いきなり有能になった俺の主人は、人生を何度も繰り返しているらしい

一花みえる

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3章

3-11

 ポルテベラを出発してから三日後、工業都市として栄えている東都リベルマに到着した。領主であるハンス伯爵との謁見で、ノア様はメリッサ嬢と同じことを伝えた。工業都市であるリベルマでも、子供は必要な労働力として考えられている。また、独自の労働組合を作り領民は自由に商売をしているため、人手が足りない組合はそれだけでかなりの不利益を被ることになる。

 ハンス伯爵もこの事態を憂いており、どうにかして解決したいと思っていたところだったそうだ。ノア様はまたしても子供たちを見つけて返してくると約束し、その代わりに同盟を結ぶことを懇願した。

「貴殿の言葉、信じていいのか」
「ポルテベラのメリッサ嬢に聞いていただければ、僕の実績は証明されるでしょう」

 黄色のクラヴァットに明るいグレーのジャケット、そしてトップハットを被ったハンス伯爵は、濡羽のように黒い瞳でじっとノア様を見つめた。背が高く、痩せ気味なことも相まって冷たい印象を抱いた。自由が認められたこのリベルマを統治するためには猜疑心も必要なのだろう。

 しかし、逆に言えばハンス伯爵を納得させられたらかなりこちらに有利に傾く。リベルマと同盟を組むことで武器も充実するだろう。だから、何があっても失敗することはできなかったのだが。

「いました! ロード、ここです!」
「なんでそんなところに……!」

 またしてもノア様の進言は外れてしまった。正確にはポルテベラと同じで、ほんのわずかに違うだけだったのだが、二回も同じことが続くと偶然だとは思えなくなる。大きな工場の地下室に隠されていた子供たちの縄をほどきながら、暗い表情をしているノア様をそっと見つめた。足元には毒を飲んで死んだ修道士たちが転がっている。彼らもまたフルーレ司祭の名前を残して死んでいった。光魔法が通用しないとは分かっていたけれど、やはり何もしないことはできず、たまらず蘇生を試したが効果が見られず結局息を引き取ってしまった。

 子供達の居場所を一度で見つけられず、修道士たちも死なせてしまった。ポルテベラと全く同じだ。

「ノア様、ハンス伯爵のところに戻りましょう」
「そうだね……それにしても、フルーレ司祭がここまで関与してくるなんて。想定外だった」
「……行きましょう」

 ノア様の考える「想定」が果たしてどんなものだったのか、俺にはもうわからない。今聞いてもただ言い訳をしているようにしか感じられない。だが、目的を達成することはできている。ベルリアンのために行動していることには間違いないのだ。

 だったら邪神に憑かれているとは考えにくい。だが、それで本当にいいのだろうか。俺はノア様のことを信じていいのだろうか。ますます疑念が深まっていく中で、俺は眩しいほどの夜明けに目を細めた。
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