我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

羽瀬川璃紗

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133 祖母と大入道と私と絵

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 祖母と家と私の夢と、娘の描いた絵の話。


 母方の祖母宅は、大層苦労して手に入れたものだったという。
 元々は借家だったが、偏屈だった大家に祖父の実直さが認められ、周辺にあった小さな畑を含め、破格の値段で売ってもらったらしい。

 当時は『あの爺さんからよく買えたなあ』と周囲に感心され、祖母は鼻高々。そして、認知症になった祖母は、その成功体験が悪い方に作用し、強く執着するようになった。

 祖父を亡くし身体が不自由になっても、頑なに施設に入る事を拒否した理由は、『不在中に家を乗っ取られないため』。
 それは、訪問者だけでなく実娘である母や伯母、他の親族にも適用された。良かれと思い家の掃除をすれば、めちゃめちゃ怒られた。それさえ許可されないのだ。


 前置きはこのくらいで、ある時、私はこんな夢を見た。


 母方祖母宅の玄関の戸を、母と共に押さえていた。玄関から無理矢理侵入して来る、謎の軍団がいたのだ。

『嫌だ!入るな!』

 ふと見ると、壊れた扉上部の窓から、謎の巨人(大入道?)が母を見下ろしていた。

『○○(祖母の名)の娘だな?』

(ヤバい!母さんの素性がバレてる!)
 バレたら何をされるか分からないと焦った私は、声を上げた。

『違うよ!!あたしのお母さんだよ!』

『じゃあ、○○の娘じゃないか』

 大入道は不敵に笑うと、割れた窓から木の幹みたいな腕を差し込んできた。
 母を守るべく、私は大入道の腕を掴み返し叫んだ。

『違うって言ってんだろぉぉぉ!!!』

 私は『夢チート(自分の夢を自分好みに操作する)』を用い、大入道を抱え込むと、パイルドライバー(プロレス技の一種)で頭を地面に叩きつけた。
 大入道は一撃で戦闘不能に陥った。

『無念…、無念…』

 大入道がうわ言を呟いてる時に、私は夢から覚めた。


 外はまだ暗く、寝直そうとしたその時。ガサッと音がした。

 飛び起きて辺りを窺うと、落ちたのは娘の描いた絵だった。だが、不可解なのだ。

 絵は娘用箪笥の上部(壁)に両面テープで貼ってあり、絵の手前には娘が園で作った工作が数点置いてあった。
 絵は落ちたのに、手前にある物は何一つ落ちたり動いてない。
 そして絵は、夫・私・娘の寝る場所の反対側(立たないと触れない)にあり、冷暖房・空調は電源オフ、窓も開けておらず、夫と娘は寝ていたのだ。

(何で落ちたんだろ?手前の物に当たらずに、どうやって落ちたんだろ?)


 朝食後、私は母に見た夢の話をメールで送った。母からはこんな返信が来た。

 実は先週、祖母を施設に入所させたという。認知症が進み、本人の意思表示や発語も極端に乏しくなったので、ケアマネージャーとも協議し入所に至った。
 もしかすると大入道は、祖母の奥底にある反抗心の現れだったのでは?と。

 祖母が納得せずとも、母や伯母の遠隔介護の大変さを間近で見ていたので、私はその知らせにホッとした。
 当事者にならないと分からない、綺麗事じゃ済まない現実が、介護には存在するのだ。


 だが、私は夢の解釈に、別の意味があったら嫌だなと思っている。

 祖母があの家から出るのを拒んだのは、『要石』的な力で家を守っているからだとしたら…。
 祖母無きあの家を狙う、目に見えない存在が居るとしたら…。
 侵入者が来る度、私や母が夢の中で戦う羽目になるとしたら…。


 夢の中のひと悶着で、絵が巻き添えを食らったかもしれない、お話。



(夢の中の戦いにより?落下した、娘の描いた絵。娘の名前部分のみ、加工済)
(私の隣のもじゃもじゃは何?って聞いたら、『秘密』とのこと。書き損じだと思うけど…)

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