17 / 52
風の大陸編
風の祝祭は準備中
しおりを挟む
白銀竜の背に乗り、大空を行く一行。独特の浮遊感があるが、陽介は酔わなかった。いや、酔っている場合ではなかった。風を切る気持ち良さもあったが、山よりもっと高いところから見下ろした色鮮やかな世界が、涙を流すほど感動的だったからだ。
「どうした?」
「ゴミが目に入っただけ」
悟られるのは恥ずかしいと思い、袖でぬぐってなんでもないとごまかした。
「あっ、町が見えてきた! なんか雰囲気良さそう」
「ラルジャン、あそこまで行ってくれ」
「ガルルル」
ラルジャンが降下を始めると、陽介はやっぱり気持ち悪くなってしまった。吐かないうちにたどり着きますようにと祈り目をギュッと瞑っていた。
「グルルウ!」
「連れてきてくれてありがとう。また会おう!」
ギリギリのところで町に着き、ラルジャンは一行を下ろすと、優しい氷の息吹を吐いて飛び去った。日差しを受けて光る氷の粒は、まるで旅路を祝福するかのように煌めいた。
町は華やかに飾られて、前二つの大陸と違って人も多く活気付いていた。道には行商人が屋台の設置に追われている。
アリエッタはまだふくれていて、フラムから距離を取り陽介の隣を歩いた。
「よう兄ちゃん、いいドール連れてんじゃねーの」
「俺たちにも貸してくれよ」
「溜まってんだよねー、最近」
辺りを見回しながら歩いていると、ガラの悪そうな男たちに行く手を塞がれた。美しい容姿であり声が出ないアリエッタのことを、ドールだと勘違いしているのだ。
「めんどくさそうな男たちだ。俺の後ろに……って、アリエッタ?」
陽介が庇って前に出ようとしたが、彼女は男たちの方へツカツカと近寄っていく。
「物分かりのいい子で助かるぜばちゃぁ!?」
「たっぷり可愛いがってやへぶちっ!?」
すぅと息を吸って両手を大きな水の拳で覆い、男二人の腹に叩き込んだ。人間を愛しているが、それとこれとは別。欲に塗れた人間など数え切れないほど接してきた彼女は、戒め方もよく知っている。
「あ、ご、ごめんなさーい!!」
残った男が二人を引きずって逃げていくと、スッキリした顔になった。
(彼女は何を怒っていたんだ?)
(誰かさんの惚気のせいだよ。ご機嫌取っとくことだな、フラムさん)
陽介はポフポフとフラムの背中を軽く叩いた。
「あーら、アナタたち見てたわよ! いい殴りっぷりだったじゃない」
突然声をかけられてびっくりしていると、派手な衣装を身につけた人間に肩を抱かれた。
「アタシはこの町のリーダー、リベルタ。自由を愛する風の民よ、よろしくね」
陽介はリベルタに気に入られたのか、やたらと体を触られる。Heart0の効果で、異性からの好感度は上がらない。ということは……。
「あんた男かーっ!」
「ヤダ失礼しちゃうわ。心は純情なオトメよっ!」
飛び退いた陽介に対して、リベルタはウインクした。彼(彼女?)は明日から始まる祝祭の準備に浮かれているらしく、旅で訪れた陽介たちを歓迎してくれた。風の日と呼ばれる祝祭は、この大陸にとって重要な行事らしいのだが、何故重要なのかはわかっていなかった。精霊について尋ねてみるが、やはり知らないと答えられた。
「ここって、風の流れが悪いって聞いたけど」
「そうなのよー、困っちゃうわよねー。昔は澄んだ空気で満ちた療養地だったのに、今じゃ管理されてるだなんて」
リベルタも聖都からの供給には憤りを感じていた。祝祭が終わったら、文句を言いに乗り込むつもりでいるらしい。
「なんとなくだけど、みんなこの祝祭にかけてるの。もしかしたら風が吹いてくれるんじゃないかって。さ、アナタたちも楽しんでって」
リベルタの計らいで、持っている屋敷に泊めてもらうことになった。
「ふーん、お祭りね」
町に送り込んでいる鳥の魔族の目を通して、陽介たちの様子を覗き見ていたスピカは、意地悪そうな笑みを浮かべた。
「どうした?」
「ゴミが目に入っただけ」
悟られるのは恥ずかしいと思い、袖でぬぐってなんでもないとごまかした。
「あっ、町が見えてきた! なんか雰囲気良さそう」
「ラルジャン、あそこまで行ってくれ」
「ガルルル」
ラルジャンが降下を始めると、陽介はやっぱり気持ち悪くなってしまった。吐かないうちにたどり着きますようにと祈り目をギュッと瞑っていた。
「グルルウ!」
「連れてきてくれてありがとう。また会おう!」
ギリギリのところで町に着き、ラルジャンは一行を下ろすと、優しい氷の息吹を吐いて飛び去った。日差しを受けて光る氷の粒は、まるで旅路を祝福するかのように煌めいた。
町は華やかに飾られて、前二つの大陸と違って人も多く活気付いていた。道には行商人が屋台の設置に追われている。
アリエッタはまだふくれていて、フラムから距離を取り陽介の隣を歩いた。
「よう兄ちゃん、いいドール連れてんじゃねーの」
「俺たちにも貸してくれよ」
「溜まってんだよねー、最近」
辺りを見回しながら歩いていると、ガラの悪そうな男たちに行く手を塞がれた。美しい容姿であり声が出ないアリエッタのことを、ドールだと勘違いしているのだ。
「めんどくさそうな男たちだ。俺の後ろに……って、アリエッタ?」
陽介が庇って前に出ようとしたが、彼女は男たちの方へツカツカと近寄っていく。
「物分かりのいい子で助かるぜばちゃぁ!?」
「たっぷり可愛いがってやへぶちっ!?」
すぅと息を吸って両手を大きな水の拳で覆い、男二人の腹に叩き込んだ。人間を愛しているが、それとこれとは別。欲に塗れた人間など数え切れないほど接してきた彼女は、戒め方もよく知っている。
「あ、ご、ごめんなさーい!!」
残った男が二人を引きずって逃げていくと、スッキリした顔になった。
(彼女は何を怒っていたんだ?)
(誰かさんの惚気のせいだよ。ご機嫌取っとくことだな、フラムさん)
陽介はポフポフとフラムの背中を軽く叩いた。
「あーら、アナタたち見てたわよ! いい殴りっぷりだったじゃない」
突然声をかけられてびっくりしていると、派手な衣装を身につけた人間に肩を抱かれた。
「アタシはこの町のリーダー、リベルタ。自由を愛する風の民よ、よろしくね」
陽介はリベルタに気に入られたのか、やたらと体を触られる。Heart0の効果で、異性からの好感度は上がらない。ということは……。
「あんた男かーっ!」
「ヤダ失礼しちゃうわ。心は純情なオトメよっ!」
飛び退いた陽介に対して、リベルタはウインクした。彼(彼女?)は明日から始まる祝祭の準備に浮かれているらしく、旅で訪れた陽介たちを歓迎してくれた。風の日と呼ばれる祝祭は、この大陸にとって重要な行事らしいのだが、何故重要なのかはわかっていなかった。精霊について尋ねてみるが、やはり知らないと答えられた。
「ここって、風の流れが悪いって聞いたけど」
「そうなのよー、困っちゃうわよねー。昔は澄んだ空気で満ちた療養地だったのに、今じゃ管理されてるだなんて」
リベルタも聖都からの供給には憤りを感じていた。祝祭が終わったら、文句を言いに乗り込むつもりでいるらしい。
「なんとなくだけど、みんなこの祝祭にかけてるの。もしかしたら風が吹いてくれるんじゃないかって。さ、アナタたちも楽しんでって」
リベルタの計らいで、持っている屋敷に泊めてもらうことになった。
「ふーん、お祭りね」
町に送り込んでいる鳥の魔族の目を通して、陽介たちの様子を覗き見ていたスピカは、意地悪そうな笑みを浮かべた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる