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120 意地悪
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私が子供の頃の話。
小学5年の頃、1学年上の男子:トシロウに何故か目を付けられ、意地悪をされた事があった。
きっかけも何も、学年も住まう町内も違っていて接点が無く、意地悪をされる理由は不明だった。
トシロウはいつも男子の友人らとつるんでいて、休み時間などに校内で私を見かけると、わざわざ近づいてきて、背負っているランドセルにチョップを食らわせたり、すれ違いざまにぶつかったり、そんな事をしてきた。
相手は身体の大きい男子なので私は恐怖に震え、ただただ嵐が過ぎ去るのをじっと耐えるばかりであった。
意地悪の日々は、2ヶ月少々で幕を閉じた。トシロウら6年生が卒業を迎えたのだ。私は晴れ晴れとした気分で、小学生最後の1年を過ごした。
迎えた中学校生活。トシロウと同じ中学だが、生徒数も学校の規模も小学校の3倍近くあったので、出くわす事もなく平和に過ごす事が出来た。
入学式から1か月くらいのこと。母にこんな事を言われた。
「今日おばあちゃんから電話で、あんたに関する変な夢見たって言われたよ」
「え、何それ。どんな夢?」
「ばあちゃんが中学校に居て、あんたを見かけたから話しかけようとしたんだって。そしたら近づいてきた男子生徒に、殺虫スプレーをいきなり吹きかけられて、苦しくて起きたんだって。『男子生徒に生霊を送られてるよ!』って、心配してた」
母方祖母は信心深く、オカルトも信じる人だ。だが、私には心当たりが無い。
「男子と基本話さないからなぁ。女子はグループ間の揉め事が多少あるから、覚えがあるっちゃあるけど」
「でも男子だって言ってたよ」
覚えの無かった私は、首を傾げるばかりだった。もしやこれから起こるかも、と注意して過ごしたが、特に何も起こらぬまま夏休みに突入した。
夏休み中のある時、母が喪服を着て出かけようとしていた。
「誰か死んだの?」
「ジロウくんのお父さんが亡くなったんだって。お線香つけてくる」
ジロウは妹の同級生だ。そして、トシロウはその兄である。葬儀から戻った母は、帰宅した父にも話した。
「癌だったらしいよ。お子さん3人も残して…」
「あー、だから子供達、弟さんがボーリング連れて行ってたのか。『何で父ちゃん居ないんだろう?』って思ったよ」
私は話に割り込んだ。
「それっていつ見かけたの?」
「お前見てなかったか? 一昨年の夏休みに家族でボーリング行った時だよ。同じ年の冬休みの時に行った時も居たよ」
私は気づいてなかったが、2年前にトシロウ達と休日にニアミスした事が2回あったという。母も言った。
「2年前から入退院繰り返していて、子供にも『もう永くないから、覚悟しておくように』って前々から言ってたんだって。不憫だね」
あなたがもし子供で、親の余命が幾ばくも無い事を知らされたとする。
幼さ故に事の重大さが分からなかったとしても、闘病中の親と自分は一緒に居られないのに、見かけた知人が親と楽しそうに過ごしてるのを目の当りにしたら、どういう気持ちを抱くだろう。
羨望、行き場のない不平等に対する悲しみ、怒りの矛先は何へ向くのか。祖母は彼のその気持ちに、夢で気づいたのか。
その後、私の人生にトシロウが関わる事はないまま、現在に至る。
子供の時に悲しい別れを経験したトシロウも、立派な大人となり家庭を築いているだろう。
嫌な目には遭わされたが、彼が亡き父親から沢山愛情を注がれた様に、自分の子に愛情を注いでいる事を私は願う。
小学5年の頃、1学年上の男子:トシロウに何故か目を付けられ、意地悪をされた事があった。
きっかけも何も、学年も住まう町内も違っていて接点が無く、意地悪をされる理由は不明だった。
トシロウはいつも男子の友人らとつるんでいて、休み時間などに校内で私を見かけると、わざわざ近づいてきて、背負っているランドセルにチョップを食らわせたり、すれ違いざまにぶつかったり、そんな事をしてきた。
相手は身体の大きい男子なので私は恐怖に震え、ただただ嵐が過ぎ去るのをじっと耐えるばかりであった。
意地悪の日々は、2ヶ月少々で幕を閉じた。トシロウら6年生が卒業を迎えたのだ。私は晴れ晴れとした気分で、小学生最後の1年を過ごした。
迎えた中学校生活。トシロウと同じ中学だが、生徒数も学校の規模も小学校の3倍近くあったので、出くわす事もなく平和に過ごす事が出来た。
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「え、何それ。どんな夢?」
「ばあちゃんが中学校に居て、あんたを見かけたから話しかけようとしたんだって。そしたら近づいてきた男子生徒に、殺虫スプレーをいきなり吹きかけられて、苦しくて起きたんだって。『男子生徒に生霊を送られてるよ!』って、心配してた」
母方祖母は信心深く、オカルトも信じる人だ。だが、私には心当たりが無い。
「男子と基本話さないからなぁ。女子はグループ間の揉め事が多少あるから、覚えがあるっちゃあるけど」
「でも男子だって言ってたよ」
覚えの無かった私は、首を傾げるばかりだった。もしやこれから起こるかも、と注意して過ごしたが、特に何も起こらぬまま夏休みに突入した。
夏休み中のある時、母が喪服を着て出かけようとしていた。
「誰か死んだの?」
「ジロウくんのお父さんが亡くなったんだって。お線香つけてくる」
ジロウは妹の同級生だ。そして、トシロウはその兄である。葬儀から戻った母は、帰宅した父にも話した。
「癌だったらしいよ。お子さん3人も残して…」
「あー、だから子供達、弟さんがボーリング連れて行ってたのか。『何で父ちゃん居ないんだろう?』って思ったよ」
私は話に割り込んだ。
「それっていつ見かけたの?」
「お前見てなかったか? 一昨年の夏休みに家族でボーリング行った時だよ。同じ年の冬休みの時に行った時も居たよ」
私は気づいてなかったが、2年前にトシロウ達と休日にニアミスした事が2回あったという。母も言った。
「2年前から入退院繰り返していて、子供にも『もう永くないから、覚悟しておくように』って前々から言ってたんだって。不憫だね」
あなたがもし子供で、親の余命が幾ばくも無い事を知らされたとする。
幼さ故に事の重大さが分からなかったとしても、闘病中の親と自分は一緒に居られないのに、見かけた知人が親と楽しそうに過ごしてるのを目の当りにしたら、どういう気持ちを抱くだろう。
羨望、行き場のない不平等に対する悲しみ、怒りの矛先は何へ向くのか。祖母は彼のその気持ちに、夢で気づいたのか。
その後、私の人生にトシロウが関わる事はないまま、現在に至る。
子供の時に悲しい別れを経験したトシロウも、立派な大人となり家庭を築いているだろう。
嫌な目には遭わされたが、彼が亡き父親から沢山愛情を注がれた様に、自分の子に愛情を注いでいる事を私は願う。
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