入れ替わった彼女

チャロコロ

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隠し事 4

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 「それは怒鳴り合っている男女がいたという目撃があったからですか?」
 「それもあるんですが、私が気になったのは佐々木さんの綺麗な傷跡です」
 「綺麗な?」
 「ええ、佐々木さんの麻酔が効いていた時に腕を見たのですが、そこには防御創がありませんでし た。
  犯人に抵抗したり、刺されるのを防ぐ時にできる傷が見当たらなかったのです。
  現場の人通りが少ないことを考えれば、正面から女性に刺されるのに男性が全く防御していない のは不可解だ。
  それに、刺傷が腹部に真っ直ぐ入っていることからも避けていないと考えるのが妥当です。
  つまり顔見知りの可能性が高い。あくまで推測にすぎませんが……」 
 警察のいう通り、佐々木が顔見知りの女に刺されたと考えるのが普通だろう。
 しばらく聴取を受けていると、伊藤刑事の携帯電話が鳴り、短い会話をしたかと思うと木村刑事に耳打ちした。
 「すいません本田さん、この事件で進展があったようなので、一度署に戻ります。
  すぐに戻ってくるつもりですが、佐々木さんが手術を終えて話せるようになったら……」
 「分かっています。佐々木から話を訊いておきます」
 二人の刑事は「お願いします」と言って立ち去ろうとしたが、年配の刑事が「そうだった」と思い出したかのように私を見た。
 「佐々木さんのことを調べていて一つ気になったことがあるんですが」
 「……何ですか?」
 「佐々木さんが中学生の時、人命救助をしたことをご存じですか?」
 「……ええ、その事故は私にとっても忘れられない出来事でしたから」
 「と、言いますと?」
 私は事の顛末を簡単に説明した。
 その時事故に遭った家族の娘が中学校の同級生だったことは伝えたが、その同級生と私が当時付き合っていたことや、婚約していることは伏せておいた。
 隠すつもりはないが、そこまで伝える必要性も感じなかったからだ。
 刑事は既に知っている様子で私の話に頷いていた。
 「で、それがどうかしたんですか?」
 今回の佐々木の事件と遥の事故とが関係するとでもいうのか?
 「いえ……、それがどうしたと言う訳じゃないんですけど。
  私もあの事故のことははっきり覚えてましてね」
 刑事は何かを隠している、あるいは私に訊きたいことがあるが訊ねるべきかどうか悩んでいるようにも見えた。私のことが信用できる男かどうか、見定めきれていないのだろう。
 別れ際に一言付け足しておいた。
 「……あの時、生き残った娘は苦労したと思います」
 「そうですね、娘さん達は本当に不運だった」
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