いきなり有能になった俺の主人は、人生を何度も繰り返しているらしい

一花みえる

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3章

3-16

 目を覚ました時は、すでに太陽が沈みかける頃だった。無理のある旅路と、光魔法を大量に使ったせいだろう。ぐっすり寝たおかげで体の疲れは取れていたが、気持ちはまだずしりと重たい。ノア様はどうなっただろうか。
 体を起こすと、どうにも体の様子がおかしかった。腕が重たい。指先を動かそうとしても、どこか錆び付いたかのように動きが鈍かった。長時間の訓練でもこんなことは起きたことがない。疲れとも違うこの違和感に疑問を抱きながらも、まずはノア様が優先だと思い手早く着替え、隣の部屋へと向かった。
 俺が寝ている間に医者は帰っていたようで、部屋にはノア様しかいなかった。絶対安静は続いているらしく、ベッドから起き上がってこない。サイドテーブルには医者からの書き置きがあり、どうやら数日は熱が出るだろうとのこと。ただ、傷は完全に癒えており、化膿もしていないからそれは安心していいらしい。
 最悪の事態は免れたようで胸を撫で下ろす。あとは熱が下がるのを待つだけでいい。
「ノア様、ご気分はどうですか?」
「ジョシュア……体が、熱いかな」
「熱が出ています。体を冷やさないよう汗を拭きますね」
 ノア様の体を抱き起こすと、服越しでもわかるくらい熱を帯びていた。しっとりと汗をかいており、かなり熱が高いことがすぐに伝わってくる。濡れた布で汗を拭きとり、新しい寝巻きを着せて再び横にさせる。
 昨日よりは随分と顔色は良くなっていたが、熱が苦しいのか意識はまだ朦朧としている。汗で額にくっついた髪をかき分けてやると、安心したかのように穏やかな息を吐いていた。少しでも楽になればと思い、再び光魔法を使おうとしたら、気付いたのかノア様が俺の手首をギュッと握った。
「ノア様?」
「いい、から……光魔法は、もう使わないで」
「でも」
「代わりに、手を握ってて」
「……貴方が望むのであれば、いくらでも」
 驚くほどに弱々しく、切ない声だった。手を握っていたところで辛さが消えるわけではない。熱が下がることもない。それなのに、ノア様は幼い子供のように俺の手を求めてきた。
 バレないように光魔法を使おうかと思ったが、ノア様の願いを無視するみたいだと思い、ここはグッと自制する。代わりに早く熱が下がるようにと、大して信じてもいない神に祈りを捧げた。
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