入れ替わった彼女

チャロコロ

文字の大きさ
7 / 84

日常 1

しおりを挟む
 会社に出勤するとすぐに書類に眼を通す。
 今日も机の上には大量の書類が置かれている。
 仕事量から考えて、今日も帰りが遅くなることは間違いないだろう。
 書類を一枚ずつめくりながら朝の出来事を思い出す。
 私が彼女に月野遥かどうか訊ねた時、彼女は確かに琴音と応えた。
 その表情には笑みもこぼれていた。
 そんな訳がない。
 しかし疑問が脳裏をよぎる。
 遥は何故自分のことを琴音と言っているのだろう?
 琴音のことを知っていたのだろうか?
 そもそも、どうして遥は私の家にいたんだ?
 突如左脳を切り裂くような激しい頭痛が襲い、両手で頭を抱え込む。
 左脳に心臓が移動したかのような激しい鼓動を感じる。突然の出来事に脳が対応できていないのだろう。
 「大丈夫か?」
 課長が心配しているかの様に声をかけてきた。
 「ええ、大丈夫です。少し頭痛がしただけですから」
 「そうか、最近忙しいからな。あまりひどいようだったら早めにあがれ」
 「ありがとうございます。大分痛みも引いてきたので問題ありません」
 私の応えに課長は頷くと業務を再開した。
 彼は私にばかり仕事を振ってくる。
 心配している振りをしているだけなのが態度で分かる。
 第一、大量の仕事がなければとっくに帰宅している。心の中で舌打ちをした。
 今日は早く仕事を済ませたい。遥は今までどんな人生を歩んでいたのか。どうして私の家が分かったのか。聞きたいことを上げたらきりがない。
 今日は朝一からお客様との打ち合わせがあったので遥と満足に話をすることができなかった。私は出勤する時に遥に何度も言った。
 「俺は月野さんと話をしたいことがある。できるだけ早く帰るから。頼むからここにいてくれ」
 遥は笑顔で頷くと私の手を両手で握ってきた。
 私は笑い返すとせわしなく玄関を出たが、もう一度戻ると彼女から携帯電話の番号を聞いて登録しておいた。
 いつも出勤する満員電車の中で憂鬱な気分になりながら眼を瞑っているのだが、今日は朝の出来事に眼が冴えてしまい、眠気がとんでいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

あやかし帝都の婚姻譚 〜浄癒の花嫁が祓魔の軍人に溺愛されるまで〜

鳴猫ツミキ
キャラ文芸
【完結】【第一章までで一区切り】時は大正。天羽家に生まれた桜子は、特異な体質から、家族に虐げられた生活を送っていた。すると女学院から帰ったある日、見合いをするよう命じられる。相手は冷酷だと評判の帝国陸軍あやかし対策部隊の四峰礼人だった。※和風シンデレラ風のお話です。恋愛要素が多いですが、あやかし要素が主体です。第9回キャラ文芸大賞に応募しているので、応援して頂けましたら嬉しいです。【第一章で一区切りで単体で読めますので、そこまででもご覧頂けると嬉しいです】。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~

めぐみ
歴史・時代
お民は江戸は町外れ徳平店(とくべいだな)に夫源治と二人暮らし。  源治はお民より年下で、お民は再婚である。前の亭主との間には一人息子がいたが、川に落ちて夭折してしまった。その後、どれだけ望んでも、子どもは授からなかった。  長屋暮らしは慎ましいものだが、お民は夫に愛されて、女としても満ち足りた日々を過ごしている。  そんなある日、徳平店が近々、取り壊されるという話が持ちあがる。徳平店の土地をもっているのは大身旗本の石澤嘉門(いしざわかもん)だ。その嘉門、実はお民をふとしたことから見初め、お民を期間限定の側室として差し出すなら、長屋取り壊しの話も考え直しても良いという。  明らかにお民を手に入れんがための策略、しかし、お民は長屋に住む皆のことを考えて、殿様の取引に応じるのだった。 〝行くな!〟と懸命に止める夫に哀しく微笑み、〝約束の1年が過ぎたから、きっとお前さんの元に帰ってくるよ〟と残して―。

処理中です...