入れ替わった彼女

チャロコロ

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聞いたことのある名前 1

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 会社に着いて一息ついた。昨日は興奮してなかなか寝付くことができなかった。冬なのに汗が溢れてきた。
 「大丈夫ですか?」
 一所懸命汗を拭っていると、後輩がコーヒーを出してくれた。
 「おお、悪い。ありがと。単なる寝坊だよ」
 「疲れてるんですよ。無理したらダメっすよ」
 後輩は微笑みながら席に戻る。
 「何だ。疲れてるんなら帰っていいんだぞ」
 私達の会話を聞いていたのだろう。新聞を片手に課長が声を掛けてきた。
 「大丈夫です」
 新聞読む時間があるならもう少し部下のこと考えろよ。喉まで出かかった言葉を飲みこみながらパソコンを起動させた。課長は私の態度を気にする様子もなく「そうか」とだけ言うとコーヒーに口をつけた。
 ふと後輩の方を見ると、後輩は課長の顔を見ながら複雑な表情をしていた。こいつも課長の仕事に不満を感じているのかも知れない。
 いつも通りめまぐるしく時間が過ぎたが、今日は8時に仕事を終わらすことができた。
 今日は来ているのだろうか。
 冷えた身体を早く温めたい。
 いつもなら遥に会いたくて小走りで帰宅を急ぐが、昨日の出来事を思い出し、足取りが重い。
 昨日の夜、下から私の部屋を見上げる遥を見つけた後、最大限の警戒をしながら再度カーテンの隙間から外を覗いた時には彼女の姿はいなくなっていた。
  まるで最初から誰もいなかったかのように、木々が風で揺らいでいるだけだった。
そんなことを考えているうちにマンションに着いてしまった。エントランスに入る前に路上から自室を見上げる。電気は点いていなかった。
 今日は来ていないか、既に帰宅しているようだ。
 念のため用心深く室内に入ったが誰もいなかった。テーブルにはいつも通り晩御飯が用意されている。遥のいない空間に少し安堵した。
 それに、私は確かめたいことがあった。保険証に書かれていた「敷島伊織」だ。
 昨日は色々あったせいで深く考える時間がなかったが、「敷島伊織」という名前は聞いたことがある、気がする。
 学生時代の同級生?会社の顧客?はっきりと思い出せないが、どこかで接点があった。
 はっきりと思い出せないということは深く接したことがないということだろう。帰宅途中も必死に記憶を辿ったが思い出せなかった。
 クローゼットの中から小学校時代から大学時代にかけての卒業アルバムを取り出して、片っ端から確認してみたが同じ名前はなかった。
 結婚して名字が変わっている可能性を考えて名前だけでも探してみたが、大学のアルバムに同じ名前の学生がいたものの、学部が違う上に全く接点がなかったのでこの人ではないだろう。
 どっかで訊いたことあるんだよな。
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