旧校舎の少女

チャロコロ

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結末

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 時空を越えていたのは、自分も同じだった。
 本当は三嶋先生と同じ三一歳のはずだった。
 「ようやく分かった?す・ず・は・ら・ゆ・う・と・君。ずっと好きだったわ」
 三嶋は不敵な笑みを浮かべた。三嶋達に殺されたのは鈴原だった。三嶋は続ける。
 「どうして鈴原君には木島君達が消えた記憶が残っていたんだと思う?あなたも縷々子
 さんに関係しているからよ」
 「そ、そんな……」
 「私なりに縷々子さんについて調べてみたわ。学校の歴史や新聞、過去の生徒から話を
 訊いたこともある。
  そこで共通したのは、縷々子さんの目撃談は全てが旧校舎だけだったってこと。佐々
 木先生が高校生だった時は、旧校舎を本来の校舎として使っていたから、彼女が現れた
 のも旧校舎ということになるしね」
 「でも今回は新校舎に現れた」
 三嶋は頷いた。
 「そう。でも、その理由は最初から分かってたわ」
 「木島達を消すためですよね?」
 「それもあるかも知れない。でも、それだけの理由で新校舎に現れることができるのな
 ら、新校舎ができた23年前から縷々子さんが目撃されててもおかしくないでしょ?
  つまり、縷々子さんは木島君達を消そうにも旧校舎にしか姿を現すことができなかった
 ってことよ。でも今回は新校舎に姿を現すことができた。それが何故かって……」
 三嶋は一呼吸置いて、はっきりと言った。
 「鈴原君と君島さんがいたからよ」
 「違います」
 否定しつつも、鈴原の頭の中は混乱していた。
 「江藤紀子。縷々子さんの子供の名前よ。そしてあなたのお母さんの名前でもある」
 江藤紀子は確かに鈴原の母親の旧姓だ。母親はあまり過去のことについて話すことはなかったが、確かに彼女の両親は母親が小さい頃に他界していた。
 「俺の祖母ちゃんが縷々子さん。はは、まさか、そんな莫迦なことがある訳ないですよ」
 「縷々子さんが過去に消したのは、彼女に危害を加えた人間だけよ。他に消された生徒
 はいない。
  縷々子さんは、殺されそうになった孫とひ孫を守ったのよ」
 「孫とひ孫……」 
 鈴原が同じ言葉を反復した。
 「そう、私が崖から投げ飛ばした娘は君島咲良さん。あなたの娘よ。あの娘も十三年の
 時を経て現代に来たのよ。但し、君島さんの場合は逆で時間を進めて来たんだけどね」
 「どうしてそんなこと分かるんですか?」
 「鈴原君だって気付いていたはずよ。あなたは君島さんに特別な感情を抱いていた。周
 りが冷やかすくらいにね。でもそれは恋愛感情なんかじゃなかった。男女の友情?そん
 なものが存在しないことぐらい知ってるわよね?
  あなた自身心のどこかで分かっていたはずよ。君島さんに対する感情が娘を愛する父
 親の愛情だってことを」
 鈴原には心当たりがあった。君島には言葉では言い表せない感情があったのは確かだ。
 「私がそれに気付いたのは、縷々子さんを見た君島さんが立ちあがった時かな。旧校舎
 を歩く縷々子さんを見て驚いたわ。木島があなたを切り付けた時に後ろに立っていた少
 女と同じ女の子が歩いていて……。
  しかも、その女の子の顔が君島さんとそっくりだったんだから……」
 ペタリ
 三嶋が話し終えた途端、遠くから足音が聞こえた。スリッパで歩く時に出る音。それは小さな音のはずなのに、誰の耳にもはっきりと分かるものだった。この世のものではない、固い決意を感じさせる音。
この一つの音で、誰が来たのかすぐに分かった。 
 ペタッ……ペタ
 遠くにあった足音が今、図書室の前にいる。
 図書室の壁を経た廊下に、それは確かにいた。
 「やっと私にもお迎えが来たみたいね」
 三嶋が横目で出入口を見た。彼女は隣りのイスに座り、足をぶらぶらさせている女の子の頭を優しく撫でた。
 「大人の話は少し退屈だったかな?でも大丈夫よ。あなたが探していたパパは、明日必
 ず見つかるからね……。
  ごめんなさい……。本当にごめんなさいね」
 三嶋は嗚咽を漏らしながら女の子を強く抱きしめた。
 女の子を離した三嶋の顔は、晴れ晴れとしていた。
 鈴原は思う。彼女は縷々子さんが来るのをずっと待っていたのかも知れない。
 「嬉しいわ。私だけ時間が遡らなかったから、許されちゃったかと思ってた。
  ありがとう縷々子さん。私に少しだけ時間をくれて。
  私が忘れてしまった物を、思い出させてくれて。
  好きな人に、もう一度逢わせてくれて」
 三嶋の視線の先には、君島にそっくりな顔をした髪の長い少女が立っていた。 
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