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3章
3-12
ハンス伯爵に簡単な挨拶をし、急いでベルリアンに帰るために早馬を走らせた。途中の休みもそこそこに、走り続けた結果本来であれば五日はかかる道のりを三日で走り抜けることができた。もちろん疲労感は尋常ではなく、ベルリアンの風景が見えた頃には早く寝たいという気持ちしか込み上げてこなかった。
伯爵様には同盟締結の知らせを送っていたので、簡単な報告で済むはずだ。レオたちを先に帰らせ、俺とノア様だけで伯爵様の元へと向かう。その間、俺たちの間に会話は一切なかった。いや、今だけではない。ポルテベラでの出来事から俺が距離を置いているのだ。何を話せばいいかわからない。一度生まれた猜疑心を払拭しようにも、リベルマでも同じようなことが起きた。
リベルマからベルリアンに戻ってくる間はほぼ無心だったたし、ゆっくり話をする時間もなかったから必然的に無言になってしまう。俺は居心地の悪さを感じながらもノア様の後について歩いていく。
「父上、ただいま戻りました」
「ノアか。入れ」
伯爵様の私室に入ると、父上もそこにいた。手元にはポルテベラとリベルマの家紋が入った書簡が開かれている。どうやら期待していた通り、俺たちよりも先に同盟締結の知らせが届いていたようだ。汗や土埃で汚れていたにも関わらず、伯爵様は満面の笑みで俺たちを迎えてくれた。
「よくやったな、ノア」
「ありがとうございます」
「お前がここまでやってのけるとは。お前に頼んで本当によかった」
「……僕だけの力ではありません。ジョシュアをはじめ、みんなが頑張ってくれたおかげです」
伯爵様が手放しで賞賛してくれるが、ノア様の表情は暗いままだった。おそらくフルーレ司祭の名前を残し死んでいった修道士たちのことが気がかりなのだろう。また、途中で小さな間違いを何度も起こしたことも気に病んでいるのかもしれない。
しかし、そんなノア様とは裏腹に伯爵様と父上はどこか明るい表情をしていた。
「お前たちが旅に出ている間、私たちも考えたんだ。領民を守ることが領主の使命、お前が体を張ってベルリアンのために働き、結果を残してくれた。それに応えるのも私のつとめだとな」
「それじゃあ、父上」
「ああ。もう悩まない。私は領土を、領民を守るため国王軍と対立する」
今まで自らの信仰と忠誠に悩み、最後まで悩んでいた。しかし自分のすべきことを明確に理解したことで吹っ切れたのか、はたまた同盟が締結したこともあり後には引けなくなったのか。どちらにしてもこれでベルリアンは国王軍と対立することが決定した。
おそらくこれは王国全土を巻き込んだ大規模な戦いになるだろう。そこに迷いがあっては判断が鈍ってしまう。これから三都の領主が協力していくことになるのだ。腹を括ることができたのであればもう大丈夫だろう。苦しそうな顔で戦う伯爵様を見るのは俺も心苦しかった。これで憂いが少しでもなくなってくれたのであれば、無茶な旅路をした甲斐があったというものだ。
そうして、俺は久しぶりにゆっくりと風呂で汗を流し、使いなれたベッドに横たわることができた。明日は休息のために時間を使えと伯爵様に言われている。おそらくノア様も遅い時間まで寝るはずだ。
今はただひたすらに寝たい。ノア様のことを考えるのはその後でもいいはずだ。ポルテベラだけではなく、リベルマの宿屋でもノア様に施しを与えられていたが、そのことも今は考えたくない。明日でいいことは、明日考えたらいいのだ。柔らかい毛布に包まった瞬間、スイッチが切れたように俺は深い眠りに落ちていった。
伯爵様には同盟締結の知らせを送っていたので、簡単な報告で済むはずだ。レオたちを先に帰らせ、俺とノア様だけで伯爵様の元へと向かう。その間、俺たちの間に会話は一切なかった。いや、今だけではない。ポルテベラでの出来事から俺が距離を置いているのだ。何を話せばいいかわからない。一度生まれた猜疑心を払拭しようにも、リベルマでも同じようなことが起きた。
リベルマからベルリアンに戻ってくる間はほぼ無心だったたし、ゆっくり話をする時間もなかったから必然的に無言になってしまう。俺は居心地の悪さを感じながらもノア様の後について歩いていく。
「父上、ただいま戻りました」
「ノアか。入れ」
伯爵様の私室に入ると、父上もそこにいた。手元にはポルテベラとリベルマの家紋が入った書簡が開かれている。どうやら期待していた通り、俺たちよりも先に同盟締結の知らせが届いていたようだ。汗や土埃で汚れていたにも関わらず、伯爵様は満面の笑みで俺たちを迎えてくれた。
「よくやったな、ノア」
「ありがとうございます」
「お前がここまでやってのけるとは。お前に頼んで本当によかった」
「……僕だけの力ではありません。ジョシュアをはじめ、みんなが頑張ってくれたおかげです」
伯爵様が手放しで賞賛してくれるが、ノア様の表情は暗いままだった。おそらくフルーレ司祭の名前を残し死んでいった修道士たちのことが気がかりなのだろう。また、途中で小さな間違いを何度も起こしたことも気に病んでいるのかもしれない。
しかし、そんなノア様とは裏腹に伯爵様と父上はどこか明るい表情をしていた。
「お前たちが旅に出ている間、私たちも考えたんだ。領民を守ることが領主の使命、お前が体を張ってベルリアンのために働き、結果を残してくれた。それに応えるのも私のつとめだとな」
「それじゃあ、父上」
「ああ。もう悩まない。私は領土を、領民を守るため国王軍と対立する」
今まで自らの信仰と忠誠に悩み、最後まで悩んでいた。しかし自分のすべきことを明確に理解したことで吹っ切れたのか、はたまた同盟が締結したこともあり後には引けなくなったのか。どちらにしてもこれでベルリアンは国王軍と対立することが決定した。
おそらくこれは王国全土を巻き込んだ大規模な戦いになるだろう。そこに迷いがあっては判断が鈍ってしまう。これから三都の領主が協力していくことになるのだ。腹を括ることができたのであればもう大丈夫だろう。苦しそうな顔で戦う伯爵様を見るのは俺も心苦しかった。これで憂いが少しでもなくなってくれたのであれば、無茶な旅路をした甲斐があったというものだ。
そうして、俺は久しぶりにゆっくりと風呂で汗を流し、使いなれたベッドに横たわることができた。明日は休息のために時間を使えと伯爵様に言われている。おそらくノア様も遅い時間まで寝るはずだ。
今はただひたすらに寝たい。ノア様のことを考えるのはその後でもいいはずだ。ポルテベラだけではなく、リベルマの宿屋でもノア様に施しを与えられていたが、そのことも今は考えたくない。明日でいいことは、明日考えたらいいのだ。柔らかい毛布に包まった瞬間、スイッチが切れたように俺は深い眠りに落ちていった。
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