僕達は大人になれない

チャロコロ

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如月家 4

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 「子供が生まれて来た時に双子だったことが分かると、その場で産婆さんが一方の赤ちゃんを殺す
 の。
  それがこの村のルールだった」 
 「そんなこと母親が許さねえだろ?自分の子供だぞ」
 「分からないよ……」
 真菜の予想外の反応に驚いた。
  普段の彼女からは想像出来ないクールな態度に、思わず言葉に詰まってしまった。
 「分からない、って……」
 「昔から当たり前の様に行われてきた風習だったとしたら、村人にとってそれは当然の行為だった かも知れないじゃない。
  村が貧しかったとしたら尚更ね……」
 「後継ぎは欲しいけど、二人目を育てるほどの余裕は無いってことか」
 「それは飽くまでも私の推論だよ、実際にその時代に生きてた訳じゃないしね」
 真菜は怪訝そうに僕を見つめる。 
 「でも、それも今となっては昔の話なんだろ?     
  それとも、基樹と更紗は双子だっていうだけで、今も差別を受けているってことなのか?」
 「それはない、と思う」
 「思う?」 
 「表向きにはね、実際には今の年寄連中がどう思っているかまでは分からないよ。
  例の悪習も昭和初期には行われなくなったって話だし」
 昭和初期まで……。
 逆に言えば、そんな怖ろしいことが80年位前までは行われていたということか。しかし今の話だけでは、如月家と基樹達との共通点は双子という点。ただ、それだけだ。
 それに、基樹の両親は何故わざわざ『双子を忌むべきもの』として扱ってきた村に引っ越して来たんだ。
 そんな伝承があることを知らなかっただけなのか?それとも、知っていて、敢えてこの地に来たのか?分からない。
 この村には特別な産業がある訳でも無ければ、村の活性化のために余所者を積極的に誘致しているとも思えない。
 普通に考えれば、僕と同じで親が双宝村の出身で、仕事や家庭の事情でここに戻って来たと考えるのが妥当だ。
 真菜は淡々と続けた。
 「そして時代は流れて、村にとって衝撃的なことが起きたの」
 「よりによって、村の有力者である如月家で双子が生まれてしまった、ってことか……」 
 皮肉なことだ。天災、疫病、飢饉そして農作物の不作。村人が影響を受けることはもちろん、如月家も多大な影響を被ることは云うまでもない。
 生きるか死ぬかの瀬戸際で、村人が決めた非情の決断。
 双子の内の一方を殺めるという掟を決めたのだ。当然、最終的に決めるのは村長をはじめ、村の有力者だ。
 そんな重要な決定事項に、如月家が関わっていないはずがない。
 「でも……でもよ、如月家に双子が生まれた時には、さっき云ってた様なくだらない掟
 はなくなってたんだろ?昭和初期に掟がなくなったってなると、ええと……結花と恵美
 が生まれる十数年くらい前には消滅してたってことだ。そんな古いことに村民は拘って
 たってのか?」
 僕の疑問に、真菜は愚問とでも云いたげな顔をした。
 「涼ちゃんは分かってない」
 真菜は続ける。
 「数百年も続いて来た風習が、時代の流れに合わなくなったので無くなりました。
  はい、これからは時代に合わせて生きて行きましょう。って、そんな単純な話だと思う?」
 「それは……」
 「平成になって数十年経過した現代ですら、祭りをしたり、お盆には先祖のお墓参りをしたりして るでしょ?」
 「それとこれとは違うだろ」
 「そうなかなぁ?私は同じだと思う。
  未だに平将門の首塚の祟りや某トンネル、それにホテルでの心霊現象の話は日本全国に存在す  る。これだけ科学で証明出来ることが増えた現代ですら人々は恐れてるのよ。
  常識では理解出来ない、不可解な現象を……」
 言葉に詰まった。真菜の云っていることは的を得ている気がしたからだ。
 「そして、不可解なことは如月姉妹の身にも起きたの」
 「何があったんだよ……」
 詳しくは分からないけど、そう前置きして彼女は端的に云った。 
 「消えたの」
 「消えた?」
 「そう、二人共ね。9月27日、如月姉妹は忽然と姿を消したわ」
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