旧校舎の少女

チャロコロ

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 ……キーンコーンカーンコーン
 「よっしゃー昼飯購買ダッシュだー。何としてもカレーパンゲットだぜ」
 「こらっ、まだ話が」
 先生の話を訊き終わる前に、脊髄反射のように男子生徒が教室から飛び出した。それを皆が笑いながら見送っている。
 「おいガッツ、早くしねーと売り切れちまうぞ」
 男子生徒がちゃかすと、カレーパンの購入に全力を尽くすガッツと呼ばれた生徒が、無言で手を振りながら教室を出て行った。
 いつもの光景ながらクスクスと笑うクラスメイトの中に、三嶋絵里がいた。
 高校生活も残り2ヶ月足らずだった。
 誰もが既に進路が決まった生徒と、これから受験の生徒が入り混じった1つの教室で、三嶋はガッツが出て行ったまま開けっ放しのドアを眺めていた。
 高校内でも優秀な成績を収めていた三嶋は、地元の国立大学の教育学部を希望していた。
 将来は先生になりたいと思っていたからだ。
 彼女は学校が大好きだった。だから風邪を引いて38度5分の熱を出した時も学校へ行こうとして、両親に無理やり止められたこともあった。
 「絵里ちゃん、早くご飯食べようよ」
 訊き慣れた声に我に返った。
 同じクラスの嬢ちゃんという渾名の活発な少女が大きく手を振りながら絵里を呼び、その隣りでヒカリが四つの机を合わせていた。
 皺1つない学ランを校則通りに着こなし、髪の毛を真ん中で綺麗に分けた細面の彼は学校で常にトップの成績を収めており、都会の国立大学の法学部を目指していた。
 いつもおっとりとしている絵里、活発な嬢ちゃん、大人しくて優しいヒカリ、いつも騒がしいガッツは4人ともタイプは違ったが、不思議とウマが合い、行動を共にすることが多かった。
 席に座った絵里が弁当箱を開いていると、息を切らしながらカレーパンを大事に持ったガッツが隣りに座った。
 「いやぁ、ギリだったよ。あと1個で売り切れるとこだった」
 「最近カレーパンばっかだな。身体に悪いぞ」
 満面の笑顔でカレーパンにがっつくガッツを見ながら、ヒカリが微笑んだ。
 「はぁっ?じゃあヒカリの弁当くれよ」
 「何で僕が。それにガッツも弁当持って来てるでしょ」
 「これだけじゃ足んねえから、カレーパン買ってんだよ」
 「それだけ食べれば十分でしょ?」
 「唐揚げ一個でいいからよ」
 「ダーメ、それよりよく噛んで食べなよ」
 「お前は親かよ」
 そう言いつつも、ガッツは弁当に夢中になっている。
 絵里はアンバランスな2人の会話のやり取りが好きだった。
 二年の時、文系の国立コースに進んだ4人は同じクラスになった。
 一緒に行動するようになったのはいつだったか、絵里にははっきりとした記憶がなかった。
 何かきっかけがあって集まるようになった訳ではないのだろう。
 ヒカリと嬢ちゃんは付き合うようになり、そしていつの間にか当たり前のように4人でグループをなすようになったのだ。
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