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2章
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それから俺とノア様は毎日手合わせを行った。ノア様の剣術は「剣道」と言うそうで、昔から伝えられているものらしい。俺とは違い、すり足で重心を移動させ、斬撃を受けてはうまく流していく。相手に隙が生まれた瞬間、的確に相手の弱点を切り裂いていく。ヤコフ爺さんに頼んで作ってもらった武器は、その動きに適したものになっているのだとか。
なるほど、裏刃と表刃で色が違っていたのはそのためか。焼き入れの際に何か手を加えて、受ける裏刃はしなやかに、切り込む表刃は硬く鋭く仕上げられている。こんなもの、フィカリア王国のどこを探しても見つけることはできない。
「とは言っても、馬上ではまた戦い方が変わるんだけどね」
「そちらの訓練はよろしいのですか?」
「うん。そうなる前に終わらせる。そのためにみんな訓練してるしね」
手合わせの後、お互い汗を拭いながら訓練場に目を向けた。俺たちがいる中庭から訓練場は直線上にあるため、少し視線を向けるだけですぐに様子を知ることができる。国王軍と聖騎士団が攻め込んでくるまで、残り一週間を切った。兵士たちは朝から晩まで陣形移動の訓練をしている。
ベルリアンの地図を用いて動きを確認し、実際に鎧を身につけて動いてみる。想像以上に重たい鎧を着込んで動くのは慣れるまで苦労を要する。完全包囲のためには少しでも早く移動し、周囲を囲むことが大切だ。そのためにも実践を想定して何度も移動を繰り返していた。
「僕が刀を使うのは最後の手段だ」
「はい。そうならないためにも、全力でお守りします」
「心強いね、ジョシュアがそう言ってくれると」
動き回ったため汗が滴るのか、ノア様は何度も顔を拭っている。どこか疲れが滲んでいるように見えるのは、俺の見間違いではないだろう。それもそのはず、今までもかなり無理をしていたのだ。加えて今は実践形式の手合わせを何時間もしているのだ。
それに、国王軍と聖騎士団が攻めてくるという事実は、俺たちの気持ちを不安定にさせる。不安と、疲労と、心配を吹き飛ばすかのようにノア様は素振りを何度も繰り返していた。
このままだと敵が来る前にノア様が倒れてしまうかもしれない。そうなったら作戦が台無しだ。少しでも疲れを取ってあげたいと思い、ノア様の頬に手を伸ばした。
「ん? 何、どうしたの?」
「いえ。お疲れのようでしたので、光魔法を使おうと思いまして」
今までもこうやって何度も光魔法を使ってきた。大抵はなんて事のない理由だったけれど、今は正しく使うべきタイミングだろう。そう思って指先に魔力を貯めたが。
ノア様は、なぜか顔色を変えて後に飛び退いた。
「だめ! 光魔法は使わないで!」
「な、なぜですか? どう考えてもノア様はお疲れです、光魔法で癒した方がいいではありませんか」
「そんなことに光魔法を使わないで!」
いやいや、どの口が言っているんですか。今まで俺が同じことを貴方に言ってきましたよね? その度にひどい癇癪を起こしていたのはどこの誰か覚えていますか? そもそも、光魔法って傷を癒すためにあるんですよ、今使わないで、いつ使うんですか。
などなど、言葉は溢れてくるが必死に飲み込んでおく。主人に反論するなんて従者がしていいことではない。
「とにかく、ジョシュアは光魔法を使わないで、絶対に」
「しかし、いざという時があるかもしれません」
「それでも、絶対に、だめ!」
「わ、わかりました! わかりましたから」
今までにない強い否定に驚いてしまい、思わず頷いてしまった。しかしなぜこうも光魔法を使うなと言うのだろうか。今までは使わなくていいことにまで使わせていたのに。
どうにも腑に落ちないが、ここはとりあえず納得しておくことにする。しかし、もしもノア様が怪我を負った時は。その時はどんなに怒られても光魔法を使おう。俺が守るべきはノア様なんだ。何があっても、どんなに小さなことでも、傷つけてはいけない。
決戦まであと一週間。滋養のある食事を多めに食べさせようと思い、頭の中で献立を考えていた。
なるほど、裏刃と表刃で色が違っていたのはそのためか。焼き入れの際に何か手を加えて、受ける裏刃はしなやかに、切り込む表刃は硬く鋭く仕上げられている。こんなもの、フィカリア王国のどこを探しても見つけることはできない。
「とは言っても、馬上ではまた戦い方が変わるんだけどね」
「そちらの訓練はよろしいのですか?」
「うん。そうなる前に終わらせる。そのためにみんな訓練してるしね」
手合わせの後、お互い汗を拭いながら訓練場に目を向けた。俺たちがいる中庭から訓練場は直線上にあるため、少し視線を向けるだけですぐに様子を知ることができる。国王軍と聖騎士団が攻め込んでくるまで、残り一週間を切った。兵士たちは朝から晩まで陣形移動の訓練をしている。
ベルリアンの地図を用いて動きを確認し、実際に鎧を身につけて動いてみる。想像以上に重たい鎧を着込んで動くのは慣れるまで苦労を要する。完全包囲のためには少しでも早く移動し、周囲を囲むことが大切だ。そのためにも実践を想定して何度も移動を繰り返していた。
「僕が刀を使うのは最後の手段だ」
「はい。そうならないためにも、全力でお守りします」
「心強いね、ジョシュアがそう言ってくれると」
動き回ったため汗が滴るのか、ノア様は何度も顔を拭っている。どこか疲れが滲んでいるように見えるのは、俺の見間違いではないだろう。それもそのはず、今までもかなり無理をしていたのだ。加えて今は実践形式の手合わせを何時間もしているのだ。
それに、国王軍と聖騎士団が攻めてくるという事実は、俺たちの気持ちを不安定にさせる。不安と、疲労と、心配を吹き飛ばすかのようにノア様は素振りを何度も繰り返していた。
このままだと敵が来る前にノア様が倒れてしまうかもしれない。そうなったら作戦が台無しだ。少しでも疲れを取ってあげたいと思い、ノア様の頬に手を伸ばした。
「ん? 何、どうしたの?」
「いえ。お疲れのようでしたので、光魔法を使おうと思いまして」
今までもこうやって何度も光魔法を使ってきた。大抵はなんて事のない理由だったけれど、今は正しく使うべきタイミングだろう。そう思って指先に魔力を貯めたが。
ノア様は、なぜか顔色を変えて後に飛び退いた。
「だめ! 光魔法は使わないで!」
「な、なぜですか? どう考えてもノア様はお疲れです、光魔法で癒した方がいいではありませんか」
「そんなことに光魔法を使わないで!」
いやいや、どの口が言っているんですか。今まで俺が同じことを貴方に言ってきましたよね? その度にひどい癇癪を起こしていたのはどこの誰か覚えていますか? そもそも、光魔法って傷を癒すためにあるんですよ、今使わないで、いつ使うんですか。
などなど、言葉は溢れてくるが必死に飲み込んでおく。主人に反論するなんて従者がしていいことではない。
「とにかく、ジョシュアは光魔法を使わないで、絶対に」
「しかし、いざという時があるかもしれません」
「それでも、絶対に、だめ!」
「わ、わかりました! わかりましたから」
今までにない強い否定に驚いてしまい、思わず頷いてしまった。しかしなぜこうも光魔法を使うなと言うのだろうか。今までは使わなくていいことにまで使わせていたのに。
どうにも腑に落ちないが、ここはとりあえず納得しておくことにする。しかし、もしもノア様が怪我を負った時は。その時はどんなに怒られても光魔法を使おう。俺が守るべきはノア様なんだ。何があっても、どんなに小さなことでも、傷つけてはいけない。
決戦まであと一週間。滋養のある食事を多めに食べさせようと思い、頭の中で献立を考えていた。
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