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「やっと着いたねぇ。おっ、ガッツもも来てるみたい」
ガッツという名前に過敏に反応した絵里の眠気は一気に吹き飛んだ。
腕時計を見ると、午前8時を過ぎていた。3時間も乗っていたみたいだ。
2人と思い出話に花を咲かせようと思っていた絵里の気持ちは車に乗った途端失せてしまい、酔わないよう眼を瞑っていたいたら、いつの間にか眠ってしまっていたのだ。
口から出たヨダレを袖口で拭きながらあわてて顔を上げる。
前に座っていた二人は絵里のことなど気にする様子もなく外に出た。彼女も手鏡で化粧が落ちていないか確認して髪を整えると、深呼吸して心音を落ち着かせながら外に出た。
「絵里か、懐かしいな。俺のこと覚えてるか?」
長い年月を感じさせないガッツの微笑みは、絵里をときめかせた。
そのときめきに表されているように、彼は全く変わっていなかった。
直毛の黒髪、切れ長の眼に大きな口、話し方まで。
彼は高校時代からタイムスリップしてきたみたいで、時の経過を感じさせなかった。ただ1つ、彼の手を強く握りながら不安そうにこちらを見つめる小さな女の子がいる以外は。
2つにまとめた長い髪に大きな眼に白い肌、ガッツに似ていた。
小さな娘と接する機会のない絵里はとまどいながらも挨拶してみた。女の子は絵里を見るとガッツの後ろに隠れてしまった。
嫌われてしまったかな。
ガッツが言った。
「人見知りしているだけだ。すぐに慣れるよ」
娘に挨拶をするよう促すと、恥ずかしそうに小さな声で応えた。
日中はガッツの車で付近の名所を観光しながら、夕食の焼き肉の買い出しをした。
ガッツの性格は相変わらずだったが、やはり1人で娘を育てているせいか落ち着いた性格になっていた。だが、絵里にとってはそれが余計に魅力を感じた。
ガキ丸出しだった高校時代も良かったが、大人になっていい男になった彼に絵里が心を惹かれないはずはなかった。
夕方になって焼き肉を始める頃にはガッツの子供も慣れてきたのか、大人の群れに積極的に交じるようになっていた。
地元の質の良い肉と酒を飲んだことで、絵里の機嫌は戻っていた。時間が過ぎれば人の容姿が変わるのは当然のことだ。気分の良くなった彼女の心は寛大になっていた。
午後7時を回った頃だった。
「絵里、ガッツと散歩でもしてきたら」
突如嬢ちゃんが囁いてくると、背中を押してきた。
「ええ、いいよ」
普段なら気後れするところだが、酒の力で気が大きくなっていた絵里は、言葉とは裏腹に満更でもなかった。
「子供のことなら心配しないで。少しくらいなら私とヒカリで面倒見るから」
嬢ちゃんは絵里の返答を待たずにガッツの元へ行って何やら話し始めたかと思うと、2人でこちらに戻ってきた。
「久しぶりなんだから、2人で散歩でもしてきなさい」
嬢ちゃんに背中を押され、半ば追い出されるように外に出された。
「変わってないなあ、あいつの強引なところ」
「そうだね」
苦笑いで顔を向けたガッツに、絵里は微笑んだ。
ガッツという名前に過敏に反応した絵里の眠気は一気に吹き飛んだ。
腕時計を見ると、午前8時を過ぎていた。3時間も乗っていたみたいだ。
2人と思い出話に花を咲かせようと思っていた絵里の気持ちは車に乗った途端失せてしまい、酔わないよう眼を瞑っていたいたら、いつの間にか眠ってしまっていたのだ。
口から出たヨダレを袖口で拭きながらあわてて顔を上げる。
前に座っていた二人は絵里のことなど気にする様子もなく外に出た。彼女も手鏡で化粧が落ちていないか確認して髪を整えると、深呼吸して心音を落ち着かせながら外に出た。
「絵里か、懐かしいな。俺のこと覚えてるか?」
長い年月を感じさせないガッツの微笑みは、絵里をときめかせた。
そのときめきに表されているように、彼は全く変わっていなかった。
直毛の黒髪、切れ長の眼に大きな口、話し方まで。
彼は高校時代からタイムスリップしてきたみたいで、時の経過を感じさせなかった。ただ1つ、彼の手を強く握りながら不安そうにこちらを見つめる小さな女の子がいる以外は。
2つにまとめた長い髪に大きな眼に白い肌、ガッツに似ていた。
小さな娘と接する機会のない絵里はとまどいながらも挨拶してみた。女の子は絵里を見るとガッツの後ろに隠れてしまった。
嫌われてしまったかな。
ガッツが言った。
「人見知りしているだけだ。すぐに慣れるよ」
娘に挨拶をするよう促すと、恥ずかしそうに小さな声で応えた。
日中はガッツの車で付近の名所を観光しながら、夕食の焼き肉の買い出しをした。
ガッツの性格は相変わらずだったが、やはり1人で娘を育てているせいか落ち着いた性格になっていた。だが、絵里にとってはそれが余計に魅力を感じた。
ガキ丸出しだった高校時代も良かったが、大人になっていい男になった彼に絵里が心を惹かれないはずはなかった。
夕方になって焼き肉を始める頃にはガッツの子供も慣れてきたのか、大人の群れに積極的に交じるようになっていた。
地元の質の良い肉と酒を飲んだことで、絵里の機嫌は戻っていた。時間が過ぎれば人の容姿が変わるのは当然のことだ。気分の良くなった彼女の心は寛大になっていた。
午後7時を回った頃だった。
「絵里、ガッツと散歩でもしてきたら」
突如嬢ちゃんが囁いてくると、背中を押してきた。
「ええ、いいよ」
普段なら気後れするところだが、酒の力で気が大きくなっていた絵里は、言葉とは裏腹に満更でもなかった。
「子供のことなら心配しないで。少しくらいなら私とヒカリで面倒見るから」
嬢ちゃんは絵里の返答を待たずにガッツの元へ行って何やら話し始めたかと思うと、2人でこちらに戻ってきた。
「久しぶりなんだから、2人で散歩でもしてきなさい」
嬢ちゃんに背中を押され、半ば追い出されるように外に出された。
「変わってないなあ、あいつの強引なところ」
「そうだね」
苦笑いで顔を向けたガッツに、絵里は微笑んだ。
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