51 / 62
4章
4-3
ノア様の作戦は見事に的中した。付け焼き刃の光魔法は簡単に突破され、慌てふためく同盟軍の兵士たちはあっさりと拘束されていった。フルーレ司祭の件もあるので、自ら命を落とすことがないよう厳重な管理のもと監視している。
連合軍としては渾身の作戦が突破されたことで、指揮系統が崩れてしまったらしい。こちらの想定通りベルリアンへの進軍は止まり、少しずつ後退を始めていた。連合軍は確かに兵力が多い。しかしほとんどが他の地域から無理やり連れてこられた人であり、また使い捨てのような使われ方をされたことで結束力はそこまで強くなかった。最初の難関を突破したことで、ベルリアン軍は予想よりも遥かに進軍することができた。もちろん、味方側の損失はほとんどない。ノア様が前線で光魔法を展開し続けたからだ。俺はフォローに周り、兵士たちの統率を取るために剣を振るった。
次第に撤退していく連合軍を見て、おそらく伯爵様も肩の荷が降りたのだろう。ようやく落ち着いた表情で領民の前に姿を現すことができるようになっていた。また、軍議にも参加して現状を伝えるようにもなっていた。
「メリッサ嬢からの伝令だ。ポルテベラ軍は上空から王都サンレコリナを包囲したそうだ」
「さすがですね。ハンス伯爵には下手に攻撃しないようお伝えください。光魔法の防壁が完全に消えないと無駄打ちになってしまう」
「わかった」
軍議の中で、ノア様は伯爵様に同盟軍への進言もしている。戦いを俯瞰的に見て、判断しているのだろう。ただでさえ最前線で戦っているというのに、そこまで頭を働かせているなんて。
きっと、負担は大きいはずだ。疲労もあるのだろう、時間が取れる時はほとんど寝ていることが増えてきた。それでも弱音を吐くことなく、領土のため、領民のために動こうとしている。そんなノア様のために、俺は何ができるんだろう。
「明日には王都に侵攻する。おそらく今まで以上に厳しい戦いになるだろう」
「国王と相対することになるでしょう……父上、大丈夫ですか」
「心配するな。もう覚悟はしている」
伯爵様は愛用している剣を握り、それから隣に立っていた父上に視線を送った。父上は何も言わず、大きな盾を握りしめている。きっとこの二人にしかわからない信頼と絆があるのだろう。
その姿はまさしく主従として相応しく、あるべきものだと思えた。
俺とノア様にはない、純粋で偽りのない美しいものだ。そう考えると、胸に落ちた一滴の罪悪感がじわじわと広がっていき、ちくりと痛み続けるのだった。
連合軍としては渾身の作戦が突破されたことで、指揮系統が崩れてしまったらしい。こちらの想定通りベルリアンへの進軍は止まり、少しずつ後退を始めていた。連合軍は確かに兵力が多い。しかしほとんどが他の地域から無理やり連れてこられた人であり、また使い捨てのような使われ方をされたことで結束力はそこまで強くなかった。最初の難関を突破したことで、ベルリアン軍は予想よりも遥かに進軍することができた。もちろん、味方側の損失はほとんどない。ノア様が前線で光魔法を展開し続けたからだ。俺はフォローに周り、兵士たちの統率を取るために剣を振るった。
次第に撤退していく連合軍を見て、おそらく伯爵様も肩の荷が降りたのだろう。ようやく落ち着いた表情で領民の前に姿を現すことができるようになっていた。また、軍議にも参加して現状を伝えるようにもなっていた。
「メリッサ嬢からの伝令だ。ポルテベラ軍は上空から王都サンレコリナを包囲したそうだ」
「さすがですね。ハンス伯爵には下手に攻撃しないようお伝えください。光魔法の防壁が完全に消えないと無駄打ちになってしまう」
「わかった」
軍議の中で、ノア様は伯爵様に同盟軍への進言もしている。戦いを俯瞰的に見て、判断しているのだろう。ただでさえ最前線で戦っているというのに、そこまで頭を働かせているなんて。
きっと、負担は大きいはずだ。疲労もあるのだろう、時間が取れる時はほとんど寝ていることが増えてきた。それでも弱音を吐くことなく、領土のため、領民のために動こうとしている。そんなノア様のために、俺は何ができるんだろう。
「明日には王都に侵攻する。おそらく今まで以上に厳しい戦いになるだろう」
「国王と相対することになるでしょう……父上、大丈夫ですか」
「心配するな。もう覚悟はしている」
伯爵様は愛用している剣を握り、それから隣に立っていた父上に視線を送った。父上は何も言わず、大きな盾を握りしめている。きっとこの二人にしかわからない信頼と絆があるのだろう。
その姿はまさしく主従として相応しく、あるべきものだと思えた。
俺とノア様にはない、純粋で偽りのない美しいものだ。そう考えると、胸に落ちた一滴の罪悪感がじわじわと広がっていき、ちくりと痛み続けるのだった。
あなたにおすすめの小説
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
【完結。一気読みできます!】悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
声を失った悪役令息は北の砦で覚醒する〜無詠唱結界で最強と呼ばれ、冷酷侯爵に囲われました〜
天気
BL
完結に向けて頑張ります
5月中旬頃完結予定です
その後は、サイドストーリーをちょこちょこ投稿していこうと思ってます
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
転生したら最強辺境伯に拾われました
マンスーン
BL
現代日本人・東堂裕太が目を覚ますと、そこは異世界。クズな婚約者に魔力を限界まで搾取され、ボロボロになって森に捨てられる悲惨な青年・ルカに転生していた。
死を覚悟した裕太だったが、そんな彼を拾い上げたのは、帝国最強の武力を誇り「氷の死神」と恐れられる辺境伯・ラーク。
神子の余分
朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。
おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。
途中、長く中断致しましたが、完結できました。最後の部分を修正しております。よければ読み直してみて下さい。