、自由だったことを痛感させられる。
昔を思い出す時、必ず1人の同級生の顔が思い浮かぶ。
彼女は今何をやっているのだろうか。
アスファルトばかりを見ていた視線を夜空に向けると、「月野遥(つきのはるか)」という名前が辞書のように脳裏によぎる。
24歳になった彼女の姿を一度見てみたい。
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