我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

羽瀬川璃紗

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148 毒と猛毒

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 前回、社長の娘の悪事を告発した、話の続き。

 引き続き業務にあたっていたタカコだが、処分後から目に見えて社内の評判は落ちていった。
 タカコ自身も仕事に嫌気がさしたのか、取り組みの姿勢は次第に悪くなっていた。

「甘やかされて育ったから、叱られた経験がないんだよ。だから1度の叱責で不貞腐れてるんだね。子供みたい」

「こないだ作成した書類の不備を注意されたら『そんなにあたしの作ったやつが嫌なら、あたしを解雇して新しい人雇って作らせたらいいじゃん!』って、臍曲げて泣いたらしいよ」

 告発に対する罪悪感は相変わらず無かったが、業務停滞に対する罪悪感を感じ始めた頃、タカコは自ら退職を願い出た。

「嫉妬って怖いね。親の仕事とか、生まれ育った環境とか、何ならあたしの『サッパリした裏表の無い性格』とか。何がきっかけで目をつけられるか分からないからね」

 不正を告発された理由を『嫉妬』と結論づけた『粘着質な性格』のタカコは、そう言い残し会社を去った。それでも、不正は不正なので私に罪悪感は芽生えなかった。


 タカコが退職して数日後、私はこんな夢を見た。

 夜、自宅に電話がかかってきた。相手は性別不明の嗄れた声をしていた。

『今からお前んちに行ってやる。覚悟しろぉぉぉ、後悔しろぉぉぉ』

『来れるもんなら来れば?』

 私はぶっきらぼうに答え電話を切った。居間に家族みんなで待機するも、何の沙汰も無い。

『来ないね、逃げたんじゃね?』

『結局その程度なんだよ。怖がる必要も無い』

 家族は口々に言い、私は席を立つ。勝手口のドアを開け、私は暗闇を凝視する。
 そこには実際に無い謎の遊歩道があった。外灯も無い漆黒の闇の中、車椅子の人や着物姿の人など、多くの人々が行き交っていた。

(へえ、意外に多いな。それで、あの人は何処に居るんだろ)

 こちらを向いて、立ち止まってる人が1人。小柄な女性に見えた。女性はニヤニヤ笑ってこっちを見ているようだが、その距離は遠く人相もよく分からない。

(あれかな。でもこっち来るわけじゃないのか。何したいんだ、アレ)

 暗闇の中、こっちを見て笑う女は気持ちの良いものでは無いが、他にも沢山の人が行き交ってるし怖くない。私は一瞥してドアを閉めた。

 夢から覚めた私は、あの女性はタカコの亡くなった母親なのではと思った。

 私は故人に恨まれてしまったのか。だが、タカコ自身にも非がある。反省と再出発のチャンスを捨てたのは、他ならず彼女の意志だ。

 タカコの母親は、私へ罪悪感を抱かせるべく威圧や恐怖感を与えたくて夢に出たのに、タカコの非のせいで不完全燃焼に終わったのか。
 そして、2回も夢に出て来たにも関わらず、太々しく自分の主義主張を曲げない鬼の様な私。


 アクの強い故人より、アクが強いかもしれない私の話。

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