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 私は高校生になっていた。 

 今日は自主研修らしく、どこか遠くにある大きな公園の様な場所を散策していた。ウォークラリーというべきか。 

 散策が終わり、駅へ。同じ班の女子はあまり親しくない間柄なので、駅に着いて解散した。

 帰りの電車がなかなか来ないので、その間にトイレへ。すると、目的の電車が到着した事に気付かなかったらしい。 

 ハッとした時には自分の乗るべき車両は、ホームの遥か前方に。走るも間に合わず、列車は発車してしまった。 

(やっちゃった…。しかも目的地へ行く列車はもう、この駅から出ないじゃん…。) 

 そこで、『自分と同様に乗れなかった人と共に、同じ行き先へ向かう列車の出る駅へ行こう』と考えた。 


 程なく、女子高生:アヤと同年代の女子:ユイカを見つけ合流し、3人で目指す事になった。 

 アヤは比較的近所に住んでるらしく、気さくですぐ打ち解けたが、ユイカは距離を置きたがるタイプの様だった。 

 ユイカは『同じ電車に乗る』のではなく、『目的地に向かう列車の出る駅』を知ってるそうで、道案内してくれるという。有り難い申し出に、私は乗っかる事にした。 


 ところがその道案内は凄まじかった。

 獣道の様な狭い路地、住宅の塀、廃墟の裏庭、藪の中…。アヤと共に着いていくのがいくのがやっと。 

 しかも行き先で、通行人が悪意を持っているかのように妨害してくる。ゴミを投げてきたり、ルート上にわざと物を置いたり。
 私達は上品に進むのを諦め、蹴散らして進んだ。 


 着いた駅は改装中なのか、鉄骨が剝出し。プラットホームは高所作業用の足場という、酷い場所であった。 

(危な…。何なのココ) 

 不意に、アヤが足を踏み外し転落してしまう。 

「アヤ!!」 

 覗こうにも、線路自体が陸橋の様に空中に架かっているので、見える限り鉄骨の骨組みばかり。 

「どこ?! 返事して!」 

 捜す私を、またも通行人が妨害する。腕や体を掴み、足場の外へ落そうとする。
 もみくちゃになりつつ、抵抗していると、何もしてくれないユイカが叫ぶ。 

「頑張って! 列車がもうすぐ来るから」 

「無理だよ!」 

 列車が到着。纏わりつく人々を薙ぎ払うようにして、乗車した。
 嘘の様に日常の雰囲気の車内に面食らっていると、列車は進みだした。 

「…ユイカ?」 

 ホームに残ったユイカは、静かにこちらを見ているだけだった。 

 
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