僕達は大人になれない

チャロコロ

文字の大きさ
21 / 48

大人になれない 1

しおりを挟む
 「その後はどうなったんだよ?神隠しにでもあったとでも云うのかよ?」
 「見つかってないよ。あれからずーっと、今でもね」
 「神隠しって云われてたって……。大体は誘拐や殺人がらみの事件だったりするだろ?」
 当時は今とは比べ物にならない程、双子は嫌われていたことは容易に想像出来る。
 豪農の娘だったら表立って文句を云う奴はいないだろう。
 だが、そこに大きな問題がある。
 村で不幸な事がある度に、人は怒りの矛先をどこかに向けなければ気が済まない。
 そういうものだ。
 小さな不満が次第に大きくなり、鬱憤が爆発した村人が姉妹に……。神隠しというより、殺されたと考える方が妥当だろう。
 「その可能性も無くはないかな」
 小首を傾げた真菜は、言葉とは裏腹に納得はしていない様子だった。
 「実際、姉妹は姿を消す前に変なことを云ってたって話だし」
 「誰かにつけられているとか、村人に殺されるとかか?」
 「似たようなもんかも。特に姉の結花の言葉は印象的だったって、お祖母ちゃんは云ってたなぁ。
  『私はこの村では大人になれない』って、結花はそう云ってたらしい……」
 私はこの村では大人になれない。同じ言葉を反芻してみる。
 「村人に殺される、これ以上この村で生活したくない、重い病気で長生き出来ないとかか……。
  どうとでも取れる云い方だな」
 自分なりの解釈を口にしてみたものの、どこか釈然としない。
 だが、意外にも真菜は「そうだよね」と、僕の意見に同意した。
 そして付け加えた。
 「『呪い殺される』という意味だった。とも考えることも出来る」
 真菜は不気味な笑みを浮かべた。その笑いに背筋に寒いものを感じ、咄嗟に反論した。
 「それは無理のある解釈だろっ。
  村の悪習を考えたら殺されたか、逃走したと考えた方が妥当だろ」
 「だからこそ呪われたのかもよ。
  双子が生きていることで不満に思ったのは生きてる村民だけ?今まで理不尽に殺されて来た双子 は?そもそも双子のうち一人を殺すなんていう掟を決めたのは村の権力者だよね?」
 如月家は理不尽に殺された霊からも恨まれている。そう云いたいのだろう。
 しかも如月姉妹は二人共生きていた。
 「だけどよ、如月姉妹が生まれる時にそんな悪習は無くなってたんなら、それこそ逆恨みだろ。
  時代が変わってるんだ。姉妹自体に罪はない」
 そう云いながらも、如月家での体験が脳裏を過る。 
 「逆だと思う……」
 「逆?そうか、そういうことか……。
  よりによって村の権力者から双子が生まれてしまったことで、村は悪習を止めざるを得なかっ  た」
 「飽くまで私の考えだけどね。
  昭和初期には悪習が無くなったって云っても、単にその間に双子が生まれてこなかっただけかも 知れないしね。
  悪習は当時まだ存在していたという可能性は否定できないでしょ?」
 その通りだ。
 「ああ。如月家だから生きさせた、例外として。そんなことがあってもおかしくはないかもな。
  そのまま時代の流れにそぐわないという理由をつけて、悪習も削除した」
 僕の意見に真菜は頷きながら補足した。
 「だけど結局、如月姉妹は消えてしまった」
 双宝村では双子は生きていけない。
 それは悪習が無くなった現代でも同じだと云うことだろうか。
 村人の思い込みから始まってしまった悲しい悪習が、現代で当たり前の様に生きる双子に対する怒り、悲しみ、絶望、嫉妬の感情が複雑に絡み合って大きな憎悪となり、それが怨霊となって基樹と更紗を襲っているとでも云うのか?
 「基樹達も消えてしまうかも知れないってことか?」
 真菜は立ち止った。
 眼の前には春から暮らしている家がある。話している内に、いつの間にか自宅に着いていたのだ。
 「如月結花の言葉……」
 「この村では大人になれない」    
 如月結花。
 おそらく、僕が出会った、あの少女。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

意味が分かると、分からないと怖い話【体験談+】

緑川
ホラー
ショートショートの寄せ集め。 幻想的から現実味溢れるものなど様々、存在。 出来の良し悪しについては格差あるので悪しからず。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

処理中です...