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「はあ、はあ、病み上がりに上り坂はきついな。はあ、はあ、はあ。ん、はあー、終わった。やっと下りだ」
俺は浅宮零士。十七歳の高校一年生。
十七なのに高一なのは出席日数が足りなくてダブってるから。
俺は昔からしょっちゅう怪我や病気を繰り返した。
それも、突然木が折れて倒れてきて骨折とか、何も触れていないガラスが割れて飛び散ってきて数針縫うはめになったとか、ちょっと考え難い理由でだ。
つい先日も家族と外食して俺だけ食中毒になって入院した。同じ物を食べたにもかかわらず。
まあ、ぶっちゃけついてない不幸体質としか言いようがない。
周りの人には呪われていると言う者もいる。
実際そうなのかもしれない。呪いなんて見えないので確かめようもないけれど。
だからといって、そんなことに囚われて暗くなるつもりなんてない。
これからも不幸な出来事が続くかもしれないけど、小さな幸せくらいあるだろうから。
今だってほら、風がこんなに気持ちいい。
「はあー、楽だし、気持ちいい。・・・あ」
自転車のペダルを回さずに下り坂を堪能していた俺の目の前に作業中のゴミ収集車が見えた。
俺は避けるか止まるか決めるために、後ろを振り返り車が来ていないか確認する。
後ろからは車が来ており、タイミング的にこのまま避けて進むのは危険そうだ。
仕方ない。一旦止まるか。
俺はそう思ってブレーキを掛けた。
ブツン。
「え?」
突然ブレーキを握る手への負荷が消えて、ブレーキレバーがスカスカになった。
しかも、左右同時に。
あまりのことに俺は状況がのみ込めず呆然としてしまった。
それが確実に命取りになるにもかかわらず。
気付いた時には自転車がゴミ収集車に激突し、投げ出された俺の体はゴミと一緒に圧縮された。
「・・・、?」
「気が付いたようじゃの」
気が付いた俺がいるのは辺り一面真っ白な空間。
そこに一人の老人が立っていた。
ああ、死後の世界ってやつか。
あんな出来事の後ならそれ以外・・・。
「う、お、おええ」
「思い出そうとするな。あれは覚えておかんでいいものだ」
死ぬ時の状況を思い出し苦しむ俺に老人が近付いて来て手をかざす。
すると、先程まで苦しかったものがすっと消えていく。
あれ?何で苦しかったんだ?
つい先程まで苦しかったのだが、何故苦しかったのかさっぱり分からない。
確か、死んだ時のことを思い出していたような・・・。
「そのことはどうでもいいじゃろ。お主の思った通り、ここは神の世界。人間にとっての死後の世界と言える」
俺が思ったことが分かるのか。
まあ、こんな場所で会うのだから神様だろうし、それくらい出来るよな。
「まあの」
やっぱりか。
「あの、俺は何故ここに呼ばれたのですか?」
「うむ。お主のこれからについて話すためじゃ」
「これからですか?」
「生まれ変わる新たな生についてじゃ。人間は何度も生まれ変わり人生を繰り返す。平凡な人生、幸運な人生、不幸な人生、と色々な人生をな。ところが、お主の場合、何故か不幸を呼ぶ因子が魂にこびり付いていてな、このままでは不幸で天寿を全う出来ない人生ばかりを過ごすことになる。不幸を呼ぶ因子を取り除こうにもお主の魂と癒着し過ぎてな、無理に取り除くと人の魂とは呼べないものになってしまう。そこでじゃ。お主の魂にこびりついた不幸を呼ぶ因子を取り除けないなら、訪れる不幸に負けない体を作れば良いと思ったのじゃよ。まあ、お主のいた世界ではそんな人間を作ることは無理じゃから他の世界でということになるがの」
「他の世界というと」
「ファンタジー物の定番の『剣と魔法の世界』というやつじゃ。そこでならかなり頑丈な体を用意することが出来るでな。どうじゃ?その世界に転生してみんか?」
「はい!是非お願いします!」
『剣と魔法の世界』。最高じゃないか!
一度は夢見た場所だよ。
『かなり頑丈な体』って言ってるし、チートは間違いないよな。
どのくらい強いのかな?滅茶苦茶気になる!
「どうやら転生するのは承諾ということでいいようじゃな。お主の体についてじゃが、年齢的には今のお主と同年齢と考えてくれ。赤ん坊の体ではあまり強化も出来んし、その方が馴染み易いじゃろ」
「そうですね」
今の記憶持ったまま赤ん坊にされても何やっていいか分からないものな。
物凄く暇そうだし。
「それで、お主の体についてなんじゃが、多目に加護を与えるといっても人の器には限界があるからの、その全てを体の強靭さを上げるのに注ぎ込んだ。ス●ロボで例えるなら『HP』と『装甲値』をフル改造して、更に『HP』と『装甲値』が上がる強化パーツを付けたマジ●ガーってところかの」
え?何で例えがス●ロボのマジ●ガー?
ファンタジーな世界じゃないの?
「お主もやっておったから分かりやすいと思ったんじゃが」
「確かに分かりやすいですけど」
確かにやっていたので大体の感じは掴める。
そこまでやると物凄く硬い。落とされる感じなんかしないな。
更に『鉄壁』を使えば完璧なんだが。
「『鉄壁』は無いが、防御力を上げる魔法は存在するのでそれを使ってくれ。まあ、それには向こうに行って自分で覚えてもらわんとダメじゃがな」
「最初から魔法が使える訳ではないのですか」
「そうじゃ」
異世界に行ったら先ず魔法を使ってみたかったのだが、覚えるまではお預けか。
まあ、覚える楽しみがあると思っておこう。
「魔法ってどうやって覚えればいいのですか?教えてくれる場所はあるのでしょうか?」
「初歩的なものなら冒険者ギルドで教えてもらえるぞ。どこの街のものであろうとな。まあ、教えてもらえる内容と授業料はまちまちじゃがな」
「そうですか」
冒険者ギルドならどこの街のでも魔法を教えてもらえるのか。
それなら機会とお金が出来たら習いに行こう。
「あと、剣術や体術なんかの戦闘技能も教えてもらうといい。そっちも自分で覚えてもらわんとダメじゃからの」
「え、そっちも?」
戦うためのスキルを一つも持ってないの?
剣と魔法の世界に行くのに?
俺、異世界に行ったら先ず冒険者ギルドに登録して冒険者として生活しようと思っていたのに、戦うスキルが一つも無いんじゃそれも無理ってこと?
「心配無用じゃ。冒険者ギルドは金さえ払えば誰でも入れる。それに、スキルなんぞ無くても戦うことは出来るわい。効率が悪いだけじゃ。お主のために用意した体なら問題無い」
「そうですか」
格闘技を習ってなくても喧嘩は出来るもんな。
そう考えればスキルが無くても戦えるか。
『HP』と『装甲値』フル改造のマジ●ガーらしいし。
武器は『格闘』だけだと考えても。
「あの、『魔法』や『戦闘技能』以外はどうなっているんでしょうか?『アイテムボックス』的なものも無いのでしょうか?」
「当然無い。お主の不幸を呼ぶ体質を考えると、天寿を全うさせるには加護を体の強化以外には回せんかったからの」
「そうですか」
やっぱり無いのか。
本当に加護の全て体の強化に注ぎ込まれたようだ。
『アイテムボックス』とかあったら絶対便利なのに。
あと、『鑑定』とかも。
「そのお陰でかなり強靭な体じゃぞ。斬撃や打撃などの物理的な攻撃は勿論、魔法に対しても強力な耐性をもっておる。呪いにもな。毒も効かんし、催眠術の類も効かん。酸などの溶解液の類や、熱さや寒さ、飢えや乾き、病気にも強い。それと、水の中でも窒息することはなく、それどころか真空でも平気じゃ。生身で宇宙に行くことも出来るぞ」
え、まさかの宇宙対応?
「あの、それってもう人間じゃない気がするのですけど」
なんか人間の体じゃなく、機械の体に意識だけ移されるような感じがするんだけど。
例えもス●ロボのマジ●ガーだし。
もしくは、ゴーレムの体なのか?
「一応、人間じゃぞ。ちゃんと年も取るし、子供も作れるからな」
「そうですか」
エッチなことは出来るようでほっとした。
童貞のまま機械の体とか、ゴーレムの体では死んでも死に切れん!!!
「そのかわり、適度に抜かんと夢精するぞ」
「あ、はい」
あ、そこは思春期の男子なんでちゃんと心得ていますよ。
「それにしても、そこまで体を強化しないとダメなんですか?ちょっとくらい他のことに回しても・・・」
俺としては体の強化に全てを注ぎ込む必要は無いんじゃないかなって思ってしまう。
生身で宇宙になど行けなくていいから、その分便利なスキルの一つでもあればなって。
「その考えは甘いの。宇宙に飛ばされる罠は無いが、作られた真空空間に飛ばす罠は存在しておる。お主の運の悪さを考えるとその内飛ばされるじゃろ」
「そんなものが存在するんですか」
「そうじゃ」
そんな罠が存在するなら仕方ない。
便利なスキルは諦めよう。
死んでしまっては便利なスキルも意味は無いからな。
「そうしておけ。それとな、お主が引き寄せる『不幸』なんじゃが、ある程度コントロール出来るようにしておいた」
「『不幸』をコントロールですか」
「うむ。今見えるようにしたが、見えるか?」
「はい。視界に何かゲージみたいなのが出ました」
神様が何かした途端、俺の視界の右上辺りにゲームでよく見かけるゲージ状のものが現れる。
今は空っぽだ。
「そいつは取り敢えず『不幸ゲージ』とでも呼ぼうか。それが一杯になれば問答無用でお主に不幸が訪れる」
「そうですか」
うわー、滅茶苦茶嫌なゲージだよ。
「一杯になる前でも『不幸解放』と言えばお主に不幸が訪れる」
「『不幸解放』」
「訪れる不幸はゲージの量で変わる。ゲージの量が少ない程訪れる不幸の度合いも低いの」
「小さな不幸が何度もか、大きな不幸かってことですか」
嫌な二択だな。
「出来ればお主には小さな不幸の方を選んでほしいの。大きな不幸は周りの者も巻き込むでな」
「それってどれくらいのものになるのですか?」
「ゲージが一杯になった時であれば、小さな街なら壊滅するかの」
「え、そこまで・・・」
街が壊滅ってマジで洒落にならない。
積極的に『不幸解放』って言わなきゃダメだ。
あと、言う時は出来るだけ一人の方がいいな。
「そうじゃの。そうしてくれ。お主はゲージ一杯の不幸でも死ぬことは無いじゃろうから」
まあ、そうだよな。そのために設計された体なんだから。
「注意点はそれくらいじゃな。天寿を全うすればお主の魂にこびり付いている不幸を呼ぶ因子も取れると思う。そうなれば普通の輪廻に戻すことも出来るじゃろ。これからもお主には次々と不幸が訪れるが、それは幸運が訪れないということではない。出来るだけ人生を楽しんでくれ」
「はい」
今までだってそうだった。
不幸な出来事の方が多かったけど、ずっと辛かった訳じゃない。
楽しいこともあったし、心から笑ったことだってあった。
不幸な出来事に囚われなければ、これからだって楽しめるさ。
そんなことを考えていると神様が微笑みながら頷いていた。
「ではお主を送るとしようか。新天地となる『フマルブラン』へと」
こうして、『フマルブラン』という世界で俺の新たな人生が始まることになったのだった。
俺は浅宮零士。十七歳の高校一年生。
十七なのに高一なのは出席日数が足りなくてダブってるから。
俺は昔からしょっちゅう怪我や病気を繰り返した。
それも、突然木が折れて倒れてきて骨折とか、何も触れていないガラスが割れて飛び散ってきて数針縫うはめになったとか、ちょっと考え難い理由でだ。
つい先日も家族と外食して俺だけ食中毒になって入院した。同じ物を食べたにもかかわらず。
まあ、ぶっちゃけついてない不幸体質としか言いようがない。
周りの人には呪われていると言う者もいる。
実際そうなのかもしれない。呪いなんて見えないので確かめようもないけれど。
だからといって、そんなことに囚われて暗くなるつもりなんてない。
これからも不幸な出来事が続くかもしれないけど、小さな幸せくらいあるだろうから。
今だってほら、風がこんなに気持ちいい。
「はあー、楽だし、気持ちいい。・・・あ」
自転車のペダルを回さずに下り坂を堪能していた俺の目の前に作業中のゴミ収集車が見えた。
俺は避けるか止まるか決めるために、後ろを振り返り車が来ていないか確認する。
後ろからは車が来ており、タイミング的にこのまま避けて進むのは危険そうだ。
仕方ない。一旦止まるか。
俺はそう思ってブレーキを掛けた。
ブツン。
「え?」
突然ブレーキを握る手への負荷が消えて、ブレーキレバーがスカスカになった。
しかも、左右同時に。
あまりのことに俺は状況がのみ込めず呆然としてしまった。
それが確実に命取りになるにもかかわらず。
気付いた時には自転車がゴミ収集車に激突し、投げ出された俺の体はゴミと一緒に圧縮された。
「・・・、?」
「気が付いたようじゃの」
気が付いた俺がいるのは辺り一面真っ白な空間。
そこに一人の老人が立っていた。
ああ、死後の世界ってやつか。
あんな出来事の後ならそれ以外・・・。
「う、お、おええ」
「思い出そうとするな。あれは覚えておかんでいいものだ」
死ぬ時の状況を思い出し苦しむ俺に老人が近付いて来て手をかざす。
すると、先程まで苦しかったものがすっと消えていく。
あれ?何で苦しかったんだ?
つい先程まで苦しかったのだが、何故苦しかったのかさっぱり分からない。
確か、死んだ時のことを思い出していたような・・・。
「そのことはどうでもいいじゃろ。お主の思った通り、ここは神の世界。人間にとっての死後の世界と言える」
俺が思ったことが分かるのか。
まあ、こんな場所で会うのだから神様だろうし、それくらい出来るよな。
「まあの」
やっぱりか。
「あの、俺は何故ここに呼ばれたのですか?」
「うむ。お主のこれからについて話すためじゃ」
「これからですか?」
「生まれ変わる新たな生についてじゃ。人間は何度も生まれ変わり人生を繰り返す。平凡な人生、幸運な人生、不幸な人生、と色々な人生をな。ところが、お主の場合、何故か不幸を呼ぶ因子が魂にこびり付いていてな、このままでは不幸で天寿を全う出来ない人生ばかりを過ごすことになる。不幸を呼ぶ因子を取り除こうにもお主の魂と癒着し過ぎてな、無理に取り除くと人の魂とは呼べないものになってしまう。そこでじゃ。お主の魂にこびりついた不幸を呼ぶ因子を取り除けないなら、訪れる不幸に負けない体を作れば良いと思ったのじゃよ。まあ、お主のいた世界ではそんな人間を作ることは無理じゃから他の世界でということになるがの」
「他の世界というと」
「ファンタジー物の定番の『剣と魔法の世界』というやつじゃ。そこでならかなり頑丈な体を用意することが出来るでな。どうじゃ?その世界に転生してみんか?」
「はい!是非お願いします!」
『剣と魔法の世界』。最高じゃないか!
一度は夢見た場所だよ。
『かなり頑丈な体』って言ってるし、チートは間違いないよな。
どのくらい強いのかな?滅茶苦茶気になる!
「どうやら転生するのは承諾ということでいいようじゃな。お主の体についてじゃが、年齢的には今のお主と同年齢と考えてくれ。赤ん坊の体ではあまり強化も出来んし、その方が馴染み易いじゃろ」
「そうですね」
今の記憶持ったまま赤ん坊にされても何やっていいか分からないものな。
物凄く暇そうだし。
「それで、お主の体についてなんじゃが、多目に加護を与えるといっても人の器には限界があるからの、その全てを体の強靭さを上げるのに注ぎ込んだ。ス●ロボで例えるなら『HP』と『装甲値』をフル改造して、更に『HP』と『装甲値』が上がる強化パーツを付けたマジ●ガーってところかの」
え?何で例えがス●ロボのマジ●ガー?
ファンタジーな世界じゃないの?
「お主もやっておったから分かりやすいと思ったんじゃが」
「確かに分かりやすいですけど」
確かにやっていたので大体の感じは掴める。
そこまでやると物凄く硬い。落とされる感じなんかしないな。
更に『鉄壁』を使えば完璧なんだが。
「『鉄壁』は無いが、防御力を上げる魔法は存在するのでそれを使ってくれ。まあ、それには向こうに行って自分で覚えてもらわんとダメじゃがな」
「最初から魔法が使える訳ではないのですか」
「そうじゃ」
異世界に行ったら先ず魔法を使ってみたかったのだが、覚えるまではお預けか。
まあ、覚える楽しみがあると思っておこう。
「魔法ってどうやって覚えればいいのですか?教えてくれる場所はあるのでしょうか?」
「初歩的なものなら冒険者ギルドで教えてもらえるぞ。どこの街のものであろうとな。まあ、教えてもらえる内容と授業料はまちまちじゃがな」
「そうですか」
冒険者ギルドならどこの街のでも魔法を教えてもらえるのか。
それなら機会とお金が出来たら習いに行こう。
「あと、剣術や体術なんかの戦闘技能も教えてもらうといい。そっちも自分で覚えてもらわんとダメじゃからの」
「え、そっちも?」
戦うためのスキルを一つも持ってないの?
剣と魔法の世界に行くのに?
俺、異世界に行ったら先ず冒険者ギルドに登録して冒険者として生活しようと思っていたのに、戦うスキルが一つも無いんじゃそれも無理ってこと?
「心配無用じゃ。冒険者ギルドは金さえ払えば誰でも入れる。それに、スキルなんぞ無くても戦うことは出来るわい。効率が悪いだけじゃ。お主のために用意した体なら問題無い」
「そうですか」
格闘技を習ってなくても喧嘩は出来るもんな。
そう考えればスキルが無くても戦えるか。
『HP』と『装甲値』フル改造のマジ●ガーらしいし。
武器は『格闘』だけだと考えても。
「あの、『魔法』や『戦闘技能』以外はどうなっているんでしょうか?『アイテムボックス』的なものも無いのでしょうか?」
「当然無い。お主の不幸を呼ぶ体質を考えると、天寿を全うさせるには加護を体の強化以外には回せんかったからの」
「そうですか」
やっぱり無いのか。
本当に加護の全て体の強化に注ぎ込まれたようだ。
『アイテムボックス』とかあったら絶対便利なのに。
あと、『鑑定』とかも。
「そのお陰でかなり強靭な体じゃぞ。斬撃や打撃などの物理的な攻撃は勿論、魔法に対しても強力な耐性をもっておる。呪いにもな。毒も効かんし、催眠術の類も効かん。酸などの溶解液の類や、熱さや寒さ、飢えや乾き、病気にも強い。それと、水の中でも窒息することはなく、それどころか真空でも平気じゃ。生身で宇宙に行くことも出来るぞ」
え、まさかの宇宙対応?
「あの、それってもう人間じゃない気がするのですけど」
なんか人間の体じゃなく、機械の体に意識だけ移されるような感じがするんだけど。
例えもス●ロボのマジ●ガーだし。
もしくは、ゴーレムの体なのか?
「一応、人間じゃぞ。ちゃんと年も取るし、子供も作れるからな」
「そうですか」
エッチなことは出来るようでほっとした。
童貞のまま機械の体とか、ゴーレムの体では死んでも死に切れん!!!
「そのかわり、適度に抜かんと夢精するぞ」
「あ、はい」
あ、そこは思春期の男子なんでちゃんと心得ていますよ。
「それにしても、そこまで体を強化しないとダメなんですか?ちょっとくらい他のことに回しても・・・」
俺としては体の強化に全てを注ぎ込む必要は無いんじゃないかなって思ってしまう。
生身で宇宙になど行けなくていいから、その分便利なスキルの一つでもあればなって。
「その考えは甘いの。宇宙に飛ばされる罠は無いが、作られた真空空間に飛ばす罠は存在しておる。お主の運の悪さを考えるとその内飛ばされるじゃろ」
「そんなものが存在するんですか」
「そうじゃ」
そんな罠が存在するなら仕方ない。
便利なスキルは諦めよう。
死んでしまっては便利なスキルも意味は無いからな。
「そうしておけ。それとな、お主が引き寄せる『不幸』なんじゃが、ある程度コントロール出来るようにしておいた」
「『不幸』をコントロールですか」
「うむ。今見えるようにしたが、見えるか?」
「はい。視界に何かゲージみたいなのが出ました」
神様が何かした途端、俺の視界の右上辺りにゲームでよく見かけるゲージ状のものが現れる。
今は空っぽだ。
「そいつは取り敢えず『不幸ゲージ』とでも呼ぼうか。それが一杯になれば問答無用でお主に不幸が訪れる」
「そうですか」
うわー、滅茶苦茶嫌なゲージだよ。
「一杯になる前でも『不幸解放』と言えばお主に不幸が訪れる」
「『不幸解放』」
「訪れる不幸はゲージの量で変わる。ゲージの量が少ない程訪れる不幸の度合いも低いの」
「小さな不幸が何度もか、大きな不幸かってことですか」
嫌な二択だな。
「出来ればお主には小さな不幸の方を選んでほしいの。大きな不幸は周りの者も巻き込むでな」
「それってどれくらいのものになるのですか?」
「ゲージが一杯になった時であれば、小さな街なら壊滅するかの」
「え、そこまで・・・」
街が壊滅ってマジで洒落にならない。
積極的に『不幸解放』って言わなきゃダメだ。
あと、言う時は出来るだけ一人の方がいいな。
「そうじゃの。そうしてくれ。お主はゲージ一杯の不幸でも死ぬことは無いじゃろうから」
まあ、そうだよな。そのために設計された体なんだから。
「注意点はそれくらいじゃな。天寿を全うすればお主の魂にこびり付いている不幸を呼ぶ因子も取れると思う。そうなれば普通の輪廻に戻すことも出来るじゃろ。これからもお主には次々と不幸が訪れるが、それは幸運が訪れないということではない。出来るだけ人生を楽しんでくれ」
「はい」
今までだってそうだった。
不幸な出来事の方が多かったけど、ずっと辛かった訳じゃない。
楽しいこともあったし、心から笑ったことだってあった。
不幸な出来事に囚われなければ、これからだって楽しめるさ。
そんなことを考えていると神様が微笑みながら頷いていた。
「ではお主を送るとしようか。新天地となる『フマルブラン』へと」
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