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3章
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「それで? アタシに頼みたいことってなんだい?」
「結論から言います。ベルリアンと同盟を結んでもらいたい」
「ふぅん、面白いことを言うね」
くつくつと笑いはしているが、メリッサ嬢の目はぎゅっと細められて全く笑っていない。こちらの真意を探っているのだ。これまで何百年も不干渉、不可侵で続けてきた関係を壊してまで、同盟を結ぶ必要がある理由を。俺たちを見定めるようにじっと見つめてくる。思わず込み上げてきた生唾をグッと飲み込む。しかしノア様は臆することなく顔をグッとあげた。
覚悟をしている横顔だった。何があっても退かないと、何があっても同盟を組むのだと。強い覚悟を見て取れた。
「悪いけど、理由が見当たらないね。ベルリアンは国王軍と聖騎士団に反旗を翻した。そこと同盟を組むなんてデメリットしかない」
「その通りです。ですが、このままではいつかポルテベラも攻め込まれます」
「根拠は?」
「……僕の言葉だけ、です」
「はっ! これまで子爵としての仕事を従者に任せ遊び呆けていたお前の言葉を信じろと? アタシはそこまで優しくないし、バカでもないんだ」
全くもってその通りだ。今でこそノア様は別人のようになったけれど、メリッサ嬢が抱く印象は以前のままだろう。ベルリアンのことすらよく知らない人間の言うことを、どうして頭から信じられようか。
実際、俺も同じ状況なのだ。こんなにも近くで見ている俺でさえまだ心から信じられていない。ヘンリー伯爵も信じられていないから、俺に密命を与えた。今のノア様を信じている人間なんてこの世に一人もいない。いや、信じたいと願っている人間は、ここに一人いるけれど。
「だから、取引をしに来ました」
「ほう?」
「ポルテベラでも子供が修道院に連れていかれる事態が起きていると聞きました。それにより領民が困っている、とも」
「ああ……だが、それはどの都市でも同じだろう」
「はい。でも、僕は連れ去られている子供を助けることができる。少なくとも最近連れて行かれた子供は」
ノア様の言葉に、思わず視線を向ける。一体何を言っているんだ。地の利があるベルリアンならまだしも、ここは初めて訪れたポルテベラだ。しかも俺たちにはわずかな護衛しかいない。人手も足りないし、不可能としか思えない。それなのにノア様は「できる」と言い切った。それを材料に交渉しようとしている。
何か策があるんだろうか。いや、無策でこんな大それたことを言うはずがない。あまりにも不利な状況で、ありえないことをやってのけたら。そうしたら、ノア様のことを信じていいのかもしれない。ヘンリー様からの密命のこともある。できることなら、ノア様におかしな疑いがかからないようにしたい。かといってヘンリー様に嘘をつきたくもない。
そのためにも、ノア様には何があっても子供を助けてもらわなくては。
「面白い! いいだろう、お前の言葉に乗ってやる」
「ありがとうございます、メリッサ嬢」
「期限は?」
「次の夜明けまで」
「強気だな。何か勝機でもあるのか?」
メリッサ嬢の言葉に、ノア様はただ微笑むだけ。
一瞬、胸の内に不安がよぎる。しかしそれを払拭するように小さく頭を振り、ノア様の隣でグッと生唾を飲み込んだ。俺は、ただ言われることをこなすだけだ。それがいずれノア様の役に立つ。
そう強く信じて、メリッサ嬢に深々と頭を下げた。
「結論から言います。ベルリアンと同盟を結んでもらいたい」
「ふぅん、面白いことを言うね」
くつくつと笑いはしているが、メリッサ嬢の目はぎゅっと細められて全く笑っていない。こちらの真意を探っているのだ。これまで何百年も不干渉、不可侵で続けてきた関係を壊してまで、同盟を結ぶ必要がある理由を。俺たちを見定めるようにじっと見つめてくる。思わず込み上げてきた生唾をグッと飲み込む。しかしノア様は臆することなく顔をグッとあげた。
覚悟をしている横顔だった。何があっても退かないと、何があっても同盟を組むのだと。強い覚悟を見て取れた。
「悪いけど、理由が見当たらないね。ベルリアンは国王軍と聖騎士団に反旗を翻した。そこと同盟を組むなんてデメリットしかない」
「その通りです。ですが、このままではいつかポルテベラも攻め込まれます」
「根拠は?」
「……僕の言葉だけ、です」
「はっ! これまで子爵としての仕事を従者に任せ遊び呆けていたお前の言葉を信じろと? アタシはそこまで優しくないし、バカでもないんだ」
全くもってその通りだ。今でこそノア様は別人のようになったけれど、メリッサ嬢が抱く印象は以前のままだろう。ベルリアンのことすらよく知らない人間の言うことを、どうして頭から信じられようか。
実際、俺も同じ状況なのだ。こんなにも近くで見ている俺でさえまだ心から信じられていない。ヘンリー伯爵も信じられていないから、俺に密命を与えた。今のノア様を信じている人間なんてこの世に一人もいない。いや、信じたいと願っている人間は、ここに一人いるけれど。
「だから、取引をしに来ました」
「ほう?」
「ポルテベラでも子供が修道院に連れていかれる事態が起きていると聞きました。それにより領民が困っている、とも」
「ああ……だが、それはどの都市でも同じだろう」
「はい。でも、僕は連れ去られている子供を助けることができる。少なくとも最近連れて行かれた子供は」
ノア様の言葉に、思わず視線を向ける。一体何を言っているんだ。地の利があるベルリアンならまだしも、ここは初めて訪れたポルテベラだ。しかも俺たちにはわずかな護衛しかいない。人手も足りないし、不可能としか思えない。それなのにノア様は「できる」と言い切った。それを材料に交渉しようとしている。
何か策があるんだろうか。いや、無策でこんな大それたことを言うはずがない。あまりにも不利な状況で、ありえないことをやってのけたら。そうしたら、ノア様のことを信じていいのかもしれない。ヘンリー様からの密命のこともある。できることなら、ノア様におかしな疑いがかからないようにしたい。かといってヘンリー様に嘘をつきたくもない。
そのためにも、ノア様には何があっても子供を助けてもらわなくては。
「面白い! いいだろう、お前の言葉に乗ってやる」
「ありがとうございます、メリッサ嬢」
「期限は?」
「次の夜明けまで」
「強気だな。何か勝機でもあるのか?」
メリッサ嬢の言葉に、ノア様はただ微笑むだけ。
一瞬、胸の内に不安がよぎる。しかしそれを払拭するように小さく頭を振り、ノア様の隣でグッと生唾を飲み込んだ。俺は、ただ言われることをこなすだけだ。それがいずれノア様の役に立つ。
そう強く信じて、メリッサ嬢に深々と頭を下げた。
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