おお勇者よ、封印を解くとは何事だ!?

半熟紳士

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第6話 タソックの街

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 タソックの街――いわゆる『冒険者の街』であり、僕が現在居を構えている街だ。

 周囲を森に囲まれているためか、モンスターの生存数が多く、それによる被害も多い。

 そいつらから身を守るために住民達が結成した警備隊が冒険者の始まりなんだそうな。

 そして、その冒険者達を支えるのが冒険者ギルドである。

 クエストの発行、初心者の装備の支給など、冒険者達の活動をバックアップしてくれる、僕達には欠かせない存在だ。

 で、現在。

 僕はギルドのカウンターにいた。

今回のクエストで討伐したモンスターを報告し、それに見合った報酬を受け取るためだ。

 目の前には、ギルド職員のシルさん(20代半ばでほんわか美人)が、いつもは猫のように細いめをくわっと見開き呆然――いや愕然としていた。

 今回のクエストで討伐したモンスターを報告し、それに見合った報酬を受け取るためだ。

 僕達冒険者のステータスやモンスターの討伐数などはすべて、タブレット端末のようなクリスタル『メモリア』に記録されている。

 このメモリアは冒険者の間では主に『スマホ』と呼ばれているんだけど、誰が呼び始めたのかは大体分かる。

 恐らく、僕より早く転生した転生者の誰かだろう。ファンタジーの世界観ぶちこわしなので、僕は頑なにメモリアと呼んでいるけどね。

 そして今、そのメモリアをシルさん似見せているわけなのだが、彼女はそこに表示されている内容に茫然自失中である。

「ええと、見間違いかな・・・・・・蛍君。いつも通りラビッタ3匹だったっけ?」

「いえ、いつものラビッタではなくサーモン・ハンター3頭です。」

 気まずいが、そう答えるしか無い。まさか、僕の隣にいる女の子がぶっ倒しましたなんて言えるはずがない。

「いやいやいやいや、蛍君。君が転生者だってことは把握しているよ? でも君、そこまで強かったっけ?」

 ナイナイ、と手を振るシルさん。

 ダブルの意味で胸に刺さる言葉だ。

 彼女の言うとおり、サーモン・ハンターを倒したのは僕じゃない。隣で、ギルドの内装を興味深そうに見回しているエアリだ。

 それなのに、なぜ僕のメモリアに記録されているかというと、これまたエアリの力のひとつで、『これくらいなら干渉できるわい』と、自分のメモリアの討伐情報を、僕のメモリアを移した・・・・・・と言うわけだ。

「ま、まあメモリアの偽装は無理だろうし、本当のことなのかな・・・・・・」

 残念、僕の隣のヤツができました。

「・・・・・・うーん、でも蛍君は腐っても転生者だし・・・・・・」

 悩んでいるシルさんの姿はとても可愛らしいのだけれど、たまにその口からとんでもねー毒舌がぶっ飛んでくることがあるので油断ならない。

 が、そのギャップがたまらんと一部の筋の冒険者からは大人気だ。

 僕は特に関係ないけどね。偶然空いてただけだからね。

「うん? 小娘よ。蛍はそこまで弱いのか?」

「こ、小娘・・・・・・!? え、えっと蛍君、この子は・・・・・・?」

 ひょっこりとカウンターに顔を出したエアリに、シルさんはかなり驚いた様子だった。

「あ、えーっと、森で迷子になっていたのをたまたま助けたんですよ。」

 あらかじめ決めていた設定をシルさんに説明した。

 正確には森の洞窟で封印されていたのを助けたんだけど、まあ言えるはずもないわな。

「うむ、そう言うことじゃ。で、まだ質問に答えて貰っていないのじゃが。」

「え? ああ蛍君が他の転生者の足下にも及ばないってことかな?」

「う、ぐ、そ、そうです・・・・・・」

 畜生否定できねー!

「蛍君は確かに転生者なんだけど、みんなが持っているような『ギフト』を持っていなかったんだよ。だからちまたでは『最弱の転生者』ってもっぱらの評判なの。」

「僕そんな二つ名ついてたんですか!?」

 バン、とカウンターを叩いた。

 全くの初耳だぞそれ!

「う、うん他には『ポーション中毒者』とか『逃げ足の蛍』とか・・・・・・」

 うわあああああああああああああ!

「おいおい、容赦なさすぎじゃろう小娘。蛍が涙目になっておるぞ?」

「え? あ、ごめんね蛍君! みんな面白がって付けてるだけで悪意がある人は居ないと思うから!」

 それが一番タチが悪いんだよ! 悪意があるよりもさあ!

「それで・・・・・・えーっと君の名前は?」

 僕からスッと視線を外して、シルさんはエアリに名前を聞いた。

「エアリじゃ。」

 ぬふん、とドヤるエアリ。

 ・・・・・・こいつ、本当に隠す気あるのか?

 こいつの案を飲んだ僕だが、いざ決行するとなると不安になってきた。

「うん、エアリちゃんね・・・・・・エアリちゃん!?」

 がたっと椅子から身を乗り出したシルさん。

 まあそうなりますよねー

「その通り、エアリちゃんじゃ。」

 マンガだったら、バックに『どーん!』とでも書いてありそうだ。

「え? あれ? 魔王? 魔王のエアリーズ・ソルレヴェンテ? あれ、でも・・・・・・うん、角も無いし、翼も無いから・・・・・・うん、ただのそっくりさんだよね。」

 うそーん!

 ちらっとエアリは僕の方を見た。

『どうじゃ、妾の言ったとおりじゃたろう?』と言いたげな様子だったのがすこしムカつく。

「ああそうそう、蛍がサーモン共をぶっ倒したのは、妾のこの目がしっかりと見届けたぞ。妾を守りながらサーモン共を討伐する姿は、まさに勇者じゃったわい。」

 オイイイイイイイイイイイ!

 なにねつ造してんだこいつ!

 おいやめてくれ、変な誤解を招くから!

「そうなの!?」

「そうなのじゃそうなのじゃ。」

 ニヤニヤ笑いながら、さらにいらん脚色を加える魔王エアリ。

「うーん、エアリちゃんが言うならそうなのかもね。」

 おい、なんで1年の付き合いである僕よりも会って5分経っているか怪しいエアリの方が信頼が厚いんだよ。

 これが、魔王のカリスマってヤツなのだろうか。

「でもすごいなあ蛍君。ひとりでサーモン・ハンター3頭なんて、そんな無茶苦茶したのはフレッサちゃん以来だよ?」

――フレッサ・フェルト

 その名前に、僕は憂鬱な気分になった。

 そうだ、あいつのことを忘れていた・・・・・・

「あのー・・・・・・このことあいつに黙ってくれません?」

 本気で頼み込んだ。

 こんなイカサマがあいつの耳に入ったら、ますます面倒なことになる。

 さらにこの真相を知られたら・・・・・・うん、絶対に殺されるな。

「あー・・・・・・うん分かったよ。内緒にしておくね。」

 僕の言わんとすることをシルさんは理解してくれたらしく、ぽんと胸を叩いた。

「でもあれなのかな? 女の子を守ると男の子は強くなるって言うけど、蛍君もそのクチなのかもね。はい、これは3匹分の報酬。」

「そんな、物語の主人公じゃないんですから・・・・・・」

 苦笑しながら、金貨を受け取る。

 全部で28万マニー

 サーモン・ハンターはその危険度の高さから、報酬も高額だ。

 1頭につき10万マニー×3頭

 保険料諸々さっ引いて、この28万マニーになるんだけど・・・・・・

 基本的に僕は危険度の低いクエストを好むので、報酬は低い。

 1クエスト1万マニー前後だ。

 そして、目の前にあるのは、その20倍以上の報酬。

 ぶっちゃけ、1ヶ月に稼ぐ金を軽々越えてしまった。

 この金があれば、ランクC、いやBのダガーが買えることができる。

 でもこれは僕の稼いだ金では無いんだよな・・・・・・

「それで、エアリちゃんはどうするの? ギルドで預かることもできるけど。」

「それは不要じゃ。しばらくは蛍のもとで世話になるつもりじゃからの。」

「ふーん。まあチキンの蛍君なら大丈夫かな。」

「あのサラッと人をおとしめるの止めてくれません?」

 しかも朗らかな笑顔で。

 泣いちゃうぞもう。



 報酬を貰い、冒険者ギルドがら出た僕達は、宿屋へ向かうことにした。

 エアリの部屋を借りたり、今後の方針について、いろいろ話し合う必要もあるしな。

「ふむ、さすが冒険者の街、なかなか活気がある所じゃの。」

 キョロキョロと街の喧騒を眺めるエアリ。

 魔族であるこいつにとって、人族の街で生活するというのはなかなか新鮮な体験なのかもしれない。

「迷子にならないように気をつけろよ? ここ人多いし、ガラの悪いヤツも多いから。」

「子供扱いされるとは心外じゃのう・・・・・・だが心配してくれることは素直に嬉しいぞ。うむ、誉めて使わす。」

「はいはい。」



「――オイ、テメエ。」

 そう忠告した矢先、僕達の前に立ち塞がるヤツがいた。

「ぬ?」

「げ・・・・・・」

 褐色の肌に赤い髪、拳闘士特有の露出度の高い戦闘衣。

 そして、いつも不機嫌そうなツリ目。

 まさにガラの悪いヤツの代表選手のようなヤツだ。

「や、やあフェルト・・・・・・」

 引きつった笑みを浮かべながら手を上げた。

 ・・・・・・フレッサ・フェルト

 タソックの街の最強冒険者の1人であり、僕が最も苦手とする冒険者である。
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