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記憶
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「そんな……、別人だったら他の生徒や親が指摘するんじゃないですか?」
三嶋先生が思わず立ち上がったのを、佐々木が冷静になるよう態度で促した。
「もちろん、私を含めクラス全員と担任教師が別人だと強く主張しました。
けれど、他のクラスの人間や教師は違っていた。
間違いなく本人じゃないかと言うんです。
いくら説明しても埒が明かないと判断した私達は彼女の家へ向かい、確認
したんですが……」
「親も自分の娘が入れ替わっていることに気付いていない。
それどころか昔の写真も全て別人に変わっていたってことですね」
「そうだ。鈴原、お前は気付いていたんだったな。結局は勘違いという感じで、うやむ
やのまま終わってしまった。そんなはずがないんだがな」
「その後……、縷々子さんはどうなったんですか?」
縷々子さんが消えた女子生徒に呼び出された後に、2人が別人に入れ替わったとなると、クラス内における彼女の立場が良い訳がない。
この時には彼女は化け物や特異な能力者という扱いを受けていたのかも知れない。
「縷々子さんは死んだ」
「死んだ……、ですか」
「俺も忘れない。12月のことだった。
縷々子さんは死んだ。
担任教師が教室に入るなり突然そう言った。
女子生徒が消えてから1日も登校して来なかった縷々子さんが死んだと。はっきりとな。
驚いたよ。
全員がポカンとした反応だった。誰も何も言わなかった。
悲しむ者もいなければ喜ぼうとする者もいない。だ
が全員が心の中で安堵していただろう。自分は消されなくて良かったと」
「そうだったんですか……」
電気点けますね、と言って三嶋先生が立ち上がると照明のスイッチを入れた。
「今思うとな、手紙を捨てたのは縷々子さんじゃなかったと思うんだ。根拠なんかない
けどな。例え彼女が遺書を隠したとするんだったら、聡明な彼女が自分に不利な物をご
み箱に捨てるなんてことはしないと思うんだ。
それに、彼女が最後まで口を割らなかったのも、誰がそれを捨てたか知っていたから
かも知れない。まあ、今となっては推論に過ぎないがな」
「それが縷々子さんの過去だったんですね」
鈴原が独り言のように呟くと、佐々木は
「話はまだ終わらなかったんだ」
と言った。
「話はまだ終わっていない。高校の卒業式も無事に終わって皆が教室に戻った時、全員
が卒業アルバムを貰った時だった。
卒業前に撮った写真だったから、縷々子さんも当然写っていたんだ。
皆はそれに触れないように卒業の喜びと悲しみを分かち合ったところで、先生が最後
の話を始めた。
話が佳境になった時、昼間の教室内が突然漆黒の闇に包まれたんだ。
電気が消えた訳でもないのに、10センチ先も見えないくらいに真っ暗に。
最初は何が起きたか分からなくてざわついたが、すぐに全員が静かになった。
廊下からパタッ、パタッと足音が聞こえてきた。
何故かは分からない。分からないが、その足音は彼女のものだと直感したんだ。
その音はゆっくりと、そして一歩一歩確実に教室に近づいてきた」
旧校舎を歩く縷々子さんの記憶が鮮明に思い出される。漆黒の長髪を微かに揺らしながらも、ゆっくりと歩く彼女の姿を。
三嶋先生が思わず立ち上がったのを、佐々木が冷静になるよう態度で促した。
「もちろん、私を含めクラス全員と担任教師が別人だと強く主張しました。
けれど、他のクラスの人間や教師は違っていた。
間違いなく本人じゃないかと言うんです。
いくら説明しても埒が明かないと判断した私達は彼女の家へ向かい、確認
したんですが……」
「親も自分の娘が入れ替わっていることに気付いていない。
それどころか昔の写真も全て別人に変わっていたってことですね」
「そうだ。鈴原、お前は気付いていたんだったな。結局は勘違いという感じで、うやむ
やのまま終わってしまった。そんなはずがないんだがな」
「その後……、縷々子さんはどうなったんですか?」
縷々子さんが消えた女子生徒に呼び出された後に、2人が別人に入れ替わったとなると、クラス内における彼女の立場が良い訳がない。
この時には彼女は化け物や特異な能力者という扱いを受けていたのかも知れない。
「縷々子さんは死んだ」
「死んだ……、ですか」
「俺も忘れない。12月のことだった。
縷々子さんは死んだ。
担任教師が教室に入るなり突然そう言った。
女子生徒が消えてから1日も登校して来なかった縷々子さんが死んだと。はっきりとな。
驚いたよ。
全員がポカンとした反応だった。誰も何も言わなかった。
悲しむ者もいなければ喜ぼうとする者もいない。だ
が全員が心の中で安堵していただろう。自分は消されなくて良かったと」
「そうだったんですか……」
電気点けますね、と言って三嶋先生が立ち上がると照明のスイッチを入れた。
「今思うとな、手紙を捨てたのは縷々子さんじゃなかったと思うんだ。根拠なんかない
けどな。例え彼女が遺書を隠したとするんだったら、聡明な彼女が自分に不利な物をご
み箱に捨てるなんてことはしないと思うんだ。
それに、彼女が最後まで口を割らなかったのも、誰がそれを捨てたか知っていたから
かも知れない。まあ、今となっては推論に過ぎないがな」
「それが縷々子さんの過去だったんですね」
鈴原が独り言のように呟くと、佐々木は
「話はまだ終わらなかったんだ」
と言った。
「話はまだ終わっていない。高校の卒業式も無事に終わって皆が教室に戻った時、全員
が卒業アルバムを貰った時だった。
卒業前に撮った写真だったから、縷々子さんも当然写っていたんだ。
皆はそれに触れないように卒業の喜びと悲しみを分かち合ったところで、先生が最後
の話を始めた。
話が佳境になった時、昼間の教室内が突然漆黒の闇に包まれたんだ。
電気が消えた訳でもないのに、10センチ先も見えないくらいに真っ暗に。
最初は何が起きたか分からなくてざわついたが、すぐに全員が静かになった。
廊下からパタッ、パタッと足音が聞こえてきた。
何故かは分からない。分からないが、その足音は彼女のものだと直感したんだ。
その音はゆっくりと、そして一歩一歩確実に教室に近づいてきた」
旧校舎を歩く縷々子さんの記憶が鮮明に思い出される。漆黒の長髪を微かに揺らしながらも、ゆっくりと歩く彼女の姿を。
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