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私の一日は、あの子の呼び声で始まる。
柔らかくて温かい呼び声。
何年経っても変わることの無い、甘えるように蕩けた子供の声。私はいつまでこの呼び声で目を覚ますことができるだろう。
「しゅーう、おはよー」
「おはようございます、おみ」
「しゅう、おねぼうさん?」
「そうですね」
春眠暁を覚えず、と言いますからね。春はどうしても眠たいのです。そう言いながら、寝癖まみれの銀髪を撫でてやる。
幼い子供、おみがごろごろと喉を鳴らした。出会ってもう何年も経つけれど、見た目はほとんど変わらない。特に今は食料が手に入りにくいせいで満足に食べさせてやれない。
そうじゃなくても、おみは成長が遅いというのに。
「朝ごはんにしましょうね」
「おみ、おなかすいた」
「それで早く起きたのですか?」
「う、うみゅ……」
誤魔化すように頬をふにふにし始める。本当に、不思議な方だ。
「サツマイモがありましたね。またお粥になりますが、よろしいですか?」
「おみ、おいもすき」
「それはよかったです」
昨日も、一昨日も、お粥だった。米がなかなか手に入らないせいで、ひと握りの米粒に様々な物を混ぜてお粥にしている。
ここはまだ随分とましな方で、街は配給が追いついていないとも聞いた。小さいながら畑があるおかげで、ささやかながらも毎日三食の食事にありつけている。
「ああ、今日は天気がいいですね」
「ぽかぽかだと、しゅうも元気?」
「雨でも元気ですよ、おみ」
「んにゅ」
おずおずと抱きついてくる小さな体を抱きとめる。もうすっかりこの温かさが手に馴染んでいた。寒いよりも暖かい方が調子もいい。
でも、雨は避けられない。
どうやっても雲と雨は私の傍にある。逃げることはできないのだ。それを不運というかどうかは別として、私はこの幼い龍神を守らねばならなかった。
一九四五年の春は、この山にも穏やかに訪れていた。
柔らかくて温かい呼び声。
何年経っても変わることの無い、甘えるように蕩けた子供の声。私はいつまでこの呼び声で目を覚ますことができるだろう。
「しゅーう、おはよー」
「おはようございます、おみ」
「しゅう、おねぼうさん?」
「そうですね」
春眠暁を覚えず、と言いますからね。春はどうしても眠たいのです。そう言いながら、寝癖まみれの銀髪を撫でてやる。
幼い子供、おみがごろごろと喉を鳴らした。出会ってもう何年も経つけれど、見た目はほとんど変わらない。特に今は食料が手に入りにくいせいで満足に食べさせてやれない。
そうじゃなくても、おみは成長が遅いというのに。
「朝ごはんにしましょうね」
「おみ、おなかすいた」
「それで早く起きたのですか?」
「う、うみゅ……」
誤魔化すように頬をふにふにし始める。本当に、不思議な方だ。
「サツマイモがありましたね。またお粥になりますが、よろしいですか?」
「おみ、おいもすき」
「それはよかったです」
昨日も、一昨日も、お粥だった。米がなかなか手に入らないせいで、ひと握りの米粒に様々な物を混ぜてお粥にしている。
ここはまだ随分とましな方で、街は配給が追いついていないとも聞いた。小さいながら畑があるおかげで、ささやかながらも毎日三食の食事にありつけている。
「ああ、今日は天気がいいですね」
「ぽかぽかだと、しゅうも元気?」
「雨でも元気ですよ、おみ」
「んにゅ」
おずおずと抱きついてくる小さな体を抱きとめる。もうすっかりこの温かさが手に馴染んでいた。寒いよりも暖かい方が調子もいい。
でも、雨は避けられない。
どうやっても雲と雨は私の傍にある。逃げることはできないのだ。それを不運というかどうかは別として、私はこの幼い龍神を守らねばならなかった。
一九四五年の春は、この山にも穏やかに訪れていた。
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