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逆夢、に関する話。
第103話の夢占いに関する話でも少々触れたが、『夢に出て来た事柄と逆の出来事が現実で起こる』とされるものだ。
現実で入院してる人が、夢の中で全快して退院すると逆に入院の長期化や生死に関わる事態になったり、試験に落ちる夢を見ると逆に現実では合格するなど、一口に『逆になる』と言ってもモチーフや夢の状況では、判断が難しい場合もある。
正夢みたいに、夢で見た事がそっくりそのまま現実で起こる事もあるけれど、何故夢は『逆夢』になる事が多いのか。
母はある時、こんな夢を見た。
家の中にいると、どこからともなく赤子の泣き声が聞こえた。声は有り得ないことに、祖父(父の父)の部屋の中から聞こえていた。
(やだ、何で?)
母が部屋に入ると祖父の姿はなく、祖父の使っているベッドの上に、顔を真っ赤にして泣いている赤子が居た。赤子は低月齢児(新生児?)で何も身につけておらず、周囲に誰も居ない。異様な光景に、母は立ち竦んだという夢だったそうだ。
当時、2ヶ月前に大病から回復したばかりだった祖父が、風邪をひいていた。
2~3日ほど寝たり起きたりを繰り返していたが、母が夢を見た翌日辺りから、急に状態が悪化した。祖父は肺炎を起こし、2週間ほどで亡くなった。
『病に臥せる人の寝床に新生児(生の象徴?)が居る』という夢は、逆夢になった。
それから30年近く経ち、母はまた夢を見た。
夢の中で母は、伯母(母の姉)と共に母方祖母(母の母)宅へ大急ぎで向かっていた。理由は忘れたが、緊急事態が発生したようだった。
玄関の鍵を開けて中に入ると、赤子の泣き声がした。赤子は玄関を入ってすぐの客間に、バスタオルに包まれた状態で泣いていた。
『何でここに赤ちゃんが…?』
抱き上げた赤子は、さっきまで湯舟に浸かっていたようにホカホカ。しかも何も身につけていない。
何か着せないと風邪をひいてしまう、だが、この家に赤子が居るなんて尋常ではない。
『お母さん⁈ 居るの? どこ?』
母と伯母は、祖母の寝室まで駆けて、戸を開けた。夢はそこで途切れたという。
「おじいちゃんの時と似ているの。しかも、おばあちゃんも齢だしね…」
母が夢を見た当時、母方祖母は既に施設に入っていた。私は言った。
「健康状態は?」
「悪くないよ、持病も無いし。ただアルツハイマー進んじゃって、色んなこと曖昧だけど」
90を越えた祖母は、いつ老衰になってもおかしくない。私も母も、何となく『心の準備』をしておこうと思った。そして時は流れ…。
母が夢を見て、半年以上が経過した。母方祖母は、施設で変わらずに過ごしている。
「もしかして、お母さんが夢を見た頃だけ、一時的に『お迎え』の確率が上がっていたのかな」
私が言うと、母も首を竦めた。
「危機を回避したから、生き続けているとか? 確かに、おじいちゃんの時はベッドの上だったけど、おばあちゃんは寝室で無い部屋なんだもんね。夢ってよく分からないね」
だが私はふと考える。
アルツハイマーだが、人一倍プライドが高く意思表示をはっきり示していた祖母。
最近では紙おむつも抵抗なく履くようになり、面会に行った母や伯母の顔もすっかり忘れ、職員さんの言うことも素直に聞くようになったという。
母が見た夢は、『祖母の死』を暗示したものではなく、『祖母のアイデンティティの死』を予知したのではないだろうか。
『死』とはどこからなのか、を考えさせられた話。
第103話の夢占いに関する話でも少々触れたが、『夢に出て来た事柄と逆の出来事が現実で起こる』とされるものだ。
現実で入院してる人が、夢の中で全快して退院すると逆に入院の長期化や生死に関わる事態になったり、試験に落ちる夢を見ると逆に現実では合格するなど、一口に『逆になる』と言ってもモチーフや夢の状況では、判断が難しい場合もある。
正夢みたいに、夢で見た事がそっくりそのまま現実で起こる事もあるけれど、何故夢は『逆夢』になる事が多いのか。
母はある時、こんな夢を見た。
家の中にいると、どこからともなく赤子の泣き声が聞こえた。声は有り得ないことに、祖父(父の父)の部屋の中から聞こえていた。
(やだ、何で?)
母が部屋に入ると祖父の姿はなく、祖父の使っているベッドの上に、顔を真っ赤にして泣いている赤子が居た。赤子は低月齢児(新生児?)で何も身につけておらず、周囲に誰も居ない。異様な光景に、母は立ち竦んだという夢だったそうだ。
当時、2ヶ月前に大病から回復したばかりだった祖父が、風邪をひいていた。
2~3日ほど寝たり起きたりを繰り返していたが、母が夢を見た翌日辺りから、急に状態が悪化した。祖父は肺炎を起こし、2週間ほどで亡くなった。
『病に臥せる人の寝床に新生児(生の象徴?)が居る』という夢は、逆夢になった。
それから30年近く経ち、母はまた夢を見た。
夢の中で母は、伯母(母の姉)と共に母方祖母(母の母)宅へ大急ぎで向かっていた。理由は忘れたが、緊急事態が発生したようだった。
玄関の鍵を開けて中に入ると、赤子の泣き声がした。赤子は玄関を入ってすぐの客間に、バスタオルに包まれた状態で泣いていた。
『何でここに赤ちゃんが…?』
抱き上げた赤子は、さっきまで湯舟に浸かっていたようにホカホカ。しかも何も身につけていない。
何か着せないと風邪をひいてしまう、だが、この家に赤子が居るなんて尋常ではない。
『お母さん⁈ 居るの? どこ?』
母と伯母は、祖母の寝室まで駆けて、戸を開けた。夢はそこで途切れたという。
「おじいちゃんの時と似ているの。しかも、おばあちゃんも齢だしね…」
母が夢を見た当時、母方祖母は既に施設に入っていた。私は言った。
「健康状態は?」
「悪くないよ、持病も無いし。ただアルツハイマー進んじゃって、色んなこと曖昧だけど」
90を越えた祖母は、いつ老衰になってもおかしくない。私も母も、何となく『心の準備』をしておこうと思った。そして時は流れ…。
母が夢を見て、半年以上が経過した。母方祖母は、施設で変わらずに過ごしている。
「もしかして、お母さんが夢を見た頃だけ、一時的に『お迎え』の確率が上がっていたのかな」
私が言うと、母も首を竦めた。
「危機を回避したから、生き続けているとか? 確かに、おじいちゃんの時はベッドの上だったけど、おばあちゃんは寝室で無い部屋なんだもんね。夢ってよく分からないね」
だが私はふと考える。
アルツハイマーだが、人一倍プライドが高く意思表示をはっきり示していた祖母。
最近では紙おむつも抵抗なく履くようになり、面会に行った母や伯母の顔もすっかり忘れ、職員さんの言うことも素直に聞くようになったという。
母が見た夢は、『祖母の死』を暗示したものではなく、『祖母のアイデンティティの死』を予知したのではないだろうか。
『死』とはどこからなのか、を考えさせられた話。
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