我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

羽瀬川璃紗

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111 学校の怪談・弐

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 怪談話の無かった小学校で起きた、不可解体験。あれは小学校3,4年くらいの頃。

 当時、クラスの席順とはまた違う別のグループを組んで、毎日清掃をしていた。担任教師の独断と偏見でメンバーが決まり、1班につき6~7人ほど、メンバー変えは学期ごと、みたいな感じだった。

 いま考えると『大の仲良し』や『犬猿の仲』で組む事はなかったので、お喋りや喧嘩で掃除が進まないことのないよう考慮し、工夫したのだろう。


 ある時のグループは、男子A、B、C、D、女子E、そして私の6人編成だった。
 教室掃除をしていた時のこと。黒板を水拭きしていた男子Aが声を上げた。

「おい、ちょっとこれ見ろよ」

 黒板を水拭きすると乾燥する時に、たまに書いてあった文字の跡がぼんやり浮き出てくるのだが、黒板の下部に、

≪ 霊 ≫

 という1文字が浮かんでいた。皆で集まった。

「『霊』って読めるよね?」

「今日、先生こんな字書いたっけ?」

「いや、こんな字は書いてないし、習ってもないぞ」

 私の記憶の限りでも、その日はその字を書いてなかった。その字はお手本の様に上手で、しかも黒板のかなり下にあった。
 黒板が乾いて文字が見えなくなったので、もう1度拭いたが、出て来る事はなかった。


 別の日。図工室の掃除をしていた時のこと。

「あれ? 昨日Bくんがゴミ捨てだったから、今日は?」

「今日はあたし」

 女子Eと言葉を交わすと、会話に被さるように一瞬だけ、女の小さな話し声が遠くから聞こえた。途端に廊下掃除をしていたBとCが、血相を変えて入って来た。

「ずっと話してたのお前らか?」

「ずっと話してない。ちょっとだけ。どうしたの?」

 BとCの話では、女がずっと話す声がしていたが、小さくて聞き取れないし、近くに女子の姿は無かったという。他の掃除班は終わらせていて、この階に居るのは私達だけ。

 Eと、同じ室内で掃除していたAは言った。

「あたし達、ゴミ捨ての確認しただけ。それ以外は喋ってない」

「うん。確かに話したの一瞬だけだったな」

 私とDも言った。

「私も一瞬だけ女の声聞こえた。他の教室からだと思った」

「俺も聞こえた。女子らが話す前から何か聞こえてたし、アレはこっちじゃない」

 青ざめた私達はゴミ捨てをサボり、先を争って逃げた。


 別の日、音楽室掃除の時。音楽室は珍しい型の防音で、出入口の分厚い扉には『車のハンドル』みたいな特殊な取っ手が付いていた。

 ある時、Aが悪ふざけをした。

「おい、あいつ、締め出そうぜ」

 B以外の全員が音楽室に閉じこもり、Bを挑発した。数分間廊下にBを締め出した後、外に出ようとしたら、出られなくなってしまった。ハンドルは動くのに、扉が開かない。

 Bも事態の異変に気付いたらしく、何事かと扉の窓から覗き込んでくる。身振り手振りで『押すから引っ張れ』と指示し、開けようとするも扉は開かない。

(ヤバいな、これ怒られるかも…)

 私は恐怖感よりも、食らうかも知れない大目玉の心配をしていた。
 数分押したり引いたりしたがダメで、全員が手を放して思案していると、扉は不意に開いた。

「何で? 何やった?」

「分かんない。取りあえず出るぞ」

 後にさり気なく先生に訊いてみたが、強く締めるなどで強制ロックがかかるみたいな機能は無いとのことだった。
 その後、音楽室掃除は扉を開け放したままするのが、我々の暗黙のルールとなった。


 当時から、私にはある考えがよぎっていた。『あの不可解は≪場所≫ではなく、≪メンバー≫が関係しているのではないか』。 新学期にメンバーチェンジ後、同じ場所を掃除しても、不可解は起こらなかったからだ。

 あの中には、私を含め霊感の強い人は居なかった。だが、1人1人は『1』の力しかないのに、一定の基準で揃うと『ⅹ』の力が発動する、みたいな化学反応が起こるのではないか。

 学校では教わらない、化学反応があったかもしれない話。


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