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何かがいる 4
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外にいる女とは違い、人間らしい容姿をしており、何をしでかすか分からない恐怖心を煽る様な奇声を上げる訳でもない。ただ、静かにこちらを見つめているだけだった。
にも関わらず、じっとりとした眼は感情が読み取れない分、人を殺めることを厭わない空気を醸し出していた。
この女は間違いなく、やばい……。
言葉で形容することが出来ない力が、彼女にある。
見つかってはいけない相手だった。云い様のない後悔の念が頭をよぎる。僕を見つめる女の瞳孔が一気に大きくなると、キーンという甲高い大音量の耳鳴りが耳介道を通って鼓膜まで響き渡り、それに呼応する様に激しい頭痛が生じる。
耳鳴りが更に激しくなるに連れて五感の機能が次第に低下していく。
この耳鳴りは女から意図的に発せられたものだと直感した。
女はゆっくりと僕の顔に被さってきた。
「やめてくれ、これ以上近寄らないで……」
強く訴えるが、声にすることが出来ない。
それでも女はじっくりと顔を寄せて来る。
「来るなっ!」
怒鳴ったつもりだったが、実際には口をパクパクと開くことしか出来ない。
その瞬間、甲高い耳鳴りがゴーという低い音に変わると能面の様な女の顔がぐわっと一気に距離を詰めて来た。
「……」
抑揚の無い声だった。
彼女の容姿を見ていなければ男女の別も分からない、感情の読み取れない機械の様な声。
「うっ、うわああぁぁぁー」
僕の感情が一気に爆発した。
それがきっかけとなり、固まっていた身体が一気に鬱憤を爆発させたかの様に動き出した。
僕は反転して土足のまま上がり框を越えて通路に上がると咄嗟に右へ走った。
この先に何があるのかは分からない。だけど兎に角一刻も早くここから離れたい。その一心しか、僕にはなかった。
直ぐに後方から引き戸が倒れる衝撃音が響いた。
奴がゆっくりと息遣いを上げてベッチャ……と。
ベチャベチャベチャベチャベチャベチャベチャベチャ
奴が左右の眼をぎょろぎょろと不規則に動かし、四つん這いになって手足を蟲の様に動かしながら必死に追いかけて来る姿を想像してしまい、思わず振り返りそうになったが思いとどまった。
その姿をこの眼で見てしまうと今度こそ発狂してしまうかも知れない。そんな思いが過ったからだ。
どこかに窓か勝手口があるはずだ……。
そこから外に出よう。
全力で通路を走っているつもりだが、気持ちばかりが焦ってしまい空中で足がもたついてしまう。その間にもベチャベチャという音は近づいて来る。
それでも前を向いて必死に出口を探す。
ない、ない、ない……。
おかしい、この家はおかしい……。
いくら立派な家とは言っても、通路が長すぎる。それに窓が一つもないとは。まるで灯りのないトンネルを走らされている感じだ。
「うはぁぁあぁあぁー」
後方から響く突然の絶叫に驚いてしまい、転んでしまった。
ベッチャ……、ベチャベチャッ
奴はここぞとばかりにスピードを上げた。
僕は思わず振り返ってしまった。
そこには……。
にも関わらず、じっとりとした眼は感情が読み取れない分、人を殺めることを厭わない空気を醸し出していた。
この女は間違いなく、やばい……。
言葉で形容することが出来ない力が、彼女にある。
見つかってはいけない相手だった。云い様のない後悔の念が頭をよぎる。僕を見つめる女の瞳孔が一気に大きくなると、キーンという甲高い大音量の耳鳴りが耳介道を通って鼓膜まで響き渡り、それに呼応する様に激しい頭痛が生じる。
耳鳴りが更に激しくなるに連れて五感の機能が次第に低下していく。
この耳鳴りは女から意図的に発せられたものだと直感した。
女はゆっくりと僕の顔に被さってきた。
「やめてくれ、これ以上近寄らないで……」
強く訴えるが、声にすることが出来ない。
それでも女はじっくりと顔を寄せて来る。
「来るなっ!」
怒鳴ったつもりだったが、実際には口をパクパクと開くことしか出来ない。
その瞬間、甲高い耳鳴りがゴーという低い音に変わると能面の様な女の顔がぐわっと一気に距離を詰めて来た。
「……」
抑揚の無い声だった。
彼女の容姿を見ていなければ男女の別も分からない、感情の読み取れない機械の様な声。
「うっ、うわああぁぁぁー」
僕の感情が一気に爆発した。
それがきっかけとなり、固まっていた身体が一気に鬱憤を爆発させたかの様に動き出した。
僕は反転して土足のまま上がり框を越えて通路に上がると咄嗟に右へ走った。
この先に何があるのかは分からない。だけど兎に角一刻も早くここから離れたい。その一心しか、僕にはなかった。
直ぐに後方から引き戸が倒れる衝撃音が響いた。
奴がゆっくりと息遣いを上げてベッチャ……と。
ベチャベチャベチャベチャベチャベチャベチャベチャ
奴が左右の眼をぎょろぎょろと不規則に動かし、四つん這いになって手足を蟲の様に動かしながら必死に追いかけて来る姿を想像してしまい、思わず振り返りそうになったが思いとどまった。
その姿をこの眼で見てしまうと今度こそ発狂してしまうかも知れない。そんな思いが過ったからだ。
どこかに窓か勝手口があるはずだ……。
そこから外に出よう。
全力で通路を走っているつもりだが、気持ちばかりが焦ってしまい空中で足がもたついてしまう。その間にもベチャベチャという音は近づいて来る。
それでも前を向いて必死に出口を探す。
ない、ない、ない……。
おかしい、この家はおかしい……。
いくら立派な家とは言っても、通路が長すぎる。それに窓が一つもないとは。まるで灯りのないトンネルを走らされている感じだ。
「うはぁぁあぁあぁー」
後方から響く突然の絶叫に驚いてしまい、転んでしまった。
ベッチャ……、ベチャベチャッ
奴はここぞとばかりにスピードを上げた。
僕は思わず振り返ってしまった。
そこには……。
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