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嵐 ※自然災害表現あり

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 私はその時、出かけていた。 

 平日昼間だったので、家族達はてんでバラバラに出先に居たようだ。
 前々から悪天候の予報が出ていたが、どうしても済ませないとならない用事があった為、近場へやむを得ず出かけていた。
 妹と母から、相次いでメールを受けた。 

『お姉ちゃん、いま家?何か竜巻警報が出ているらしく、電車見合わせになって動けなくなっちゃった』 

『おばあちゃんの病院終わって、出ようとしたら竜巻が起きているって話で、出ないで待機しろって言われた。あんたも気を付けて』 

 天気予報サイトを見ると、自宅近辺で竜巻発生の臨時ニュースが入っていた。 

 私はコンビニでコピーを済ませ、外を窺う。

 大雨だが強風だし、傘は意味が無い。コピーしたものと原本をファイルとビニール袋に入れると、傘もささずにずぶ濡れで走った。 

 帰宅した私は、濡れた身体も拭かず自室へ向かった。みな、外出先で足止めを食らったのか、家には誰も居なかった。 

(急ごう。貴重品をまとめたらすぐここから避難しないと) 

 通帳、幾らかの現金、常備薬…。バッグに入れてる間にも外はどんどん暗くなり、風の音や物の倒れたり割れる音が聞こえてくる。 

(何これヤバくない?) 

 靴を履き外へ出ようとしたが、玄関の外の木々が一斉に見た事も無い角度でしなる。空気さえも、巨大な掃除機に吸われそうな感覚。 

(まずい。外に出ちゃいけない!) 

 咄嗟に、玄関の隣の居間へ飛び込むと、腹這いで座卓の下へ潜り込む。 

(地面に近いとこで頭を守ればいけるかも) 

 闇が迫り、轟音のなか私はジッと耐える。 

 明るくなり、音が遠ざかったので、私はゆっくりと這い出した。 

 窓の外、外れかかった網戸越しの向こう、巨大で黒い竜巻が遠ざかってゆくのが見えた。家の外は一面に瓦や瓦礫、何処かの家の洗濯物が散乱していた。 

(助かった。生き延びた)

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