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ロコノミシリノ①
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『ガチャ』
「いってきまーす」
颯爽と玄関から足を踏み出し、朗らかな陽気の外へと足を踏み出す。
今日も爽やかな朝だ。
日差しがまぶし……――
「くわないな~」
玄関前には大きな影が差している。
見上げると、見下すように直立する高層ビルが今日も日差しを遮っていた。
「もう、ホント、朝が台無しだよ……」
足元の影にため息を吐き捨てて歩き出す。
最近駅前ずっと工事してるなーって思ってたら、これですからね。
いくつかマンションやオフィスビルは建ったけど、さらにドーンとドデカイのきたからね。
ノアールノイッシュヒルズ、通称ノノヒル。
ノノヒルは1階から5階は商業施設、上の階は、40階くらいあるのかな、詳しくは忘れちゃったけど、住居になっている。
どんなセレブーさんが住んでるのやら、私とはきっと住む世界が違うんでしょう。
地元的にはこんな田舎にもなんかもの珍しいものが建つのかーって、盛り上がったけど、いざ建ってみたら、ねぇ。
「まぁ、買い物には困らないけど、っね、っと」
意味もなく横断歩道の白線の上だけを渡ってみる。
ただ、横を見ると、寂しそうなシャッター街が見えるのは心苦しくはある。
ノノヒルの商業施設には大型スーパーも入ってるからこの辺の地域の人はほとんどそっちに流れてしまっていた。
もちろん私のような学生は特に商業施設に目の色変えて浮足立ったさ。
「ふむぅ、ゲーセンには行ってるからそれで許してほしい」
誰になく許しを請うけど、歩みは止めない。
それくらいの気持ち。
それっぽっちの罪悪感。
だから、誰も何も言わない。
この変化を戸惑いはするけど、受け入れてる。
「おはよー、どこいくのー?」
「おっとっと、考え事してたら行き過ぎた!おはよ」
あっはっはっは、とクラスメイトと笑い合う。
回れ右して校門に向かった。
行きたくないとかそんなことないよ、本当だよ。
『キーンコーンカーンコーン』
「終わったー……」
伸びをして机に突っ伏す。
いやー、あっという間だった。
記憶がないくらい。
「寝過ぎだっ」
「あいたっ!」
「職員室来いよー」
担任に叩かれた頭を擦りながらため息を吐きながら席を立つ。
そして座る。
「いや、行きなよ」
「だよね~」
後ろの席からの的確なツッコミにしぶしぶ立ち上がって職員室に向かうことにした。
そしてまた「お前も高2なんだから~、将来を~」とかの話を右から左に流していく。
耳にタコできとりますから。
いや~、スマホで小説見てたらいつも寝るのが遅くなっちゃうんだよね~。
周りの空気が変わり始めてるのは感じてる。
将来への自分へ向けての道を進み先を見つけた人がたくさんいる。
目の輝きが違う、放つ空気が違う、姿勢が違う。
何もかもが私とは違う。
皆は駅前のビル。
私は商店街。
「ふむぅ、どうしたものですかね~」
飛び去っていく鳥に問いかけてみてももちろん返事は返ってこない。
帰り道はいつもどおり1人。
たまに誰かに誘われた時は一応ついてってみる。
まぁ、だいたい人数合わせ。
浅く、狭く、薄く、脆く、儚く。
嫌われても無ければ好かれてもいない。
無害、無価値、無味無臭?
「クンクン」
あ、やっぱり無臭ではないかな。臭いって意味ではないよ、もちろん!
フルーティな香りだぜぃ!
そして、夕暮れが近づきさらに薄暗くなった商店街をいつもの場所に向かって歩く。
「はぁ……つまんない」
「あのさ、人の前でそんな景気の悪そうなため息つかないでくれます?」
「あ、いたんだ」
「いたさ……!ゴホッ、ケホッ」
ゲームセンターの店員のマスク男の……。
「えっと、名前なんだっけ?」
「不躾になんですかね。名札に書いてあるでしょ、ほら、藍澤って」
「あ、藍澤さん!お久しぶりです!」
「うん、昨日も会ってますね。自己紹介も月イチ位でしてるね、ゴホッ」
「ノリ悪いなー、藍澤さん」
「いや、だいぶ付き合ってあげてる方だと思いますけど」
店員用のカウンターテーブルに肘ついた手に顎を乗せて店内に視線を戻す。
私はその横の壁に寄りかかって同じように店内を眺めている。
「また、先生に怒られたんですか?」
「ノーコメントで」
「つまり、イエスと」
「NOコメントで」
「ちょっと発音良くしても意味ないですよ」
「面白いことないかな~」
「僕の友人がこんなこと言ってましたよ。面白いことは探すものじゃなく、見つけるものだって」
「何が違うの?」
「さぁてね、僕には理解できませんでした」
何じゃそりゃ、探すと見つけるって同じことだと思うんだけど。
探す……見つける……search……find……?
う~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん…………。
「私にも分かんない」
「ですよねぇ」
二人してなんとなく天井を見つめた。
「ねぇ、ちょっと店員さん」
「あ、はい、何でしょうか」
眼の前で声がして、視線を戻すと
「わ、美人……!」
「ん?うん、知ってる。それより店員さん。あのUFOキャッチャー取れないんだけど」
こちらに一瞥だけして、藍澤さんの方にまたすぐ向き直る。
うーん、クール。
「え、あ、あぁ、はいはい。どちらでしょうか」
藍澤さんが付いていくあとを更に付いていくド〇クエ歩きをする。
じっとしてても暇だからね。
「これ」
見た目は今どきのJKだけど、どこか品のある美人の彼女が、指差すUFOキャッチャーには、とあるアニメのマスコット的キャラのクッションが2本のバーの上に乗っていた。
「これは……すみません、これで一番取れやすくなってるんですよ」
そう!しかも店としても出したいから、だいぶゆるくなってるやつ。
「うそよ!もう5千円やってるのに落ちないのよ」
「それただの下手なんじゃ――」
「っ!」
思いっきり睨まれた。
あぁ、でも美少女は睨んでもキレイだなー、ドキドキしちゃう、というかしてる。
「う~ん、どうしたものですかね……」
そうだ、良いこと思いついたっ。
「ふんふんふーん」
鼻歌をわざとらしく歌いながらお金を投入する。
「あ、ちょっと!」
女の子が止めようとしたけど、軽快な音楽が鳴り始める。
「んまっ、見ててよ」
バチコーン、と負けじと今どきのJKっぽくウインクをかましてみる。
「ふん、どうせ取れるわけがないわ」
髪を掻き上げてそっぽを向かれてしまう。
ふむぅ、振られちった。
「んじゃ、よろしくおねがいしますね」
「あいよー」
私の返事に藍澤さんは片手を上げて、その場をあとにする。
「あ、ちょ、ちょっと!」
美少女は藍澤さんの背中に声を投げかけるが、ひらひらとひょろい手を振り返されるだけだった。
「まぁ、これで元気だしなよ」
ポフっと今しがた取れたのをプレゼントする。
「え?」
「ふふーん」
「え?……えっ?」
「ぶいっ」
「…………あ、ありがと」
消え入りそうな声だからちょっと意地悪してみる。
「ん~?なぁに?」
耳を近づける。
あ、良い匂い。さすが美少女。
「ありがたく受け取っておくわ。それじゃ」
「あっ――……」
クッションをギュッと抱きしめて去っていってしまった。
「ふむぅ、友達になりたかったのに」
あの制服、電車で数駅隣のお嬢様学校のだったような。私には入れそうもない。
ま、しょうがないっか。私もかーえろっと。
「あ、そだ」
藍澤さんのもとへ戻る。
「ねぇねぇ、あの子よく来る?」
「う~ん…………」
藍澤さんは視線を上の方に向けてマスクを軽く引っ張って離す。
これは考えたりする時の藍澤さんの癖。
「……いや、今日初めて見ましたね」
「そっか!ありがと。じゃね~」
「はい、お気をつけて。ゴホッ」
ゲームセンターを出ると、世界はオレンジと黒に分けられていた。
そんな中に彼女は夕陽に目を細めてシャッター街となっている商店街を見つめている。
「う~ん、絵になりますな~」
タイトル、夕焼けと美少女……いや、荒廃した世界に咲いた花、これ優勝じゃない?
良いアングルを探して、スマホを翳しながらそっと近づいてみる。
傍から見れば怪しい人、というか実際そっと避けられてるのは気にしないでおく。
「なにか用?」
「ぎくっ」
視線はこちらに向けずに話しかけられた。
「いや~、美少女見かけたらほっとけないというか」
「はぁ……どこのおじさんよ」
「げへへ、おじょうちゃん、おじちゃんとイイコトしようか」
「ねぇ」
私のボケを一掃するように肩にかかっていた髪を払ってこちらを向く。
ん~どこのシャンプーかな……。
雰囲気ガン無視で思考は加速する。
「あなた、面白いわね」
「ん?ありがとう……?」
そんなにおじさんギャグ良かったのかな。
「あなたはあなた自身に嘘ついてて、面白い」
「…………?」
何を言ってるんだろう。
「ふ~~ん、無自覚……ねっ。ありがとう、面白い話が浮かびそう」
フフ、と笑って私に背を向けて去ろうとする。
「あ、ちょ、ちょっと」
「何?」
「わ、私と付き合ってください……!」
呼び止めようと必死過ぎて訳わからないこと言って頭を下げている。
いや、何やってるんだ自分……!?
「…………は?」
顔が上げられないけど、ドン引きしてる顔が目に浮かぶ……!
私だったら逃げてる。間違いなく、今のうちにって。
「何?1人では買いにくいものでもあるの?」
お、そっちに解釈してくれるミラクル……!
「友達いなそうだもんね」
「友達くらいいるもんっ」
だが、続く言葉に突っ込むために顔を上げる。
「上っ面だけのね」
「んぐっ」
私の心にクリティカルヒット。私は撃沈した。
だけど、そんな綺麗な笑顔を浮かべて言われるのもたまらない……!
「別に良いわよ」
「えっ?」
「その代わり」
「その代わり……?」
もしかして身売りしろとか、金とか要求されたり……!
「あなたのこと観察させて」
「観察?」
「そう」
なに、視姦プレイ?そういう趣味の方なの?
「それじゃ、楽しみにしてるから――って、あなたの連絡先、というか名前すら知らない」
「まぁ、そうだねー」
まさかの超展開だから。
「私は美野こころ」
「私、神林璃乃。りのっちって呼んでね。こころん」
「私のことはせめてこころって呼びなさい、神林」
「えー…………」
先制パンチにカウンターで返されてしまった。
しかもジョルトカウンター。
ジョルトってなんだっけ?
なんか漫画で読んだような……まぁ、いいや。
そして、連絡先とチャットアプリのIDを交換してその日は別れた。
「ふ~んふふ、ふ~ん♪」
お風呂を済ませてベッドに潜り込む。
今日は素敵な出会いもあったし、良い夢見れそう。
だけど、その前に。
「今日は更新されてるかな~」
お気に入りのWeb小説作家さんのロコノミ氏のページを見る。
「お、あったあった」
新着作品があったことによって今日はさらに良い1日になった。
「ん?アイコンが変わってる」
ロコノミ氏のアイコンがなんか見たことあるような気がするのに変わっていた。
どこで見たんだっけ?
「ふむぅ……むむむ」
ま、いっか!
「読もう読もう」
布団に背中を預けて読み耽ることにした。
「いってきまーす」
颯爽と玄関から足を踏み出し、朗らかな陽気の外へと足を踏み出す。
今日も爽やかな朝だ。
日差しがまぶし……――
「くわないな~」
玄関前には大きな影が差している。
見上げると、見下すように直立する高層ビルが今日も日差しを遮っていた。
「もう、ホント、朝が台無しだよ……」
足元の影にため息を吐き捨てて歩き出す。
最近駅前ずっと工事してるなーって思ってたら、これですからね。
いくつかマンションやオフィスビルは建ったけど、さらにドーンとドデカイのきたからね。
ノアールノイッシュヒルズ、通称ノノヒル。
ノノヒルは1階から5階は商業施設、上の階は、40階くらいあるのかな、詳しくは忘れちゃったけど、住居になっている。
どんなセレブーさんが住んでるのやら、私とはきっと住む世界が違うんでしょう。
地元的にはこんな田舎にもなんかもの珍しいものが建つのかーって、盛り上がったけど、いざ建ってみたら、ねぇ。
「まぁ、買い物には困らないけど、っね、っと」
意味もなく横断歩道の白線の上だけを渡ってみる。
ただ、横を見ると、寂しそうなシャッター街が見えるのは心苦しくはある。
ノノヒルの商業施設には大型スーパーも入ってるからこの辺の地域の人はほとんどそっちに流れてしまっていた。
もちろん私のような学生は特に商業施設に目の色変えて浮足立ったさ。
「ふむぅ、ゲーセンには行ってるからそれで許してほしい」
誰になく許しを請うけど、歩みは止めない。
それくらいの気持ち。
それっぽっちの罪悪感。
だから、誰も何も言わない。
この変化を戸惑いはするけど、受け入れてる。
「おはよー、どこいくのー?」
「おっとっと、考え事してたら行き過ぎた!おはよ」
あっはっはっは、とクラスメイトと笑い合う。
回れ右して校門に向かった。
行きたくないとかそんなことないよ、本当だよ。
『キーンコーンカーンコーン』
「終わったー……」
伸びをして机に突っ伏す。
いやー、あっという間だった。
記憶がないくらい。
「寝過ぎだっ」
「あいたっ!」
「職員室来いよー」
担任に叩かれた頭を擦りながらため息を吐きながら席を立つ。
そして座る。
「いや、行きなよ」
「だよね~」
後ろの席からの的確なツッコミにしぶしぶ立ち上がって職員室に向かうことにした。
そしてまた「お前も高2なんだから~、将来を~」とかの話を右から左に流していく。
耳にタコできとりますから。
いや~、スマホで小説見てたらいつも寝るのが遅くなっちゃうんだよね~。
周りの空気が変わり始めてるのは感じてる。
将来への自分へ向けての道を進み先を見つけた人がたくさんいる。
目の輝きが違う、放つ空気が違う、姿勢が違う。
何もかもが私とは違う。
皆は駅前のビル。
私は商店街。
「ふむぅ、どうしたものですかね~」
飛び去っていく鳥に問いかけてみてももちろん返事は返ってこない。
帰り道はいつもどおり1人。
たまに誰かに誘われた時は一応ついてってみる。
まぁ、だいたい人数合わせ。
浅く、狭く、薄く、脆く、儚く。
嫌われても無ければ好かれてもいない。
無害、無価値、無味無臭?
「クンクン」
あ、やっぱり無臭ではないかな。臭いって意味ではないよ、もちろん!
フルーティな香りだぜぃ!
そして、夕暮れが近づきさらに薄暗くなった商店街をいつもの場所に向かって歩く。
「はぁ……つまんない」
「あのさ、人の前でそんな景気の悪そうなため息つかないでくれます?」
「あ、いたんだ」
「いたさ……!ゴホッ、ケホッ」
ゲームセンターの店員のマスク男の……。
「えっと、名前なんだっけ?」
「不躾になんですかね。名札に書いてあるでしょ、ほら、藍澤って」
「あ、藍澤さん!お久しぶりです!」
「うん、昨日も会ってますね。自己紹介も月イチ位でしてるね、ゴホッ」
「ノリ悪いなー、藍澤さん」
「いや、だいぶ付き合ってあげてる方だと思いますけど」
店員用のカウンターテーブルに肘ついた手に顎を乗せて店内に視線を戻す。
私はその横の壁に寄りかかって同じように店内を眺めている。
「また、先生に怒られたんですか?」
「ノーコメントで」
「つまり、イエスと」
「NOコメントで」
「ちょっと発音良くしても意味ないですよ」
「面白いことないかな~」
「僕の友人がこんなこと言ってましたよ。面白いことは探すものじゃなく、見つけるものだって」
「何が違うの?」
「さぁてね、僕には理解できませんでした」
何じゃそりゃ、探すと見つけるって同じことだと思うんだけど。
探す……見つける……search……find……?
う~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん…………。
「私にも分かんない」
「ですよねぇ」
二人してなんとなく天井を見つめた。
「ねぇ、ちょっと店員さん」
「あ、はい、何でしょうか」
眼の前で声がして、視線を戻すと
「わ、美人……!」
「ん?うん、知ってる。それより店員さん。あのUFOキャッチャー取れないんだけど」
こちらに一瞥だけして、藍澤さんの方にまたすぐ向き直る。
うーん、クール。
「え、あ、あぁ、はいはい。どちらでしょうか」
藍澤さんが付いていくあとを更に付いていくド〇クエ歩きをする。
じっとしてても暇だからね。
「これ」
見た目は今どきのJKだけど、どこか品のある美人の彼女が、指差すUFOキャッチャーには、とあるアニメのマスコット的キャラのクッションが2本のバーの上に乗っていた。
「これは……すみません、これで一番取れやすくなってるんですよ」
そう!しかも店としても出したいから、だいぶゆるくなってるやつ。
「うそよ!もう5千円やってるのに落ちないのよ」
「それただの下手なんじゃ――」
「っ!」
思いっきり睨まれた。
あぁ、でも美少女は睨んでもキレイだなー、ドキドキしちゃう、というかしてる。
「う~ん、どうしたものですかね……」
そうだ、良いこと思いついたっ。
「ふんふんふーん」
鼻歌をわざとらしく歌いながらお金を投入する。
「あ、ちょっと!」
女の子が止めようとしたけど、軽快な音楽が鳴り始める。
「んまっ、見ててよ」
バチコーン、と負けじと今どきのJKっぽくウインクをかましてみる。
「ふん、どうせ取れるわけがないわ」
髪を掻き上げてそっぽを向かれてしまう。
ふむぅ、振られちった。
「んじゃ、よろしくおねがいしますね」
「あいよー」
私の返事に藍澤さんは片手を上げて、その場をあとにする。
「あ、ちょ、ちょっと!」
美少女は藍澤さんの背中に声を投げかけるが、ひらひらとひょろい手を振り返されるだけだった。
「まぁ、これで元気だしなよ」
ポフっと今しがた取れたのをプレゼントする。
「え?」
「ふふーん」
「え?……えっ?」
「ぶいっ」
「…………あ、ありがと」
消え入りそうな声だからちょっと意地悪してみる。
「ん~?なぁに?」
耳を近づける。
あ、良い匂い。さすが美少女。
「ありがたく受け取っておくわ。それじゃ」
「あっ――……」
クッションをギュッと抱きしめて去っていってしまった。
「ふむぅ、友達になりたかったのに」
あの制服、電車で数駅隣のお嬢様学校のだったような。私には入れそうもない。
ま、しょうがないっか。私もかーえろっと。
「あ、そだ」
藍澤さんのもとへ戻る。
「ねぇねぇ、あの子よく来る?」
「う~ん…………」
藍澤さんは視線を上の方に向けてマスクを軽く引っ張って離す。
これは考えたりする時の藍澤さんの癖。
「……いや、今日初めて見ましたね」
「そっか!ありがと。じゃね~」
「はい、お気をつけて。ゴホッ」
ゲームセンターを出ると、世界はオレンジと黒に分けられていた。
そんな中に彼女は夕陽に目を細めてシャッター街となっている商店街を見つめている。
「う~ん、絵になりますな~」
タイトル、夕焼けと美少女……いや、荒廃した世界に咲いた花、これ優勝じゃない?
良いアングルを探して、スマホを翳しながらそっと近づいてみる。
傍から見れば怪しい人、というか実際そっと避けられてるのは気にしないでおく。
「なにか用?」
「ぎくっ」
視線はこちらに向けずに話しかけられた。
「いや~、美少女見かけたらほっとけないというか」
「はぁ……どこのおじさんよ」
「げへへ、おじょうちゃん、おじちゃんとイイコトしようか」
「ねぇ」
私のボケを一掃するように肩にかかっていた髪を払ってこちらを向く。
ん~どこのシャンプーかな……。
雰囲気ガン無視で思考は加速する。
「あなた、面白いわね」
「ん?ありがとう……?」
そんなにおじさんギャグ良かったのかな。
「あなたはあなた自身に嘘ついてて、面白い」
「…………?」
何を言ってるんだろう。
「ふ~~ん、無自覚……ねっ。ありがとう、面白い話が浮かびそう」
フフ、と笑って私に背を向けて去ろうとする。
「あ、ちょ、ちょっと」
「何?」
「わ、私と付き合ってください……!」
呼び止めようと必死過ぎて訳わからないこと言って頭を下げている。
いや、何やってるんだ自分……!?
「…………は?」
顔が上げられないけど、ドン引きしてる顔が目に浮かぶ……!
私だったら逃げてる。間違いなく、今のうちにって。
「何?1人では買いにくいものでもあるの?」
お、そっちに解釈してくれるミラクル……!
「友達いなそうだもんね」
「友達くらいいるもんっ」
だが、続く言葉に突っ込むために顔を上げる。
「上っ面だけのね」
「んぐっ」
私の心にクリティカルヒット。私は撃沈した。
だけど、そんな綺麗な笑顔を浮かべて言われるのもたまらない……!
「別に良いわよ」
「えっ?」
「その代わり」
「その代わり……?」
もしかして身売りしろとか、金とか要求されたり……!
「あなたのこと観察させて」
「観察?」
「そう」
なに、視姦プレイ?そういう趣味の方なの?
「それじゃ、楽しみにしてるから――って、あなたの連絡先、というか名前すら知らない」
「まぁ、そうだねー」
まさかの超展開だから。
「私は美野こころ」
「私、神林璃乃。りのっちって呼んでね。こころん」
「私のことはせめてこころって呼びなさい、神林」
「えー…………」
先制パンチにカウンターで返されてしまった。
しかもジョルトカウンター。
ジョルトってなんだっけ?
なんか漫画で読んだような……まぁ、いいや。
そして、連絡先とチャットアプリのIDを交換してその日は別れた。
「ふ~んふふ、ふ~ん♪」
お風呂を済ませてベッドに潜り込む。
今日は素敵な出会いもあったし、良い夢見れそう。
だけど、その前に。
「今日は更新されてるかな~」
お気に入りのWeb小説作家さんのロコノミ氏のページを見る。
「お、あったあった」
新着作品があったことによって今日はさらに良い1日になった。
「ん?アイコンが変わってる」
ロコノミ氏のアイコンがなんか見たことあるような気がするのに変わっていた。
どこで見たんだっけ?
「ふむぅ……むむむ」
ま、いっか!
「読もう読もう」
布団に背中を預けて読み耽ることにした。
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