旧校舎の少女

チャロコロ

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過去 5

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 春が近づいたとはいえ、夜明け前の3月は身体を震わすほど冷えていた。
 午前5時という早い集合時間にも関わらず、絵里の眠気は完全に吹き飛んでいた。アパートの前で旧友を待つ彼女の心は少女のように弾んでいた。
 ガッツは仕事の都合で直接現地で落ち合うことになっていたので、そこまではヒカリの運転で、彼と嬢ちゃんの3人で向かうことになったのだ。
 約束の時間になると車のライトがこちらに向かってくると、黒色のSUVが絵里の前に止まった。すぐに助手席の窓が開くと
 「おっはよう、うわー懐かしい。絵里、あんた変わってないわね」
と嬢ちゃんが身体を乗り出してきた。電話の時と同じで、彼女の笑顔は昔と変わっていなかった。
 嬢ちゃんに微笑み返すと、彼女の後ろに見えた運転席の男性が見えた。ぽってりと太った男が片手でハンドルを握りながらこちらを見ている。
 誰だろう……。
 絵里は話しながらも、嬢ちゃんの後ろに見え隠れする男の姿が気になった。
 嬢ちゃんは一通り話し終えると、思い出したように振り返って男に声をかけた。
 「ほーら、ヒカリも挨拶しなさいよ。久し振りの再会なんだから」 
 「おはよう、久しぶりだね。元気そうで良かったよ」
 絵里は思わず驚きの声を上げそうになった。あれだけ痩せていたヒカリがかなりの肥満体となっていたのだ。一瞬唖然としたが、すぐに立て直した。
 「わあ、ヒカリ君、懐かしいね」
 それ以上の言葉が浮かんでこなかった。学年一の優等生で女子からも人気のあったヒカリの変わりように、何を話していいか分からなかった。
 絵里が驚いたのは彼の体型だけではなかった。
 顔には伸ばしっ放しの無精髭に1週間は洗ってなさそうなベトベトの髪、年齢より20歳は老けて見えるほどの深い皺と多数の濃いシミ。
 最後に逢ってから10年くらい経過したとはいえ、その間に相当の苦労があったのかと疑わせるものだった。艶のある黒髪を丁寧に整えていた彼の面影はどこにもない。
 車に乗り込むと長期間処理されていない生ごみのようなすえた臭いが漂っており、胃から内容物が逆流しそうな吐き気が絵里を襲った。
 何事もない振りをしながら、さりげなく嬢ちゃんの顔をミラー越しに確認したが、彼女は強烈な悪臭を気にする様子もない。
 絵里は臭いを体内に取り入れないよう、口で呼吸すると早く現地に着くことを祈った。
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