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3章 ラヴィア公国に迫る影
6 鈴木、子作りの許可を貰う!
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教会での儀式から数日。
イザベラとエレイラが朝から帝城へ慌ただしく向かった。
なんでも、城からの使いの話しによると、ラヴィア公国の皇太子が今日の昼過ぎにも到着するという早馬が届いた。という事で、二人は城で歓迎の準備と身支度をしなければならないらしい。
「二人とも大変だなぁ」
俺はメルさんと二人でぼんやりと朝ご飯を食べ、居間でのんびりと寛いでいた。
「まさかエレイラさんが貴族の方だったとは思いませんでしたね」
「ああ。ほんとソレ。俺もすっごく驚いた。今でも嘘やドッキリなんじゃないかと思ってるよ」
メルさんが言った通り、我らが絶壁ツルペタエレイラがまさかの貴族令嬢だった件!
この事件はナーオ教会で誓いの儀式を行った翌日、エレイラが親に紹介したいと言って俺を連れ出したのが発端だ。
俺も35才と中身はいい大人だ。
親御さんに挨拶するのは当たり前だろうと、二つ返事でエレイラについていくこと帝都の巡回馬車に乗って10分。
俺とエレイラは下車して少し歩き、中々大きな屋敷の前で立ち止まった。
「エレイラの親御さんって住み込みで働いてんの?」
「住み込みと言えば住み込みかな」
「ふ~ん」
俺はお茶を濁したような回答をするエレイラに、興味薄げな返事をして屋敷の門を潜る。
立っていた衛兵がビシッ!と敬礼する姿はシャチホコばっていて緊張しているのが窺える。
「あの衛兵さん新人かな?来客に緊張しちゃって面白いね」
「うん?ヤツはかれこれ5年は働いてるぞ?」
「5年働いててアレなの?」
「うん。私がたまに来るとあんな感じだな」
「お前の絶壁に恐怖を感じてるんじゃないのか?ハハハ!」
「う~~ん……」
俺はそう笑いながらエレイラの案内で玄関の扉を開く。
あれ?貴族さんの屋敷ってこんな無防備に入れるもんなの?警備ザルじゃね?と俺は不思議に思って周囲を見渡しながら中に入ると──
「「「「お帰りなさいませ。エレイラお嬢様」」」」
「みんな。ただいま」
その時、冗談でもなんでもなく、俺の時が止まった。エレイラがパン!と俺の目の前で手を叩いたところで俺の時が動き出す。
「エレイラ。まさか君が、ざわーるどの使い手だったとは……」
「何をわけのわからん事を……何にそんなに驚いていたんだ?」
「いやいやいや!全部!この仕掛け全部に驚きを隠せないよ!一体どんなドッキリだよ!この仕掛けにどんだけ金使ったんだよ!」
「いや、仕掛けもなにも……ここは私の親が家主の、言ってしまえば私の実家だ」
「んなッ!お嬢様なの?絶壁でツルペタでお漏らしなのに?!」
「お前……その言葉をパパの前では絶対に言うなよ?一応義理の父親になるんだからな?」
「あ……ああ。それくらいは……な」
「陛下をあれだけ愚弄したヤツの言葉だから信用出来んが……頼んだぞ」
「お……おう」
なんでも、エレイラはエイレイン公爵家の四人姉妹の三女だとか。
いや、名字があったのは微かに覚えてたんだけどさ、まさか貴族だとは思わなかったんだよね。
でも本人曰く「皇女の侍女は毎回侯爵家の人間がやることになっているからな」という事らしい。
だから皇女と気安く喧嘩とかしてたんだな。馬鹿な平民じゃなくて馬鹿な貴族だったか。あれ?更に劣化してないか?
なんて事を話しながら屋敷内を歩いていると、どうやら親御さんの待つ部屋に到着したらしい。
エレイラが扉をノックすると、中から返事が聞こえた。
「ただいま戻りました」
「お帰り。エレイラ」
「お帰りなさい。エッちゃん」
応接室風の部屋に入ると、中にはエレイラの親夫婦と思われる30代後半のダンディなおじ様と、ストーン!と平に均した洗濯板風の美女がソファーに座っていた。
なるほど、この女性だけ見れば確かに親子で間違いはなさそうだ。
「そちらの美男子がエレイラを貰ってくれる男の子かしら?」
「私の名は鈴木幸太といいます。今回は娘さんとの婚約と、娘さんを嫁に頂きたい。というお願いに参上させていただきました」
俺はそう言って優雅に一礼をする。
「ほう……」
「まぁ。わたしは構わないわよ?むしろスズキくんは、そんな女の子っぽくない娘でもいいの?」
「ママ?!」
「いいもなにも、彼女がいいんです。彼女とこれからの生涯を共にしたい。そう思ってプロポーズさせていただきました」
「まぁまぁまぁ!アナタ以外にも物好きな男の子が居るなんて!わたしはとっても嬉しいわ!」
流石はエレイラのママさんだ。自分の属性はレアで、それでもいい!と思う男性が少ない事を悟っている。
しかし、そうか。エレイラのパパさんはツルペタ愛好家だったのか。
「んん!それで、スズキくん。君は他の女性とも婚約しているそうだが?」
咳払いをして、弛緩した空気を引き締めるように、パパさんは俺に鋭い視線を向け、そう切り出した。
「はい。イザベラ皇女殿下とメルという辺境の村出身の娘です」
俺が胸を張り、誤魔化さずにハキハキと言った事が好印象を与えたのか、パパさんは口角を少しだけ上げた。
「素直だな。その二人とエレイラを同時に幸せにする事が君には可能なのか?」
「もちろん可能です。現在は元宰相の家を買い取り、そこに三人とメイドや執事を雇って一緒に住んでいます。この点から衣食住の全ての心配は無用になります。そして、一番心配されていると思う私の気持ちですが、私は持てる全てと、生涯をかけて彼女達を幸せにしたいと思っております」
俺はそう堂々と言ってのける。
言ってる事はカッコイイが、中身はただの三叉宣言でしかない。我ながら上手く言ったものだと関心する。
「スズキ……」
「やだエッちゃんの彼カッコイイ……私もそんな言葉を言って貰いたいなぁ……チラッ」
どうやら二人の女性陣からは好印象を得られたようだ。これが現代日本なら腹でも刺されて生首をボートで出荷間違いなしであろう。ビバ!異世界!
「何がチラッだ。そこまで言うのであれば此方も何も言うことはない。その代わり、一つ手合わせしてもらおう」
お茶を一口飲み、口内を潤したパパさんは、先程の鋭い視線をより強め、今ではギラギラと輝いている。
「パパ?!」
「なに、彼はかなりの腕と見た。軍務を預かる身となってからは身体が疼くようなヤツを見なくてな。最近の若者にガッカリしていたところだ」
驚くエレイラだが、パパさんは意に解せず、ギラついた瞳に獰猛な笑みを顔に貼り付けている。
しかし軍務って……ガリナとの戦争の発端を切り開いた張本人の一人じゃね?そりゃ血の気も多いわけだよ。流石はエレイラのパパさんだ。
「なるほど。わかりました。一つ、お手合わせ願います」
俺は二つ返事で返すとパパさんに連れられて稽古場に連れて行かれた。
「武器は剣でも槍でも好きなのを選ぶといい。そこにある物は全て刃を潰した只の鉄だからな。骨折くらいはあるかもしれないが、力量次第になるが死ぬという事はないだろう?」
「了解しました。私はこちらの片手剣を」
「ならば私も片手剣でお相手しよう」
お互いが武器を手に取り、稽古場の中央にある二本の線の上に立つ。
ママさんの「はじめー!」の合図にパパさんが一足飛びに距離を詰める!
速い踏み込みから、斜めに鋭い斬り下ろしが放たれるのを俺は身体を横に回転させ、目の前で振り下ろされる剣の腹を自分の握った剣で叩く!
ガツン!と鈍い音を立て、親父さんの握る剣は半分に折れた。
「おお。武器破壊か!スズキくん。今のは狙ってやったな?」
「私の実力を知って頂くにはこれが一番いい方法かと思いました」
「なるほど。段違いの腕前だ。ぜひ君の本気を見たいな」
「でしたら……建物内では危ないので、外でよろしいですか?」
「ふむ……では庭に行こう。木人が置いてある」
俺達は再び場所を移動して、広い庭に出る。
「では……おおお!ブレードナイトメア!」
訓練用の剣から放たれた黒い波動は、木人を粉々に切り刻みながら、大きく後方に吹き飛ばした。
「おお!振り下ろしから放った剣気でここまでの威力を出せるのか!」
「剣気?……まぁ、威力だけならもっと上のもあるのですが、この技が一番使い勝手が良くて気に入ってます」
「素晴らしい!早くエレイラと結婚して子供をじゃんじゃん作って欲しい!君のような才能を持った若者はどんどん後世に血を残すべきだからな!」
「ちょッ!パパ?!」
「エレイラもバンバンやるといい!なんなら婚前でも構わん!」
「おお……」
「おお……じゃない!パパ落ち着いて!」
そうやって目茶目茶上機嫌になったパパさんな背中をバシバシと叩かれているが、子作りの許可までいただけた。
ママさんはコロコロと手を口に添えて楽しそうに笑っている。
「あらあら。こんなに嬉しそうな顔は初めて見たわ。余程スズキさんが気に入ったのね」
「素直に嬉しいですね。残念ながら陛下には嫌われてしまってますから。正直、エレイラの義父さんにも嫌われてしまうのでは?と心配してました」
「いやいや!スズキくんは素晴らしい!どうだね?アレの妹も一緒に嫁にしてみないか?」
「おお……」
「おお……じゃない!パパ!これ以上スズキに嫁は要らないの!」
素晴らしい提案を受け、感動に震えている俺を一睨みして、エレイラがパパさんを激しく叱責している。
「なぜだ!このような才能溢れる男には嫁が10人……いや、20人居ても足らんぞ!」
「おお……」
「スズキはしつこい!毎回感動してないでパパをなんとか言いくるめろよ!」
「えぇ……」
「なに嫌そうな顔してんだよ!そんなにハーレムが欲しいのか?!」
「うん」
「即答すんな!そんなに沢山居たら私がお前とイチャイチャする時間が減るだろ!」
ハー!ハー!と荒い息を吐くとエレイラは顔を真っ赤に染めて、普段なら絶対似言わないであろう言葉を口にした。彼女の本音はあまりにも一途で可愛かった。
「それもそうか」
「ッ──わわわ、わかれびゃいいんにゃよ!」
「うん。それじゃ、帰ったら子作りしような?」
「しにゃい!」
その日は結局はしゃいだパパさんとママさんに足止めされて、飲めや騒げやの宴をして、エレイン邸に泊まって帰ったんだったな。
イザベラとエレイラが朝から帝城へ慌ただしく向かった。
なんでも、城からの使いの話しによると、ラヴィア公国の皇太子が今日の昼過ぎにも到着するという早馬が届いた。という事で、二人は城で歓迎の準備と身支度をしなければならないらしい。
「二人とも大変だなぁ」
俺はメルさんと二人でぼんやりと朝ご飯を食べ、居間でのんびりと寛いでいた。
「まさかエレイラさんが貴族の方だったとは思いませんでしたね」
「ああ。ほんとソレ。俺もすっごく驚いた。今でも嘘やドッキリなんじゃないかと思ってるよ」
メルさんが言った通り、我らが絶壁ツルペタエレイラがまさかの貴族令嬢だった件!
この事件はナーオ教会で誓いの儀式を行った翌日、エレイラが親に紹介したいと言って俺を連れ出したのが発端だ。
俺も35才と中身はいい大人だ。
親御さんに挨拶するのは当たり前だろうと、二つ返事でエレイラについていくこと帝都の巡回馬車に乗って10分。
俺とエレイラは下車して少し歩き、中々大きな屋敷の前で立ち止まった。
「エレイラの親御さんって住み込みで働いてんの?」
「住み込みと言えば住み込みかな」
「ふ~ん」
俺はお茶を濁したような回答をするエレイラに、興味薄げな返事をして屋敷の門を潜る。
立っていた衛兵がビシッ!と敬礼する姿はシャチホコばっていて緊張しているのが窺える。
「あの衛兵さん新人かな?来客に緊張しちゃって面白いね」
「うん?ヤツはかれこれ5年は働いてるぞ?」
「5年働いててアレなの?」
「うん。私がたまに来るとあんな感じだな」
「お前の絶壁に恐怖を感じてるんじゃないのか?ハハハ!」
「う~~ん……」
俺はそう笑いながらエレイラの案内で玄関の扉を開く。
あれ?貴族さんの屋敷ってこんな無防備に入れるもんなの?警備ザルじゃね?と俺は不思議に思って周囲を見渡しながら中に入ると──
「「「「お帰りなさいませ。エレイラお嬢様」」」」
「みんな。ただいま」
その時、冗談でもなんでもなく、俺の時が止まった。エレイラがパン!と俺の目の前で手を叩いたところで俺の時が動き出す。
「エレイラ。まさか君が、ざわーるどの使い手だったとは……」
「何をわけのわからん事を……何にそんなに驚いていたんだ?」
「いやいやいや!全部!この仕掛け全部に驚きを隠せないよ!一体どんなドッキリだよ!この仕掛けにどんだけ金使ったんだよ!」
「いや、仕掛けもなにも……ここは私の親が家主の、言ってしまえば私の実家だ」
「んなッ!お嬢様なの?絶壁でツルペタでお漏らしなのに?!」
「お前……その言葉をパパの前では絶対に言うなよ?一応義理の父親になるんだからな?」
「あ……ああ。それくらいは……な」
「陛下をあれだけ愚弄したヤツの言葉だから信用出来んが……頼んだぞ」
「お……おう」
なんでも、エレイラはエイレイン公爵家の四人姉妹の三女だとか。
いや、名字があったのは微かに覚えてたんだけどさ、まさか貴族だとは思わなかったんだよね。
でも本人曰く「皇女の侍女は毎回侯爵家の人間がやることになっているからな」という事らしい。
だから皇女と気安く喧嘩とかしてたんだな。馬鹿な平民じゃなくて馬鹿な貴族だったか。あれ?更に劣化してないか?
なんて事を話しながら屋敷内を歩いていると、どうやら親御さんの待つ部屋に到着したらしい。
エレイラが扉をノックすると、中から返事が聞こえた。
「ただいま戻りました」
「お帰り。エレイラ」
「お帰りなさい。エッちゃん」
応接室風の部屋に入ると、中にはエレイラの親夫婦と思われる30代後半のダンディなおじ様と、ストーン!と平に均した洗濯板風の美女がソファーに座っていた。
なるほど、この女性だけ見れば確かに親子で間違いはなさそうだ。
「そちらの美男子がエレイラを貰ってくれる男の子かしら?」
「私の名は鈴木幸太といいます。今回は娘さんとの婚約と、娘さんを嫁に頂きたい。というお願いに参上させていただきました」
俺はそう言って優雅に一礼をする。
「ほう……」
「まぁ。わたしは構わないわよ?むしろスズキくんは、そんな女の子っぽくない娘でもいいの?」
「ママ?!」
「いいもなにも、彼女がいいんです。彼女とこれからの生涯を共にしたい。そう思ってプロポーズさせていただきました」
「まぁまぁまぁ!アナタ以外にも物好きな男の子が居るなんて!わたしはとっても嬉しいわ!」
流石はエレイラのママさんだ。自分の属性はレアで、それでもいい!と思う男性が少ない事を悟っている。
しかし、そうか。エレイラのパパさんはツルペタ愛好家だったのか。
「んん!それで、スズキくん。君は他の女性とも婚約しているそうだが?」
咳払いをして、弛緩した空気を引き締めるように、パパさんは俺に鋭い視線を向け、そう切り出した。
「はい。イザベラ皇女殿下とメルという辺境の村出身の娘です」
俺が胸を張り、誤魔化さずにハキハキと言った事が好印象を与えたのか、パパさんは口角を少しだけ上げた。
「素直だな。その二人とエレイラを同時に幸せにする事が君には可能なのか?」
「もちろん可能です。現在は元宰相の家を買い取り、そこに三人とメイドや執事を雇って一緒に住んでいます。この点から衣食住の全ての心配は無用になります。そして、一番心配されていると思う私の気持ちですが、私は持てる全てと、生涯をかけて彼女達を幸せにしたいと思っております」
俺はそう堂々と言ってのける。
言ってる事はカッコイイが、中身はただの三叉宣言でしかない。我ながら上手く言ったものだと関心する。
「スズキ……」
「やだエッちゃんの彼カッコイイ……私もそんな言葉を言って貰いたいなぁ……チラッ」
どうやら二人の女性陣からは好印象を得られたようだ。これが現代日本なら腹でも刺されて生首をボートで出荷間違いなしであろう。ビバ!異世界!
「何がチラッだ。そこまで言うのであれば此方も何も言うことはない。その代わり、一つ手合わせしてもらおう」
お茶を一口飲み、口内を潤したパパさんは、先程の鋭い視線をより強め、今ではギラギラと輝いている。
「パパ?!」
「なに、彼はかなりの腕と見た。軍務を預かる身となってからは身体が疼くようなヤツを見なくてな。最近の若者にガッカリしていたところだ」
驚くエレイラだが、パパさんは意に解せず、ギラついた瞳に獰猛な笑みを顔に貼り付けている。
しかし軍務って……ガリナとの戦争の発端を切り開いた張本人の一人じゃね?そりゃ血の気も多いわけだよ。流石はエレイラのパパさんだ。
「なるほど。わかりました。一つ、お手合わせ願います」
俺は二つ返事で返すとパパさんに連れられて稽古場に連れて行かれた。
「武器は剣でも槍でも好きなのを選ぶといい。そこにある物は全て刃を潰した只の鉄だからな。骨折くらいはあるかもしれないが、力量次第になるが死ぬという事はないだろう?」
「了解しました。私はこちらの片手剣を」
「ならば私も片手剣でお相手しよう」
お互いが武器を手に取り、稽古場の中央にある二本の線の上に立つ。
ママさんの「はじめー!」の合図にパパさんが一足飛びに距離を詰める!
速い踏み込みから、斜めに鋭い斬り下ろしが放たれるのを俺は身体を横に回転させ、目の前で振り下ろされる剣の腹を自分の握った剣で叩く!
ガツン!と鈍い音を立て、親父さんの握る剣は半分に折れた。
「おお。武器破壊か!スズキくん。今のは狙ってやったな?」
「私の実力を知って頂くにはこれが一番いい方法かと思いました」
「なるほど。段違いの腕前だ。ぜひ君の本気を見たいな」
「でしたら……建物内では危ないので、外でよろしいですか?」
「ふむ……では庭に行こう。木人が置いてある」
俺達は再び場所を移動して、広い庭に出る。
「では……おおお!ブレードナイトメア!」
訓練用の剣から放たれた黒い波動は、木人を粉々に切り刻みながら、大きく後方に吹き飛ばした。
「おお!振り下ろしから放った剣気でここまでの威力を出せるのか!」
「剣気?……まぁ、威力だけならもっと上のもあるのですが、この技が一番使い勝手が良くて気に入ってます」
「素晴らしい!早くエレイラと結婚して子供をじゃんじゃん作って欲しい!君のような才能を持った若者はどんどん後世に血を残すべきだからな!」
「ちょッ!パパ?!」
「エレイラもバンバンやるといい!なんなら婚前でも構わん!」
「おお……」
「おお……じゃない!パパ落ち着いて!」
そうやって目茶目茶上機嫌になったパパさんな背中をバシバシと叩かれているが、子作りの許可までいただけた。
ママさんはコロコロと手を口に添えて楽しそうに笑っている。
「あらあら。こんなに嬉しそうな顔は初めて見たわ。余程スズキさんが気に入ったのね」
「素直に嬉しいですね。残念ながら陛下には嫌われてしまってますから。正直、エレイラの義父さんにも嫌われてしまうのでは?と心配してました」
「いやいや!スズキくんは素晴らしい!どうだね?アレの妹も一緒に嫁にしてみないか?」
「おお……」
「おお……じゃない!パパ!これ以上スズキに嫁は要らないの!」
素晴らしい提案を受け、感動に震えている俺を一睨みして、エレイラがパパさんを激しく叱責している。
「なぜだ!このような才能溢れる男には嫁が10人……いや、20人居ても足らんぞ!」
「おお……」
「スズキはしつこい!毎回感動してないでパパをなんとか言いくるめろよ!」
「えぇ……」
「なに嫌そうな顔してんだよ!そんなにハーレムが欲しいのか?!」
「うん」
「即答すんな!そんなに沢山居たら私がお前とイチャイチャする時間が減るだろ!」
ハー!ハー!と荒い息を吐くとエレイラは顔を真っ赤に染めて、普段なら絶対似言わないであろう言葉を口にした。彼女の本音はあまりにも一途で可愛かった。
「それもそうか」
「ッ──わわわ、わかれびゃいいんにゃよ!」
「うん。それじゃ、帰ったら子作りしような?」
「しにゃい!」
その日は結局はしゃいだパパさんとママさんに足止めされて、飲めや騒げやの宴をして、エレイン邸に泊まって帰ったんだったな。
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