いきなり有能になった俺の主人は、人生を何度も繰り返しているらしい

一花みえる

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4章

4-3

 ノア様の作戦は見事に的中した。付け焼き刃の光魔法は簡単に突破され、慌てふためく同盟軍の兵士たちはあっさりと拘束されていった。フルーレ司祭の件もあるので、自ら命を落とすことがないよう厳重な管理のもと監視している。
 連合軍としては渾身の作戦が突破されたことで、指揮系統が崩れてしまったらしい。こちらの想定通りベルリアンへの進軍は止まり、少しずつ後退を始めていた。連合軍は確かに兵力が多い。しかしほとんどが他の地域から無理やり連れてこられた人であり、また使い捨てのような使われ方をされたことで結束力はそこまで強くなかった。最初の難関を突破したことで、ベルリアン軍は予想よりも遥かに進軍することができた。もちろん、味方側の損失はほとんどない。ノア様が前線で光魔法を展開し続けたからだ。俺はフォローに周り、兵士たちの統率を取るために剣を振るった。
 次第に撤退していく連合軍を見て、おそらく伯爵様も肩の荷が降りたのだろう。ようやく落ち着いた表情で領民の前に姿を現すことができるようになっていた。また、軍議にも参加して現状を伝えるようにもなっていた。
「メリッサ嬢からの伝令だ。ポルテベラ軍は上空から王都サンレコリナを包囲したそうだ」
「さすがですね。ハンス伯爵には下手に攻撃しないようお伝えください。光魔法の防壁が完全に消えないと無駄打ちになってしまう」
「わかった」
 軍議の中で、ノア様は伯爵様に同盟軍への進言もしている。戦いを俯瞰的に見て、判断しているのだろう。ただでさえ最前線で戦っているというのに、そこまで頭を働かせているなんて。
 きっと、負担は大きいはずだ。疲労もあるのだろう、時間が取れる時はほとんど寝ていることが増えてきた。それでも弱音を吐くことなく、領土のため、領民のために動こうとしている。そんなノア様のために、俺は何ができるんだろう。
「明日には王都に侵攻する。おそらく今まで以上に厳しい戦いになるだろう」
「国王と相対することになるでしょう……父上、大丈夫ですか」
「心配するな。もう覚悟はしている」
 伯爵様は愛用している剣を握り、それから隣に立っていた父上に視線を送った。父上は何も言わず、大きな盾を握りしめている。きっとこの二人にしかわからない信頼と絆があるのだろう。
 その姿はまさしく主従として相応しく、あるべきものだと思えた。
 俺とノア様にはない、純粋で偽りのない美しいものだ。そう考えると、胸に落ちた一滴の罪悪感がじわじわと広がっていき、ちくりと痛み続けるのだった。
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