私の愛した人は優しい中年の人

冬愛Labo

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03会社の上司

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マンションから出た私は中年男性の車に乗っている。

『あの、どうして場所が分かったんですか?』
「うん、心配だから後ろから着いてきちゃった」
『え…??気づかなかった』
「はは、お嬢さんは緊張していたからね。それに、逆上した彼氏が暴力に出るんじゃないかなって思って心配だったんだ」
『…何から何まですいません』
「良いよ。可愛いお嬢さんと関われて俺はすっごく得してるから」

笑顔の中年男性に少し心が落ち着く。
元彼と遭遇したのは心臓に悪かったけど、助けてもらって正直安心した。

「さて、家に帰ってお仕事の準備だね。仕事の服は持って来た?」
『はい、必要な分を持って来ました。後は買い揃えます』
「そっか、ならそれはおじさんがプレゼントしようかなぁ~」
『えぇ!?これ以上ご迷惑お掛け出来ませんっ!』
「えぇ~若い子にプレゼント出来るなんて滅多にない機会だから嬉しいのに」

信号が赤になり車を止めると、中年男性は私の耳元に顔を持って行き低音ボイスで囁く。

「可愛いお嬢さん、俺からプレゼントさせて?」
『…っ!?』

耳を押さえて慌てて距離を取ると中年男性はクスクスと笑っている。

「お嬢さんやっぱり反応が可愛過ぎるね。昨日あんなにしたのにそんなにウブなんて」
『…っ!!やっぱり自分で買いますっ』
「おじさんが買ってあげるからそこは大人しくプレゼントされなさい」
『~~っ!!』

にっこり微笑まれて私は何も言えない状態だった。


◯◯◯◯


仕事場にたどり着くと同期の松葉葵(まつばあおい)ちゃんが近寄ってくる。

「やっぽ~クリスっ!」
『…ひゃぁっ♥♥♥』

葵ちゃんは後ろから私のおっぱいを鷲掴み揉みしごきながら話しかけてくる。

「はぁ~クリスのおっぱいは最高だよねぇ~。ねぇねぇ、昨日はどうだった?彼氏と盛り上がっちゃった?」
『……彼氏とは別れたの』
「えぇ!?良平君と別れたって事…。な、なんで?」
『浮気をしてた…から。その仕事が始まるから後で話すね』
「お、おぅ」

私と葵ちゃんは席に着くと始業時間になり、上司の席を見る。
今日から新しい上司が来るらしいから皆そわそわしていた。
噂では男性らしい。
どうでも良いが、仕事が出来てセクハラをしてこない優しい人ならそれで良い。
私はぼんやり考えていると主任が部署に入ってくる。
その後ろに見覚えのある男性が後から着いて来た。
まさか…。

「皆聞いてくれ、今日からこの部署の部長を務める菅野悠誠(かんのゆうせい)さんだ」
『…え!?』
「初めまして、他県からの異動になりますので色々教えて下さると嬉しいです」

私は唖然としてしまった。
まさか、昨日拾ってくれた男性は私の上司になる人だったなんて。
中年男性…もとい部長である菅野さんは私と目が合うとにっこり微笑んだ。

「後日親睦会を開くからそわそわしている女性社員はそこでじっくり話をしろ。じゃあ以上だ。部長、伝達をしますので宜しいですか?」
『はい、大丈夫ですよ』

主任に返事をすると部長は行ってしまった。
どういう事??
戸惑いながら、私は席に座ると横にいた葵ちゃんが話しかけてくる。

「ねぇねぇクリスっ!新しい部長イケオジだったよねっ」
『…う、うん』
「彼女いるのかな?年齢的に奥さんかな?県外から来たって言ってたから単身赴任とか?」
『奥さん…』

そういえば指輪は…多分していなかった。
奥さんは…いないと思うけど…、彼女は分からない。
不安になりながら葵ちゃんと軽く会話をした後デスクワークに集中した。

仕事に集中をしていると肩を叩かれて振り返る。

「仕事中悪いね五十嵐さん、女性社員から部長を一人ずつ紹介をして欲しいって要望があって…。それで今が君の番になったんだけど」

困った表情で話す主任に私は苦笑いをした。
ここの女性職員は結構気が強く、何かあればセクハラだと言われる為主任も気を使っているらしい。

『私は五十嵐クリスティーナです。一応ハーフですが、英語は出来ません』

簡単な自己紹介をすると主任と部長は苦笑いをしていた。

「五十嵐、お前の自己紹介はいつもそれだな。部長、五十嵐は仕事も結構出来るので無愛想なのを許して下さい」
「いえいえ、とっても可愛らしいなと思ったので大丈夫ですよ。五十嵐さん、分からない事があったら聞いても良いですか?」
『……私で分かる範囲でしたら。それより主任や他の女性職員に聞いた方が効率が良いと思います』
「五十嵐っ!!」
「主任落ち着いて、うんそうだね。確かに主任に仕事を聞くのが通りだったね。教えてくれて有難う五十嵐さん」

笑顔の部長は怒る事もない。
あぁ、朝まで一緒にいてくれた中年男性と同一人物なんだと思った。
私は表情に出さない様に反対を向くと仕事を再開する。
そっけない私を見ると何故か部長が「っぷ」と笑った。

「部長どうしました?」
「いやいや、五十嵐さんは仕事熱心で優秀そうだなと感心をしていたんですよ」
「あ、あぁそうですね。良かったな五十嵐」
『仕事…溜まっているのでもう良いですか?』
「五十嵐っ!!」
「くくっ、もちろん良いよ。それじゃままたね五十嵐さん」

主任と部長は私の側から離れていった。
…あまり、話しかけて欲しく無かったのに。
昨日のエッチシーンが蘇る。
そう思いそっけない態度になってしまったけれど、部長は全く気にしていない様子だった。

「ねぇねぇクリス、やっぱり部長格好良かったね~、大人って感じ」
『葵ちゃん仕事溜まっているのに大丈夫?私手伝わないよ?』
「えぇ!?やばいっ」

葵ちゃんは慌てて仕事に戻るのを見てほっとした。
私も早く仕事をしないと、集中してパソコンの画面を見つめた。


◯◯◯◯


終業時間になり、皆まばらに帰っている。
だけど、私は何故か多く割り振りをされた仕事が残っている為いつも残業。
葵ちゃん以外誰も気づかないフリをしている。
だけど、今はそれでも良いかと私は思った。

「クリス、今日は仕事…山積みかぁ。ねぇ手伝おうか?それか主任に文句を言う?」
『大丈夫、有難う葵ちゃん』
「お昼もぼーっとしてちゃんとお話出来なったじゃん。色々聞きたかったのにぃ~」
『でも、ほら待っているよ?』

私がちらりと部署の入り口を見ると葵ちゃんと喧嘩をよくする同期君が立っていた。

「あ゛!今日は飲み比べをする予定だったっ」
『なら帰った方が良いよ。私ならいつもの事だから大丈夫』

笑顔で言うと葵ちゃんは渋々帰る準備を始めて私に言う。

「あんまり無理しないでね?あとっ!話ちゃんと聞かせてよっ。私はクリスの全身全霊の味方なんだからね」
『うん、葵ちゃん有難う。ちゃんと分かっているから行ってあげて』
「あぅ~、面目ない」

葵ちゃんは渋々と同期君の元に行って部署から離れた。
私は仕事に集中をして山積みの資料と格闘をしていた。

1時間は経っただろうか?
背伸びをした後肩を手で揉みながら水分補給の為ペットボトルを取った瞬間後ろから気配がした。
突然覆い被される様な体制で部長が私の机からプリントを取った。

「これはまたずんぶんと無理をさせられているねお嬢さん?」
『…っ!部長っ』
「もう就業時間は終わったから部長じゃないよ?おじさんの事は悠誠さんって呼んで欲しいな」
『……部長は部長です』
「っぷ。やっぱりお嬢さんは可愛いね、そのそっけない態度なのにエッチでは子猫みたいになるでしょ?」
『なっ、セクハラですよっ!』

エッチの事を思い出した様に言う部長に私は顔に熱が集まるのを感じて思わず言ってしまった。

「そうだったね、エッチは家に帰ってからのお楽しみだったかな?」
『し、知りませんっ!』
「さてと、お嬢さんと一緒に帰ってイチャイチャしたいからお仕事は貰っていくね」
『……え?』

突然プリントの束を掴んで部長が持って行くと席についてすごいスピードでタイピングをしている。
この人仕事が出来る人なんだ。
関心していた私は我に返り自分も仕事に取り掛かった。
そう言っても殆ど持っていかれた為30分もすれば終わってしまう量だった。

30分後
あっという間に仕事が終わり部長の方を見ると山積みのプリントは片付けれていた。

『嘘…』
「このぐらいだったら本社では当たり前だったから大丈夫だよ。それよりお嬢さんお仕事終わった?」
『は、はい』
「じゃあ一緒に帰ろうか。明日が休みだからご飯食べに行くかい?」
『…いえ、ご飯なら作ります。仕事も手伝って貰ったのでそんなに疲れてませんから』
「お嬢さんの手料理っ!いや~幸せな気分だなぁ」
『そ、そんなに…ですか?』
「そんなにっだよ。あ、豚汁っ!豚汁が食べたいよ、お嬢さん』

子供の様にはしゃぐ部長が可愛くて私は苦笑いをした。

『分かりました、シャケを焼いて豚汁とご飯…あとサラダで良いですか?』
「うんうん、手料理久しぶりだから楽しみだな~。特にお嬢さんの手料理を食べれると思うと最高です」
『……もう』
「あとね」

部長が私の耳元に近づくとニヤリ顔で囁く。

「デザートはお嬢さんが良いな」
『っ!?』
「と言う訳で、買い物を済ませて家に帰ろうか。通勤は近いから歩きだし、一緒に手を繋いで帰れるね」
『…部長って乙女ですか?』
「そうだね、おじさんは乙女かもしれないね」

嫌味を言ったのに笑いながら答える部長を見て私はそっぽを向いた。
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