僕達は大人になれない

如月家 ３

　「涼ちゃんは知らないと思うけど……」
　と真菜。「この村では昔から双子は忌まわしいものとして扱われて来たの」
　理解できなかった。
　「双子が忌まわしい？何でだよ。双子が生まれたことで弊害を及ぼすとでもいうのかよ」
　「そんなこと誰も思ってないよ。今はね……。
　　でも昔は違う、生きている時代が違えば考え方も違うんだよ」
　「この村では、ってことか……」
　「あくまでも昔のことだけどね。今の時代に双子が忌まわしいと思っている人なんて、さすがにい　ないと思う、たぶん……。遠い昔の話のこと。
　　でもね、如月結花(ゆか)・恵美(えみ)が揃って生まれてきた当時の長老連中は決して良い顔をし　なかったの。
　　古い悪習がかろうじて残ってた……。村が衰退する、滅びるってね……」
　「滅びる？双宝村にはそんな伝承があるってことか……」
　真菜は桜を見上げた。１週間前まで一面のピンク色に塗られたキャンパスは、今では辛うじて面影を残しているだけだ。
　「私も詳しくは分からないけど、この村では双子が生まれた年に大きな天災が発生し、その後も双　子の片方が亡くなるまでは疫病が流行ったり、人殺しがあったり村同士で大きな諍(いさか)いが起　きて多くの村人が命を落としたり……」
　「そんなことって……」
　「もちろん単なる偶然に決まってる。
　　タイミング悪く村にとって良くないことが多く起こってしまただけに過ぎない。
　　だけど、迷信深い村人はそれを偶然だとは考えなかった。
    　そこで村人は双宝村の存続のために、対応策を取ることにしたの」
　嫌な予感しかなかった。　 
　「殺すってことか……」
　「そう……」
　真菜は頷いた。