おお勇者よ、封印を解くとは何事だ!?

半熟紳士

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第5話 侵入計画?

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「ぬう。」

「むう。」

 タソックの街の入り口から10メートル離れた場所で、僕とエアリは腕を組んでいる。

 サーモン・ハンターは倒されたので、僕のクエストは終了と言うことになった。

 倒したのはエアリなのだけれど、僕がエアリの封印を解いてくれた礼とかなんとかで、僕の手柄と言うことになった。

 その心遣いはありがたいんだけど、問題はその後だ。

 魔王とは言え、エアリも生き物である以上、衣食住が無ければ生きていけない。

 そんなわけで、僕のホームグラウンドにしているタソックの街に連れて行くことにしたんだけど、ここに来て問題が発生した。

 原因は言うまでもなく、エアリ本人である。

 この世界ではエアリはかなりの有名人らしく(魔王だから当たり前か)、このままで行ったら一発でバレてしまう。

 怪しまれないかつ、確実に街に入れない方法はないものか・・・・・・と今2人で知恵を絞っている真っ最中、と言うわけだ。

「まずはやっぱり、その羽と角と尻尾だよな。」

「そうじゃのう。人族はまずコレは付いて無いじゃろうしな。」

 先っぽが尖って『THE・悪魔』みたいな形の尻尾を指に絡ませ、エアリは頷く。

「それってさ仕舞えるの?」

「まあ出来んことはないがの。もぞもぞ・・・・・・はいおしまいじゃ。」

 しゅるるると、角などのオプションが掃除機のコードのように収納された。

 あれ途中で引っかかって、結局手で戻すコトになるんだよなー・・・・・・ところで、

「・・・・・・さっきのもぞもぞってのは必要なのか?」

「必要じゃ。」

 必要なのか。                    

「これで、第一段階はクリアしたけど・・・・・・次はその服装だよな。」

「ああ、これは問題ないぞ。この覇王具トレークハイトは、なんかよく分からない力で別の服に見せることが出来るからな。」

「なんかよく分からない力?」

「妾が作ったわけじゃないからのー おまけにこの制作者はもうこの世にはおらぬから、詳しい仕組みは闇の中・・・・・・と言うわけじゃ。」

 取扱説明書とか持ってなかったのか?

 それにしても適当すぎるな。

「じゃ、じゃあこれで第2段階クリア、と。・・・・・・あとは偽名だよね。本明を名乗るわけにもいかないし。」

「ん? エアリでよかろう。」

 事も無げに、エアリは言う。

「いや、さすがにそれは分かりやすすぎるでしょ。もっとよく考えた方が良いと思うけど。」

「イヤじゃ。エアリじゃなきゃ妾は泣くぞ。」

「どんなこだわりだよ!?」

 どうでも良いことにこだわるなあこの魔王は!

「いやいや蛍、相手の側に立って考えてみるのじゃ。魔王エアリーズ・ソルレヴェンテそっくりの美女が現れた。おまけにその見目麗しい女はエアリと名乗った・・・・・・ここで、相手はどう思う?」

「え? そりゃあそいつが魔王だって・・・・・・」

「ばかもーん!」

 とっさに避けたので、エアリの拳はむなしく宙を切った。

「と、とにかくじゃ。普通はそうは絶対に思わん。あまりにもスケスケ過ぎて、逆に怪しまれないのじゃ。」

 狙いがはずれて、気まずそうなエアリの説明に、なるほどと頷いた。

 スケスケではなく明け透けじゃ無いかというツッコミはさておくとして。

「なるほど・・・・・・変に取り繕うよりも堂々としていたほうがバレにくいってことか。」

「そう言うことじゃ、1回この姿のまま人族のパーティーに行ったことがあったが、特になにも言われなかったぞ?」

「それ結構危ない綱渡りだよね。バレたらもうアウトじゃん。」

 臣下の皆さんは誰もこいつを止めなかったのか。

 いや、止められなかったのか?

「ははは、若気の至りってやつじゃ。今も若いがの、今も若いがの!」

2回言ったのが気になったけど、それを言及したらあとが怖そうなのでやめた。

「結構不安だけど、これで第4段階もクリア、か。」

「よし、全部オーケーじゃな。さっさと参るぞ。」

「参らない。」

 ぐいっと、エアリの襟を掴む。

「ぐえっ 何するんじゃ!」

 仕返しとばかりに、両手で僕の首を締め上げてきた。

「ぐええええっギブギブギブ! ちょっと落ち着こうか! まだもう1段階クリアしてないから!」

「もう1段階? 他に何かあるのか? 見た目も服装も名前も全部クリアしたでは無いか。」

 エアリは首から手を離し、指を折りながら確認をする。

「金だよ、金。エアリお金持ってる?」

 ピシリ、とエアリは固まった。

「お金・・・・・・と言うのはアレじゃな。近山の金さんのことじゃろう?」

「違う。」

 て言うかなんだ近山の金さんって。

 そこは遠山の金さんだろ。

「じゃああれじゃ、千式っちゅーロボット。」

「一桁多い。」

 て言うか、なんなんだこの世界。なんでそんなもんが伝わってるんだよ。

 転生者が輸入(?)したのか・・・・・・?

 微妙に違うけど。

「じゃ、じゃあえーっとえーっと。」

「ないのね。分かったよ。」

 聞いた僕がバカでした。反省します。

「しょ、しょうがないじゃろう! 妾は封印されとったんじゃもん! 戦いの時は財布は持たない派なんじゃ!」

「そんな派閥があるのか・・・・・・」

 世界一どうでもいい知識を得た。

「・・・・・・は、そうじゃ。蛍、金くれ。王が金を持っていないときになんとかするのも、臣下の役目じゃ。」

「随分とどストレートだね・・・・・・まあ最初からあげるつもりだったけどさ。」  

エアリの臣下は、本当に苦労したんだろうな・・・・・・

 実を言うと、僕も今懐が寂しいのだが、ギルドに行けば、サーモン・ハンター討伐の報酬が入るし、おまけにもう2匹倒したので、追加報酬も期待できる。

 元々、エアリが倒したもんだしね。あげないと僕が罪悪感に苛まれることになるだろうし。

「そうか! 誉めて使わすぞ。」

「ありがたき幸せで御座います、魔王様。」

 冗談めかして、片膝を突いた。

「うむうむ。くるしゅーない。」

 エアリは満足そうに頷くと、僕の頭に手を置いた。

「よしよし。」

そして撫でた。

 柔らかく、暖かい感触が髪を通して伝わってくる。

 うわあ・・・・・・

「うん? どうした蛍。」

「い、いや、頭撫でられるの久しぶりだなあって思ってさ。」

 恐らく幼稚園以来だ。

 この歳で撫でられるというのは少し恥ずかしい・・・・・・

「うん? どうした蛍。」

「い、いや、この歳になって頭を撫でられるってのは恥ずかしいなって、ちょっと思ってさ。」

 エアリは、はてと首をかしげた。

「目上の者が目下の者の頭を撫でるのは普通のことなのじゃが・・・・・・嫌じゃったらやめるぞ?」

「いや、嫌じゃない。」

 逆に、かなり良い。

 結局、この後5分くらい撫でて貰った。

 魔王に撫でられたんだし、少しは何か御利益があるかもな。
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