入れ替わった彼女

チャロコロ

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疑惑 1

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 刑事は「すぐに戻ります」と言って病院を出て行った。
 後ろ姿を見送ってから深い溜息をついて待合ソファーに戻った。
 犯人でないとはいえ、警察と話すのは緊張する。
 私がソファーに座ると、待っていたかのように看護師さんが声をかけてきて佐々木の手術が成功に終わったことを伝えてくれた。だが、手術が終わったばかりで麻酔が効いているので、面会は少し待つよう指示された。
 それにしても、どうして佐々木は怪我をしたことを黙っていたのだろうか?
 警察に話をされると都合が悪いことでもあったのか。
 佐々木は人にうしろ指指されるような奴ではない。
 女絡み?まさか……、あいつは昔から男女問わず人気があったが、女の噂は全くなかった。色恋沙汰で女に憎まれるような奴じゃない。
 一方的にストーカーされていたとかなら別だが。佐々木は自分に都合の悪いことを隠すようなことはしない。他人を守るためなら、それをいとわないところがあるが……。
 それに警察は過去の事故について何で今頃調べているのだろうか?
 その事故と今回の佐々木の怪我と関連があるとにらんでいるということか……。
 ぼんやり考えていると、一人の女の顔が思い浮かんだがすぐにそれを否定した。いや、そんなはずはない。根拠がなさ過ぎる。
 しかし、何故彼女は俺がクラス会に行くことをあんなに強く反対したんだ?彼女にとって佐々木は命の恩人だ。
 感謝することがあっても恨むはずがない。遥が私経由で佐々木に感謝の意を伝えることも可能だったはずだ。
 「申し訳ないことをした」
 助手席でそう呟いた佐々木。
 私はその時、あいつが彼女の両親を助けることができなかったことによる後悔の念だと勝手に解釈した。
 だが、この解釈が佐々木の真意じゃなかったとしたらどうだろう。佐々木は過去の事故について真実を知っていた。
 例えば、佐々木は彼女の両親を助けることができたが助けなかった、最初から誰も助けなかった、あるいは佐々木自体に事故の原因があった。
 どれも推測の域を出ないが、佐々木の謝罪の言葉が自分が犯してしまった罪に対するものだったとしたら……。
 唯一真実を知っていた彼女は積年の恨みから佐々木に復讐した。
 佐々木に顔を見られてしまった彼女は、私や警察に犯行が知られることを恐れてクラス会に行かせることを強く拒否した。
 佐々木を病院に連れて行く前に佐々木と彼女を電話で話をさせた時に、何故か佐々木はすぐに電話を返してきた。
 人懐っこい性格の佐々木が相づちをうつことに終始して、すぐに会話を終わらせようとするのもおかしい。あいつは口止めをされたり、あるいは脅迫をされたかも知れない。
 月野遥、君は佐々木を刺したのか?
 君との婚約を決めた八月に、私に何があったか知っているのか? 
 全てを訊こう。仮に遥が犯人だとしたら過去にどんな怨恨があろうと罪を償うべきだ。
 私は自分を奮い立たせるように外に出ると、遥に電話をした。
 佐々木が腹を刺されて手術を受けていることを伝えると遥は驚いた様子だったが、病院に来ることは躊躇していた。やはりおかしい。
 驚いているのも演技かも知れない。今までにないくらい強い口調で、すぐに病院に来るよう説得すると、彼女も諦めた様子で渋々了承した。
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