異世界転生チートに反旗を翻せ!

三原 柚木

文字の大きさ
16 / 52
水の大陸編

竜の巣を越えて

しおりを挟む
 どれくらいの間走っただろうか。進むほどに星屑が増えていき、足元が埋まるくらいになっていた。モンテスマたちの叫び声が聞こえなくなって、ようやく一行は倒木に座り一息ついた。

「また強烈なやつが出てきたな」
 フラムはアリエッタの膝の上でふぅとため息をつき、毛を繕ってもらっている。

「割り込みがあってラッキーって感じだ。君もこれに懲りたら工房にもど……」
 気づくと、さっきまで一緒にいたはずのビスクドールはいなくなっていた。陽介はどうして自分はあの子のことがこんなにも気になるんだろうともやもやした感情を抱えたまま、しばらく体を休めることにした。



 いつスピカの手駒が襲ってきても対処出来るよう警戒しながら進んでいくが、山道は鳥の鳴き声すら聞こえず、不気味なほど静まりかえり、時折音を立てるのは空から降ってきた星屑くらいだった。

 山頂まであと少しというところで、広く視界が開けた。水と風双方の大陸が一望でき、水側の町や湖、船着場から海の方まで見られる。風側には高い塔があり、未知に踏み込もうとする好奇心は、晴れやかな気持ちで満たされた。
「すげぇ! 大陸って、こんなに広いのか! 燃えてきた! 今ならどこまでも行ける!」
 眼前に広がる世界は見渡す限り雄大で、陽介は改めて異世界に来たことを実感した。

「海の向こうにぼやけているが、白いものが見えるだろう? あれが聖都、我々の目的地だ」
 フラムに言われ目を凝らして水平線の彼方を見やると、確かに白いものがぼんやり浮かんでいる。
「本当だ。エルメスはあそこにいるのか……」
 絶対にエルメスを倒す。倒して、現代日本に連れて帰ると、陽介は固く決心した。

 進んでいくと、大きな絵の描かれた地図看板があった。山頂から反対方面に降りて行けば風の大陸だ。地図の隣には大きな竜の絵があり、横に「ここから先、竜の巣あり。目を覚さぬよう抜けること」と書いてあった。

 陽介はフラムと出会った洞窟にいた、人を食っていただろう白銀竜を思い出して、身震いした。あの時同様寝ていればいいのになと、心の中で願っていた。

 山頂にたどり着くと、鉄線をねじ曲げて鳥の巣のように丸めたものがあり、その上に見覚えのある白銀竜が身を伏せていた。

「詳細は、っと……」
 ステータスを見ると、神の使いと呼ばれ氷の息吹を吹き上げる。鱗は鋼の刃も通さず、翼を広げて飛び立てば、空では無敵を誇る。魔族ではなく幻獣であると表記されており、幻獣とは、神の意思を伝える為に創り出された生き物だと書かれている。

「ラルジャン! ここは君の巣だったのか」
「グルルルル……」
 駆け寄ってきたフラムに気づいたラルジャンは体を起こし、喉元でグルグルと唸った。
「そうかそうか、子育ても順調でなによりだ。ハハハ」

 ラルジャンと仲睦まじく会話をするフラムのことを、アリエッタはむすっとした顔で睨んでいて、陽介はそれをニヤニヤしながら見ていた。一応、閉じ込められていた時に一緒だった事だけは伝えておいた。

「ガル、グルルゥ」
「うむ、そうだ。我々は山を降り風の大陸へ行くところだ」
 フラムは普通に会話をしているが、陽介には内容がさっぱりわからない。アリエッタもわかっていないようで、首を横に振った。

「グルルルゥ!」
「なんと、乗せてくれるのか! ありがたい」
 ラルジャンは陽介たちに近づいて、翼を広げた。よじ登って背中に座ると、ラルジャンは地面を力強く蹴って浮かび上がり、あっという間に空高くまで飛んだ。
「ガルゥ!」
「しっかり掴まっていろと言っている。行くぞ」

 速度を上げて飛んでいくラルジャンの体にしがみ付いているだけで皆精一杯だったが、アリエッタは納得いかなさそうな表情を崩さないままだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

処理中です...