30 / 42
過去 1
しおりを挟む
……キーンコーンカーンコーン
「よっしゃー昼飯購買ダッシュだー。何としてもカレーパンゲットだぜ」
「こらっ、まだ話が」
先生の話を訊き終わる前に、脊髄反射のように男子生徒が教室から飛び出した。それを皆が笑いながら見送っている。
「おいガッツ、早くしねーと売り切れちまうぞ」
男子生徒がちゃかすと、カレーパンの購入に全力を尽くすガッツと呼ばれた生徒が、無言で手を振りながら教室を出て行った。
いつもの光景ながらクスクスと笑うクラスメイトの中に、三嶋絵里がいた。
高校生活も残り2ヶ月足らずだった。
誰もが既に進路が決まった生徒と、これから受験の生徒が入り混じった1つの教室で、三嶋はガッツが出て行ったまま開けっ放しのドアを眺めていた。
高校内でも優秀な成績を収めていた三嶋は、地元の国立大学の教育学部を希望していた。
将来は先生になりたいと思っていたからだ。
彼女は学校が大好きだった。だから風邪を引いて38度5分の熱を出した時も学校へ行こうとして、両親に無理やり止められたこともあった。
「絵里ちゃん、早くご飯食べようよ」
訊き慣れた声に我に返った。
同じクラスの嬢ちゃんという渾名の活発な少女が大きく手を振りながら絵里を呼び、その隣りでヒカリが四つの机を合わせていた。
皺1つない学ランを校則通りに着こなし、髪の毛を真ん中で綺麗に分けた細面の彼は学校で常にトップの成績を収めており、都会の国立大学の法学部を目指していた。
いつもおっとりとしている絵里、活発な嬢ちゃん、大人しくて優しいヒカリ、いつも騒がしいガッツは4人ともタイプは違ったが、不思議とウマが合い、行動を共にすることが多かった。
席に座った絵里が弁当箱を開いていると、息を切らしながらカレーパンを大事に持ったガッツが隣りに座った。
「いやぁ、ギリだったよ。あと1個で売り切れるとこだった」
「最近カレーパンばっかだな。身体に悪いぞ」
満面の笑顔でカレーパンにがっつくガッツを見ながら、ヒカリが微笑んだ。
「はぁっ?じゃあヒカリの弁当くれよ」
「何で僕が。それにガッツも弁当持って来てるでしょ」
「これだけじゃ足んねえから、カレーパン買ってんだよ」
「それだけ食べれば十分でしょ?」
「唐揚げ一個でいいからよ」
「ダーメ、それよりよく噛んで食べなよ」
「お前は親かよ」
そう言いつつも、ガッツは弁当に夢中になっている。
絵里はアンバランスな2人の会話のやり取りが好きだった。
二年の時、文系の国立コースに進んだ4人は同じクラスになった。
一緒に行動するようになったのはいつだったか、絵里にははっきりとした記憶がなかった。
何かきっかけがあって集まるようになった訳ではないのだろう。
ヒカリと嬢ちゃんは付き合うようになり、そしていつの間にか当たり前のように4人でグループをなすようになったのだ。
「よっしゃー昼飯購買ダッシュだー。何としてもカレーパンゲットだぜ」
「こらっ、まだ話が」
先生の話を訊き終わる前に、脊髄反射のように男子生徒が教室から飛び出した。それを皆が笑いながら見送っている。
「おいガッツ、早くしねーと売り切れちまうぞ」
男子生徒がちゃかすと、カレーパンの購入に全力を尽くすガッツと呼ばれた生徒が、無言で手を振りながら教室を出て行った。
いつもの光景ながらクスクスと笑うクラスメイトの中に、三嶋絵里がいた。
高校生活も残り2ヶ月足らずだった。
誰もが既に進路が決まった生徒と、これから受験の生徒が入り混じった1つの教室で、三嶋はガッツが出て行ったまま開けっ放しのドアを眺めていた。
高校内でも優秀な成績を収めていた三嶋は、地元の国立大学の教育学部を希望していた。
将来は先生になりたいと思っていたからだ。
彼女は学校が大好きだった。だから風邪を引いて38度5分の熱を出した時も学校へ行こうとして、両親に無理やり止められたこともあった。
「絵里ちゃん、早くご飯食べようよ」
訊き慣れた声に我に返った。
同じクラスの嬢ちゃんという渾名の活発な少女が大きく手を振りながら絵里を呼び、その隣りでヒカリが四つの机を合わせていた。
皺1つない学ランを校則通りに着こなし、髪の毛を真ん中で綺麗に分けた細面の彼は学校で常にトップの成績を収めており、都会の国立大学の法学部を目指していた。
いつもおっとりとしている絵里、活発な嬢ちゃん、大人しくて優しいヒカリ、いつも騒がしいガッツは4人ともタイプは違ったが、不思議とウマが合い、行動を共にすることが多かった。
席に座った絵里が弁当箱を開いていると、息を切らしながらカレーパンを大事に持ったガッツが隣りに座った。
「いやぁ、ギリだったよ。あと1個で売り切れるとこだった」
「最近カレーパンばっかだな。身体に悪いぞ」
満面の笑顔でカレーパンにがっつくガッツを見ながら、ヒカリが微笑んだ。
「はぁっ?じゃあヒカリの弁当くれよ」
「何で僕が。それにガッツも弁当持って来てるでしょ」
「これだけじゃ足んねえから、カレーパン買ってんだよ」
「それだけ食べれば十分でしょ?」
「唐揚げ一個でいいからよ」
「ダーメ、それよりよく噛んで食べなよ」
「お前は親かよ」
そう言いつつも、ガッツは弁当に夢中になっている。
絵里はアンバランスな2人の会話のやり取りが好きだった。
二年の時、文系の国立コースに進んだ4人は同じクラスになった。
一緒に行動するようになったのはいつだったか、絵里にははっきりとした記憶がなかった。
何かきっかけがあって集まるようになった訳ではないのだろう。
ヒカリと嬢ちゃんは付き合うようになり、そしていつの間にか当たり前のように4人でグループをなすようになったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
【完結】『左遷女官は風花の離宮で自分らしく咲く』 〜田舎育ちのおっとり女官は、氷の貴公子の心を溶かす〜
天音蝶子(あまねちょうこ)
キャラ文芸
宮中の桜が散るころ、梓乃は“帝に媚びた”という濡れ衣を着せられ、都を追われた。
行き先は、誰も訪れぬ〈風花の離宮〉。
けれど梓乃は、静かな時間の中で花を愛で、香を焚き、己の心を見つめなおしていく。
そんなある日、離宮の監察(監視)を命じられた、冷徹な青年・宗雅が現れる。
氷のように無表情な彼に、梓乃はいつも通りの微笑みを向けた。
「茶をお持ちいたしましょう」
それは、春の陽だまりのように柔らかい誘いだった——。
冷たい孤独を抱く男と、誰よりも穏やかに生きる女。
遠ざけられた地で、ふたりの心は少しずつ寄り添いはじめる。
そして、帝をめぐる陰謀の影がふたたび都から伸びてきたとき、
梓乃は自分の選んだ“幸せの形”を見つけることになる——。
香と花が彩る、しっとりとした雅な恋愛譚。
濡れ衣で左遷された女官の、静かで強い再生の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる