いきなり有能になった俺の主人は、人生を何度も繰り返しているらしい

一花みえる

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3章

3-15

 ノア様をベッドに寝かせ、血で汚れた服を着替えさせる。白い肌に血糊がこびりついていたが、傷は綺麗に塞がっていた。この様子だと内臓の傷も癒えているだろう。ノア様の青ざめた顔色は変わらず、ぼんやりとした目で俺のことを視線で追っていた。おそらく失血が多く貧血になっている。
 光魔法で応急処置はしたものの、血液までは生成できない。とにかく今は安静に過ごすことしかできることがない。それがあまりにも、もどかしい。
「じょ、しゅあ」
 掠れた声で、ノア様が俺の名前を呼ぶ。返事をしても続きは返ってこない。もしかしたら不安なんだろうか。自分の身に起きたことをまだ正確に理解できていないのかもしれない。
 濡れた布で額に滲む汗を拭いながら、励ますように冷たい手を握りしめてやる。それだけで安心したのか、しばらくすると穏やかな寝息が聞こえてきた。この時間で、しかも外は大騒ぎになっている。医者が来るのはまだ先になるだろう。それまで俺にできることはないかと考え、せめて楽になればと繋いだ手から光魔法を流していく。
 ただの気休めかもしれないが、何もしないよりはマシだ。チリチリと再び痣が熱を帯びる。でもこんなものノア様が受けた痛みと比べたらなんてことはない。あの時、一番近くにいたのは俺だ。俺がノア様を守るべきだったのに。どうしてあんなにも簡単に、フルーレ司祭に隙を与えてしまったのだろうか。近くにいたのに。そばにいたのに。俺が油断していなければノア様が刺されることはなかった。
 ノア様のことを信じきれていない自分も、守れなかった自分も。従者失格だ。せめてもの罪滅ぼしにと魔力の出量をあげる。
医者が来るまでの間、俺は一睡もせず光魔法を流し続けていた。
 そうして、朝日が登ってきた頃。ようやく街で一番の医者が屋敷に到着した。
「話は聞いておるよ。お主が光魔法を使えて本当によかった」
「ありがとうございます」
「診察が終わったら声をかけるから、お主も少し休んでおれ」
「……わかりました」
 医者にそこまで言われるということは、おそらく本当に顔色が悪いのだろう。全く眠気を感じていなかったが、ノア様の私室を出て、自分の部屋に戻ると一気に疲労感が襲ってきた。
 身体中を熱の塊が暴れ回っているような感覚がする。落ち着かせそうとしても制御が効かない。このまま起きていても苦しいだけだろうと思い、着替えも適当にベッドに横たわった。そのまま意識は飛んでいき、夢も見ることなく深い眠りに落ちていた。
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