超レア消費アイテム生産者の異世界つえー物語~今ならもれなく全紛失したら死ぬ特典付きです~

安居 飽人

文字の大きさ
12 / 42
序章

9. エバーライフ家との邂逅

しおりを挟む
「えぇと…とりあえず敵対しないんで、武器、下ろしてもらえますか?」

 盗賊集団を撃退した後、ぽかーんとしている貴族一行に俺はそう言う。
 まあ驚くの無理はない。いきなり盗賊に襲われたと思ったら、訳の分からない少年が現れ、更に神獣を使役しながら武器を使って撃退する恐ろしく強い光景を目にしたのだから。それと神獣と思われているイナヅマを警戒しているせいでもあるが…

「(あっ、彼女に掛けた結界魔術を解かないと…)」

 雷属性を織り交ぜた感電トラップ式の結界魔術を少女にかけたままという事を忘れていた。俺は両手をパンッ!と合わせて解術する。すると、少女の周りを囲っていた結界が消えた。

「お嬢様!ご無事ですか?」
「アルナ、大丈夫?」
「はい、ありがとうございます。殿方の結界で何とも…」 

 結界が消えた数秒後、少女に触れても大丈夫と護衛と母親らしき夫人が無事を確認する。

 そういえば、さっき盗賊たちがこいつらの事を"エバーライフ家"と呼んでいたな…。それに、あの少女の事をアルナって……ん??"アルナ・エバーライフ"…あれ、この名前は確か"アウェイクスピリットオンライン"じゃあ…

「君、危なかったところを助けてくれて感謝する。我々はこの森の向こうにある帝国で、エバーライフ商会という商業をしている一行だ。私は商会長を務めている"ノーマン・エバーライフ"というものだ。宜しければ、名前を教えてもらってもいいだろうか?」

 髭を蓄えている男性が剣を鞘に収め、こちらにそう言った。

 やっぱりそうだ!
 エバーライフ商会…"アウェイクスピリットオンライン"で登場している商会の名前で間違いなかった。メインストーリーでも幾度となく出ているし、サブイベントなど護衛やらに協力すれば、主人公にアイテムなどくれる。ひょっとして、サブストーリーの途中だったのだろうか?それをクリアしたって事なのかな?
 
「…君?」
「えっ、あ すみません、俺…わたくしはオルタ・クリムゾンと言います!」

 俺が考え込んでいるのを、ノーマンさんの一言で現実へ戻される。まずい、怪しまれたか…?

「そんな丁寧な言葉遣いは不要だよ、君は我々の命の恩人だ。あまり気にせずに話してくれていい」

 子供が分不相応の丁寧語を怪しまれるかと思ったが、助けてくれた恩もあって気にしてはいなかった。するとノーマンさんは俺の隣にいるイナヅマをチラッと見る。やっぱり気になるよねー…。

「それと…そこにいる巨狼は、君の使い魔なのかい?」
「あっはい、コイツは俺のパートナーで―――」

「うぐッ!」
「カイナッ!?」

 俺がイナヅマを紹介しようとした矢先、後ろに居た兵士の一人が腹を抱えて苦しそうにしていた。
 よく見れば、腹から刃物で切り裂かれたのか血が出ている。それにどことなく顔色も悪い…さっきの盗賊に斬られて毒を盛られたか!?

「しっかりしろカイナ!」
「うぅ…」
「まずいわね、急いで解毒をしないと…」

 傷ついた兵士に近づく夫人。確か、この人がノーマンさんの奥さんで"アルリス・エバーライフ"さんだったな。確か帝国では、魔術に関する機関で働いている役人…それほど地位が高い設定だと記憶している。その人がカイナさんに近づいて、魔術を使った解毒を開始する。
 何かの呪文を言ったのち、"アウェイクスピリットオンライン"でよく見る特有の回復魔術の光が見られた。やがて光が収まり解毒に成功するも、本人は腹を切られたのでこのままだと出血多量で死ぬかもしれない。

「誰か、包帯で応急処置を!どこか、休める場所を…」
「無理ですよ奥さん!ここから帝国の病院までまる一日かかります!」

「あっ…それなら、俺のログハウスを使いますか?」

 護衛が死ぬという絶望的な状況で、俺の放った一言でまたもや全員がぽかーんとする。いや急患なんだから一刻を争うのは当然でしょ?他の兵士も何人かは怪我をしている。ならば、丸一日でも安静して休める場所が必要だ。

「いいのかい?」
「あっはい、ここから近くに俺の家があります。一人用なんで小さいかもしれませんが、集中して治療することはできますよ?」
「旦那様!」
「すまない、是非使わせてくれ!」

 ノーマンさんから、是非にと必死の形相でお願いされた。

「分かりました、それじゃ途中でモンスターに出くわさないよう俺とイナヅマが先導して家まで案内します…!」
「頼む。負傷した者は無理をせず馬車に乗り込め!歩ける者はそのままついてこい、彼が場所まで先導してくれる!」

 ノーマンさんは部下全員にそう命令し、それを聞いた全員が急いで支度する。俺は皆の準備が終わるのを確認すると、イナヅマの背に乗って、先導してログハウスに帰路する。

「あの子に会えたのは本当に幸運でしたね、旦那」
「ああ、ここで彼に会わなかったら間違いなく我々は助からなかったろう」
「それにしても、彼は一体何者なのでしょうか?我々の知らない武器や魔術を使って、それに森の神獣まで従わせているとは…」

 先導している間、後ろの方からヒソヒソとノーマンさんと兵士長の男が会話しているのが聞こえる。おーいバレバレですよー、怪しむのは分かるけどさ…

「彼の素性については後でもいい、それどころか儂は何者だろうと構わん。我々の命恩人である事に変わりはないのだからな」
「…ごもっともです」

 ノーマンさんの寛大すぎる心に感謝と申し訳ない気持ちで一杯になった。そして、一行はログハウスの前まで辿り着く。
 やっと落ち着く…と思っていたが、その前に何体かの獣が何かに焼かれた姿で死んでいるのが見えた。

「これは一体…!?」
「あぁ大丈夫ですよ。コイツらが罠に引っ掛かっただけですから。今、しますね?」
「「「!?!?」」」
 
 俺以外「罠?」一瞬考えたが瞬間、俺がもう一度両手を合わせると、ログハウス前の景色が歪んだ。
 それは、ブロックのような無数の結界がレンガ式の家のようにログハウスの周りを囲っていたのだ。死体となっていた獣達はこれに気づかずログハウスに近づこうとして、先程と同じ雷魔術が組み込まれたこの結界ブロックに触れてしまったのである。
 バラバラになって上空をフワフワと漂うかと思えば、まるで統率するように形を変え、一行を取り囲むように積み上げられた。

「結界をこんなに……」
「結界とは言え、あれほどの数を操れるとは…」
「私の魔力感知にもかからないなんて…」

 オルタがイナヅマの背から飛び降りて、ログハウスの中へ案内する。そして、重傷者を中に入れ部屋で休ませ、軽症である者はメイドと兵士が建てたテントで休ませる事になった。

「(ふーん、この世界でもテントくらいはあるんだな…)」

 万が一、ログハウス拠点が失ったりしたらテントの内装が広くなる結界魔術でもかけてみようかな、と思ったオルタなのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...