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2章
2-5
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ノア様は届いたばかりの木刀を、俺は使い慣れたロングソードの訓練用の剣を手にする。右足を大きく引き、柄を顔まで引き上げた。やや高めの中段で刃を寝かせて静止する。グッと重心を落として構えてノア様に向き合う。ロングソードは攻撃と防御を同時に行う剣術だ。俺とノア様の身長差は約6センチ、それならば上段に近い中段で相手の動きを見る方が効率的だ。
一体、どのように出てくるか。じっと様子を見ていると、ノア様は木刀を中段に構えた。切先がやや斜めに傾いているところを見ると、鉄の扉と呼ばれる構えだとすぐにわかった。しかし、足の開きが俺とは逆だ。左足を引き、踵がわずかに浮いている。重心がここまで前に来るとは。しかも体に無駄な力が入っていない。どこかリラックスしているかのようにも見える。
それなのにどこにも隙がない。少しでもこちらが動けば斬り込まれるような、そんなピンと張り詰めた緊張感がある。今までのノア様からは考えられない、研ぎ澄まされた雰囲気を嫌というほど感じた。
「どこからでもいいよ、ジョシュア」
「ノア様こそ。本気で向かってきてください」
「言われなくても」
その言葉を合図に、俺は引いていた右足を思い切り踏み出した。俺よりも身長の低いノア様は中段からの振り下ろしに弱いはずだ。俺の一撃を避けたところで下から切り上げる。そうすれば簡単に勝てると、そう思っていたのに。
切りつけた先に、ノア様の姿はなかった。
「な……っ!」
ノア様は音もなく俺の左側に動いていた。あ、と思う前に左手の甲を木刀で叩かれる。予想していなかった攻撃に思わず重心がブレた瞬間、喉元に木刀の剣先が突きつけられていた。喉を突かれる直前にぴたりと止められた剣先は、もし本物だったら確実の俺の喉を貫いていただろう。
こんなにも簡単に、再び懐に入り込まれるとは。しかもたった一撃で。こうもあっさりと、急所を突かれるなんて。
「……一本、だね」
「ま、参りました」
間違いなく俺の負けだ。油断していたという言い訳を抜いてもノア様は間違いなく強かった。俺とは異なる剣術を身につけている。
「ああ、久しぶりだったから緊張したなぁ」
「久しぶりと言いますが、今まで一度も手合わせはしていませんよ」
「こっちの世界ではね。ロングソードもサーベルも色々試したけど、やっぱり僕にはこれが一番使いやすい」
また、こっちの世界と言った。それならこちらではない、別の世界でこの剣術を身につけたというのだろうか。力で押していく俺の剣術とは違い、ノア様はすり足で重心をずらし、流れるように俺の弱点を的確に狙ってきた。まさに、無駄のない動きだ。
ロングソードは左手で剣先をコントロールする。逆に言うとそこが一番の弱点だ。また、力で押しつぶすような動きをするため重心は後ろから前に移動させる。だが、それにより隙が多くことも事実だ。
ノア様はそれらを全て理解した上で、わずかな動きだけで俺に勝った。
「す、すごい……すごいです、ノア様!」
「あはは、そんなに褒められると照れちゃうね」
「一体どこでそんな技を身につけられたのですか!」
「うーん……なんて言えばいいかな」
少し悩んだあと、ノア様は汗を拭いながら俯いた。そして小さな声で「君のいない世界で、だよ」と呟いた。
一体、どのように出てくるか。じっと様子を見ていると、ノア様は木刀を中段に構えた。切先がやや斜めに傾いているところを見ると、鉄の扉と呼ばれる構えだとすぐにわかった。しかし、足の開きが俺とは逆だ。左足を引き、踵がわずかに浮いている。重心がここまで前に来るとは。しかも体に無駄な力が入っていない。どこかリラックスしているかのようにも見える。
それなのにどこにも隙がない。少しでもこちらが動けば斬り込まれるような、そんなピンと張り詰めた緊張感がある。今までのノア様からは考えられない、研ぎ澄まされた雰囲気を嫌というほど感じた。
「どこからでもいいよ、ジョシュア」
「ノア様こそ。本気で向かってきてください」
「言われなくても」
その言葉を合図に、俺は引いていた右足を思い切り踏み出した。俺よりも身長の低いノア様は中段からの振り下ろしに弱いはずだ。俺の一撃を避けたところで下から切り上げる。そうすれば簡単に勝てると、そう思っていたのに。
切りつけた先に、ノア様の姿はなかった。
「な……っ!」
ノア様は音もなく俺の左側に動いていた。あ、と思う前に左手の甲を木刀で叩かれる。予想していなかった攻撃に思わず重心がブレた瞬間、喉元に木刀の剣先が突きつけられていた。喉を突かれる直前にぴたりと止められた剣先は、もし本物だったら確実の俺の喉を貫いていただろう。
こんなにも簡単に、再び懐に入り込まれるとは。しかもたった一撃で。こうもあっさりと、急所を突かれるなんて。
「……一本、だね」
「ま、参りました」
間違いなく俺の負けだ。油断していたという言い訳を抜いてもノア様は間違いなく強かった。俺とは異なる剣術を身につけている。
「ああ、久しぶりだったから緊張したなぁ」
「久しぶりと言いますが、今まで一度も手合わせはしていませんよ」
「こっちの世界ではね。ロングソードもサーベルも色々試したけど、やっぱり僕にはこれが一番使いやすい」
また、こっちの世界と言った。それならこちらではない、別の世界でこの剣術を身につけたというのだろうか。力で押していく俺の剣術とは違い、ノア様はすり足で重心をずらし、流れるように俺の弱点を的確に狙ってきた。まさに、無駄のない動きだ。
ロングソードは左手で剣先をコントロールする。逆に言うとそこが一番の弱点だ。また、力で押しつぶすような動きをするため重心は後ろから前に移動させる。だが、それにより隙が多くことも事実だ。
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「す、すごい……すごいです、ノア様!」
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「一体どこでそんな技を身につけられたのですか!」
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少し悩んだあと、ノア様は汗を拭いながら俯いた。そして小さな声で「君のいない世界で、だよ」と呟いた。
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