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友情 5
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はああぁあぁあ
壁から出て来た顔は蝋色の分厚い粘膜に覆われており、奴は大きく口を開きながらその粘膜を破ろうしている。更なる絶叫と共に首元まで現れた姿を見た僕の身体は石の様に固まっていた。
ああああぁあぁああ
胴体まで姿を現し始めた時には、奴の顔の粘膜は薄くなり、顔がはっきりと確認出来る様にまでなっていた。
スズメバチを連想させる縦長の眼に、蛇口をひねった時に出る水の如く溢れ出す大量の涎を振り乱す口は明らかに狂喜そのものだった。
ちらりと真菜に眼を向けると、彼女の唇は暗紫赤色に変色して上下にガクガクと震わせている。僕は咄嗟に彼女の手を握った。だが、真菜に触れて落ち着いたのは僕の方だったのかも知れない。
もう一度壁の方向を睨みつけた。
奴の笑みと歓喜の絶叫は、完全にイっている。奴の身体が全部現れた時には、全身を覆っていた粘着物がミシミシと音を立てて破れ始めていた。
助かるにはここから脱出するしか方法はない。
勿論四人で、だ。
強く握りしめた真菜の手を緩めて、一気に階段を駆け上がった。
助けるんだ。
助かるんだ。
勢いのままに階段を上り終えた僕は茫然と階下を見つめた。玄関先には真菜と更紗が立っている。
いない……。
基樹がいない。
そんな……。
入れ違いに一階に下りたなんてことはありえない。2階か?2階の扉を手当たり次第に開けて中を確認するが人の気配はない。
「どこだ、どこにいるんだよ?」
ここにいないということは、やはり1階か?それとももう……。
「おいっ、基樹が。基樹がいないぞっ!」
階段を飛ばし飛ばしに下りて、勢い余って正面の壁にぶつかりながらも真菜達に叫んだ。
幸い、奴はまだ粘膜から脱してはいないが、後は下半身だけという状態だった。それでも常軌を逸した眼はこちらを捉えて離さない。
もう時間はない。
真菜と更紗は僕の背後で絶叫している奴に対する恐怖から完全に動けないでいる。
絶叫を背中に受けながら、決断せざるを得なかった。
二人だけでも助けるしかない。そんな思いが僕を突き動かした。玄関を開けて女子二人、それぞれの腕を掴むとその勢いのままに外に出そうとした。
が、引っ張られたのは僕の方だった。
ゴムの様に引き戻されると上がり框に背中を勢いよく打ち付けた。
「つうっ……」
背中を擦りながら、「逃げるぞ、いいから」と伝える。
ここで説明などしている場合ではない。二人に反応は無い。慄きながら僕の後方、壁を見ている。怖ろしいのは分かっている。
しかし、奴が粘膜から脱して襲って来たら元も子もない。
全員に待ち受けるのは、神隠しという名の“死”だ。
壁から出て来た顔は蝋色の分厚い粘膜に覆われており、奴は大きく口を開きながらその粘膜を破ろうしている。更なる絶叫と共に首元まで現れた姿を見た僕の身体は石の様に固まっていた。
ああああぁあぁああ
胴体まで姿を現し始めた時には、奴の顔の粘膜は薄くなり、顔がはっきりと確認出来る様にまでなっていた。
スズメバチを連想させる縦長の眼に、蛇口をひねった時に出る水の如く溢れ出す大量の涎を振り乱す口は明らかに狂喜そのものだった。
ちらりと真菜に眼を向けると、彼女の唇は暗紫赤色に変色して上下にガクガクと震わせている。僕は咄嗟に彼女の手を握った。だが、真菜に触れて落ち着いたのは僕の方だったのかも知れない。
もう一度壁の方向を睨みつけた。
奴の笑みと歓喜の絶叫は、完全にイっている。奴の身体が全部現れた時には、全身を覆っていた粘着物がミシミシと音を立てて破れ始めていた。
助かるにはここから脱出するしか方法はない。
勿論四人で、だ。
強く握りしめた真菜の手を緩めて、一気に階段を駆け上がった。
助けるんだ。
助かるんだ。
勢いのままに階段を上り終えた僕は茫然と階下を見つめた。玄関先には真菜と更紗が立っている。
いない……。
基樹がいない。
そんな……。
入れ違いに一階に下りたなんてことはありえない。2階か?2階の扉を手当たり次第に開けて中を確認するが人の気配はない。
「どこだ、どこにいるんだよ?」
ここにいないということは、やはり1階か?それとももう……。
「おいっ、基樹が。基樹がいないぞっ!」
階段を飛ばし飛ばしに下りて、勢い余って正面の壁にぶつかりながらも真菜達に叫んだ。
幸い、奴はまだ粘膜から脱してはいないが、後は下半身だけという状態だった。それでも常軌を逸した眼はこちらを捉えて離さない。
もう時間はない。
真菜と更紗は僕の背後で絶叫している奴に対する恐怖から完全に動けないでいる。
絶叫を背中に受けながら、決断せざるを得なかった。
二人だけでも助けるしかない。そんな思いが僕を突き動かした。玄関を開けて女子二人、それぞれの腕を掴むとその勢いのままに外に出そうとした。
が、引っ張られたのは僕の方だった。
ゴムの様に引き戻されると上がり框に背中を勢いよく打ち付けた。
「つうっ……」
背中を擦りながら、「逃げるぞ、いいから」と伝える。
ここで説明などしている場合ではない。二人に反応は無い。慄きながら僕の後方、壁を見ている。怖ろしいのは分かっている。
しかし、奴が粘膜から脱して襲って来たら元も子もない。
全員に待ち受けるのは、神隠しという名の“死”だ。
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