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第3殿 未来への道程
第56洞 個人の好み
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「それを言うんやったら、わっちは向かい合うやつが好きやわぁ」
しまった、塞ぐ口はまだあった!
「最初見たときは『うぁぁ、アレって普通なん?』て思うとったけど、いざ自分がその立場になると案外すんなり受け入れられるんやなって」
「アレをすんなりでござるか!? 直前の日に某もお世話になったでござるが、終始凶器でござったぞ!?」
あ、やば。……俺も座ろう。
俺が座ったのを見て何かを察したのか、二人は会話を続けた。
「ちゃうねん。なんかな、自分の体全部がディーやんになった気になるんやわ」
「わかる。――求めてるんだけど求められてる、お腹に残った欠片まで愛おしくて」
「せや! それや! もうな、中から染まってく! 溶け合っていく! って思えるのたまらんよなぁ~」
「うぐぐ…… それはちょっとわかるでござる」
なんか、えげつないというかなんというか、聞いてるだけで今にも限界を迎えそうだ。
ふと静かなラスキーさんを見ると、座ったままずっと俯いてモジモジしてる。用意された家具が椅子とテーブルだけでよかったぜ。
「で、ラスキーさんはどうだったんですか?」
「へ、は? わ、妾か?」
「ベル! そ、そんな無理に話させなくても……」
ベルはしかし、ニッコリと砂時計を指さす。うん、あんな暴露トークをしてるのに思ったほど減ってない。
「大丈夫ですよラスキーさん。言いたくなかったら話さないのもアリです。この部屋の術式はあくまで本音しか話せなくなるだけなんで、黙ってれば……」
「妾はのう、好きな人がおった。ただ、同性だったのだ」
さっきまでピンク一色な会話だったのがシン、と静まり返った。
全員がただラスキーさんの話し出すのを待ち、視線と気持ちが彼女に集中した。
「叶わぬと理解しながらも体は彼女を求め、影から眺めては自分で鎮める毎日。……彼女には、想い人がおったのだ」
震える声がその言葉の真実味を増す。この部屋では嘘はつけないけど。
「だというのに、其方らは、この男の全てを受け入れておる。何故だ? どうしてそんなことができる?」
「あたしは、お姉ちゃんも好きだし、ディグも好きだから」
「一目惚れのようなものでござろうか。某を普通の女性のように扱う者は、は、初めてでござった故、そのすべてが憎からず思えてしまうのでござろうな」
「かっこええから! かっこええと全部許す!」
全員が俺の好みの部分を言いながらも、一人モジモジしながら答えない人がいる。
「――私は、ディグちゃん以外の男性とうまく話ができない。ディグちゃんだけ、話せるし、話してくれる。そんなディグちゃんがやりたいことを、私は否定したくないし、しちゃいけない」
「でも、だからって全員お手付きにした俺は結構罪悪感あるんだよな」
……あ、ついまた本音が出てしまった。
「でもうちのお父様だって―― 何人もの女性と子供を作ってるよ?」
「ベルやマイナさんのお父さんはそれだけの金があるし、俺とはちょっと違うって」
「へぇ、ベルやんの家ってお金持ちなん?」
「あ、言ってなかったっけ? あたしベル・ラクナーシャって言って」
「ラクナーシャ? あの大陸最大の商会一族でござるか!?!?」
「会社所有だけど、素材生成迷宮もいくつかあるわよ」
「――うちひとつは、私の墓標になる予定だったけど」
やめて。うちの母さんの墓標にもなる可能性もあったんだから。
「やはりすごい男なのだな、ディグラッド」
「今の聞いてました?」
「お前は、少なくともここにいる女たちを幸せにしているだろう? ホーランとは全然違う」
「そこに父さんが出てくるのも…… って、もしかしてラスキーさんが好きだった女性って」
「リフィールではない。……ハヤ、だ」
「ハヤ、さん?」
「ハヤ、やと?」
その名前にいち早く気が付いたのはイレーナさんだった。
「もしかしてバドナ・ハヤ?」
「……ミドルネームをなぜ知っている?」
「やっぱそうなんか。わっちのな、遠い親戚や」
「今はセブエイターン・バドナ・ハヤと名乗っておる。今は…… 進めばわかる」
「あ、確か以前に聞いた話だと『ここにいる』って言ってました、よ、……ね?」
なんかいま、イレーナさんがすごいことを口走ったような?
「ね、ねえディグ。イレーナさんって確か『ミナナギ』の一族だったわよね?」
「そうやで。せやからバドナもミナナギや。もいっこ言うと、バドナの方が年下やで」
「と、年下ぁ!?」
イレーナさんの言葉に一番驚いたのはラスキーさんだった。
「ば、馬鹿も休み休み言え! あやつは妾と同じくらいの歳のはず! 其方は明らかにもっと幼いではないか!」
「しっつれ~やな! わっちはこう見えて、年齢だけで言えば最年長や!」
「は…… は???」
あ、ラスキーさんがフリーズした。
「あ、そうか。バドナはタミグラスの血が混ざっとるから少し成長が早いんかもしれんな。あの子ちょっと髪が真っ黒やないやろ?」
「い、言われてみれば…… そうだが」
「わっちとバドナは少なくとも八十は離れとるんよ。せやから」
「「「「は、八十ぅ!!??」」」」
「……なんや、そない驚かんでええやん」
そういえば、細かい年齢を聞いた覚えはなかった気がする。
ミナナギの一族は長命らしいってのは知ってたけど、最近では希少種族だからあまり知る機会がないんだよな……
「じゃ、じゃあ其方はいま百二十、とでも?」
「え? え? え? セブエイターンさんって今そんな年齢なんですか??」
「妾が最後にあった時点では五十前後。少なく見積もってそれくらいになるわ」
「あー、大体あってるわ。今は…… 百三十六くらいやね」
うわ。想像をはるかに超えるな。
でもアレの時のイレーナさんは、俺たちで言うところの十代前半なみの体格だった気がする。とても三桁の年齢とは思えない。
……そういえば。
「……イレーナさんって、確かあの時処女でしたよね?」
「せやで! めっちゃ痛かったわ!」
「それじゃあ四十で処女散らしたラスキーさんのこと笑えないんじゃないですか?」
「何言うてんねん! ともに同じ男を愛する女同士、ライバル意識はあっても笑うなんてことせぇへんわ!」
く、魔法の効力があるからって赤裸々なセリフなはずなのになんの躊躇なく口にしてるな?
……って、よく見たら耳が真っ赤になってる。あれで百三十は嘘だろ。
「ディグラッドは、初めて抱かれてもよいと思えた男性なのだ。それは妾のなかに間違いなく生まれた想い。嘘ではないと思っておる」
うん、まだ砂時計は終わってないから本当の事だと思う。
「あの、ラスキーさん? なんでディグをそこまで?」
「わからん」
ベルの渾身の質問を、簡単に躱してしまう。
しかし、決して言葉を濁しているわけでも、嘘を言ってるわけでもないのはこの部屋にかけられた魔法を考えればわかることだ。
本当に分からないのだろう。
「ふむ、自分でもわからんというのは事実なのだが、あえて言うなら…… その、其方らの輪に入ってみたい、と思った、くらいやもしれぬ」
「私たちの、――輪?」
「極端な言い方ではあるが、『無限の大地』のパーティは昔から入れ替わりが多かった。優秀な人間を集めて最強の組織たれ、という無言のプレッシャーが常に背中から襲い掛かってきておった」
「――うん、ありそう」
「だが、其方らはディグラッドを中心として肉体関係を持ちながらも、なぜか仲違いせず関係を続けているのか、全く分からなかった」
「ていうかなんで肉体関係があるってさらっと知ってるんですか」
「妾の力を甘く見るでないわ」
「覗き! 覗きでござるぞ!」
「だったらせめてもう少し夜も更けた頃に始めぬか! 筒抜けぞ!」
いや『妾の力』関係ないじゃん。
「……まあ、抱かれて分かったわ。其方の魅力がな」
「ぜひ俺がもてる理由を教えてください」
「嫌だ。教える気にならぬ」
「なんでですか!」
「少なくとも、それが其方の魅力として妾は惹かれておる。増えゆくライバルを減らすことと天秤にかけてでも其方が知ることではないわ」
ラスキーさんの言葉に全員が頷く。
……そりゃ、一度肌を重ねたからにはきちんと最後まで面倒見るつもりだけど、これ以上増えるのは俺にとっても他の皆にとっても問題じゃないのかよ。
「――まだ半分もいってない」
砂時計を見てマイナさんがぽつりと呟く
「俺はできるだけ黙りたいな」
「ディグちゃんはみんなの中で―― 誰が好き?」
「マイナさんその質問は一番ヤバいからやめましょうよ」
「聞きたい」
「聞きたい」
「聞きたい」
「聞きたいでござる」
「言え」
俺はいたたまれずにクリストリスに視線を落とす。無邪気に笑う彼女の笑顔はやはり癒しだ。
「出来たら玉虫色の回答でお茶を濁したい…… っていう事自体この部屋では無理なんだよなぁ」
「そ、某としては、それもなかなか悪くないと思ってるでござるよ」
「え、ミサオさんどうして? ディグならもっと気の利いた言葉で返してくれるよ?」
ベル、確かにそう思ってるけど、この部屋じゃ逆にダメージだよ……
「一番…… 興奮するのはベルかな」
「やった、一ば…… 興奮?」
「幼なじみでお風呂すら一緒に入ったことあるベルとスるときの背徳感はやっぱベルが一番だと思う」
「そ、そう?」
ベルは微妙な顔だ。
だけど気持ちの中での一番なんか答えられるはずがない。
俺は、行きてこの迷宮を出たいからな。
「ミサオさんは、やっぱりこの辺の人にはないエキゾチックな魅力に興奮しますね」
「え、えきぞちっく?」
「ファルアスト領の人々にはない雰囲気が好きです」
「な、なるほど」
「イレーナさんも、やっぱりミナナギとしての魅力があるうえに、その年齢にそぐわない幼さがたまんないです」
「お、幼さかいな? まあ、ほめられて悪い気はせぇへんけど」
「独特のジッポン訛りもですけど、響きが新鮮でアレの声もきっとすごいこと言ってると思うとたまんないですね」
「さ、さよか。……なんか今更恥ずかしいわ」
「マイナさん……」
「――私は、どう思ってる?」
「マイナさんは、抱いてるとき背徳感がヤバいです」
「背徳―― 感?」
「幼い頃から知ってるという点ではベルもですけど、やっぱり『当時のお姉ちゃん』がその時のままいることの背徳感ですよ。まるで数年前の自分に戻ったかのような感覚です」
「そ、そう――」
一気に喋りきると、空気が肺から抜けきったので大きく深呼吸する。
「そのなかであえて一番を選ぶなら、ベルしかいないと思う」
「ふぇ、ぁ、やっぱあたし?」
「ベルが『誰を好きになってもいい。その中にあたしが入りさえすれば』っていうのがなかったら、きっとベルとしかヤってないだろうからな!」
正直な本音しか言えないからこそ、今のうちにいう。
めちゃくちゃ卑怯でずるい言い方だ。
「おい、忘れてはおらぬか」
「はい?」
「妾は! 妾はどうなのだ!?」
「えっ!? ラスキーさんもカウントしていいんですか!??」
「ええいもうよい!」
俺の言葉に業を煮やした彼女は、おもむろに俺の顎を掴むと無理やり唇を重ねてきた。
舌の動きもたどたどしいまま俺の口内に侵入しては、態度とは裏腹に挙動不審な舌が唇の上に鎮座する。
「んっ…… んむ、ん……」
要領を得たのか、そっと俺の舌を見つけて絡め取ると、そのまま唾液ごと自分の口内に吸い上げる。勢いよく取られた唾液が口の外にあふれるが、彼女はお構い無しだ。
「ぷぁ…… シングルクラスを舐めるからこういうことになる」
ぷつん、と何かが切れた。
「じゃあ教えてください。ラスキーさんのこと」
「へぇ、んっ!??」
俺は彼女の薄い布を剥ぎ取ると、そのままテーブルに押し倒した。いくつかのカップは音を立てるが倒れるまでには至らない。
「俺も、もう色々我慢の限界なんですよ。分かるでしょう?」
「し? 知らぬ知らぬ!」
「じゃあ分かるまで教えてあげますよ!!」
「あ、ずるい! あたしも!」
「わっちも参加や! ラスキーはんだけはズルいわ!」
「某も教えてほしいことはまだあるのでござるが…… 合間失礼するでござる」
「――だーめ。みんな一緒。もちろん私も」
そこからは何をしたかほとんど覚えてない。
ただ言の葉の砂時計が器から溢れるまで全員の「知らないこと」をこってり聞き出したのは覚えている。
……その大部分はみんなの嬌声ばかりだったが。
しまった、塞ぐ口はまだあった!
「最初見たときは『うぁぁ、アレって普通なん?』て思うとったけど、いざ自分がその立場になると案外すんなり受け入れられるんやなって」
「アレをすんなりでござるか!? 直前の日に某もお世話になったでござるが、終始凶器でござったぞ!?」
あ、やば。……俺も座ろう。
俺が座ったのを見て何かを察したのか、二人は会話を続けた。
「ちゃうねん。なんかな、自分の体全部がディーやんになった気になるんやわ」
「わかる。――求めてるんだけど求められてる、お腹に残った欠片まで愛おしくて」
「せや! それや! もうな、中から染まってく! 溶け合っていく! って思えるのたまらんよなぁ~」
「うぐぐ…… それはちょっとわかるでござる」
なんか、えげつないというかなんというか、聞いてるだけで今にも限界を迎えそうだ。
ふと静かなラスキーさんを見ると、座ったままずっと俯いてモジモジしてる。用意された家具が椅子とテーブルだけでよかったぜ。
「で、ラスキーさんはどうだったんですか?」
「へ、は? わ、妾か?」
「ベル! そ、そんな無理に話させなくても……」
ベルはしかし、ニッコリと砂時計を指さす。うん、あんな暴露トークをしてるのに思ったほど減ってない。
「大丈夫ですよラスキーさん。言いたくなかったら話さないのもアリです。この部屋の術式はあくまで本音しか話せなくなるだけなんで、黙ってれば……」
「妾はのう、好きな人がおった。ただ、同性だったのだ」
さっきまでピンク一色な会話だったのがシン、と静まり返った。
全員がただラスキーさんの話し出すのを待ち、視線と気持ちが彼女に集中した。
「叶わぬと理解しながらも体は彼女を求め、影から眺めては自分で鎮める毎日。……彼女には、想い人がおったのだ」
震える声がその言葉の真実味を増す。この部屋では嘘はつけないけど。
「だというのに、其方らは、この男の全てを受け入れておる。何故だ? どうしてそんなことができる?」
「あたしは、お姉ちゃんも好きだし、ディグも好きだから」
「一目惚れのようなものでござろうか。某を普通の女性のように扱う者は、は、初めてでござった故、そのすべてが憎からず思えてしまうのでござろうな」
「かっこええから! かっこええと全部許す!」
全員が俺の好みの部分を言いながらも、一人モジモジしながら答えない人がいる。
「――私は、ディグちゃん以外の男性とうまく話ができない。ディグちゃんだけ、話せるし、話してくれる。そんなディグちゃんがやりたいことを、私は否定したくないし、しちゃいけない」
「でも、だからって全員お手付きにした俺は結構罪悪感あるんだよな」
……あ、ついまた本音が出てしまった。
「でもうちのお父様だって―― 何人もの女性と子供を作ってるよ?」
「ベルやマイナさんのお父さんはそれだけの金があるし、俺とはちょっと違うって」
「へぇ、ベルやんの家ってお金持ちなん?」
「あ、言ってなかったっけ? あたしベル・ラクナーシャって言って」
「ラクナーシャ? あの大陸最大の商会一族でござるか!?!?」
「会社所有だけど、素材生成迷宮もいくつかあるわよ」
「――うちひとつは、私の墓標になる予定だったけど」
やめて。うちの母さんの墓標にもなる可能性もあったんだから。
「やはりすごい男なのだな、ディグラッド」
「今の聞いてました?」
「お前は、少なくともここにいる女たちを幸せにしているだろう? ホーランとは全然違う」
「そこに父さんが出てくるのも…… って、もしかしてラスキーさんが好きだった女性って」
「リフィールではない。……ハヤ、だ」
「ハヤ、さん?」
「ハヤ、やと?」
その名前にいち早く気が付いたのはイレーナさんだった。
「もしかしてバドナ・ハヤ?」
「……ミドルネームをなぜ知っている?」
「やっぱそうなんか。わっちのな、遠い親戚や」
「今はセブエイターン・バドナ・ハヤと名乗っておる。今は…… 進めばわかる」
「あ、確か以前に聞いた話だと『ここにいる』って言ってました、よ、……ね?」
なんかいま、イレーナさんがすごいことを口走ったような?
「ね、ねえディグ。イレーナさんって確か『ミナナギ』の一族だったわよね?」
「そうやで。せやからバドナもミナナギや。もいっこ言うと、バドナの方が年下やで」
「と、年下ぁ!?」
イレーナさんの言葉に一番驚いたのはラスキーさんだった。
「ば、馬鹿も休み休み言え! あやつは妾と同じくらいの歳のはず! 其方は明らかにもっと幼いではないか!」
「しっつれ~やな! わっちはこう見えて、年齢だけで言えば最年長や!」
「は…… は???」
あ、ラスキーさんがフリーズした。
「あ、そうか。バドナはタミグラスの血が混ざっとるから少し成長が早いんかもしれんな。あの子ちょっと髪が真っ黒やないやろ?」
「い、言われてみれば…… そうだが」
「わっちとバドナは少なくとも八十は離れとるんよ。せやから」
「「「「は、八十ぅ!!??」」」」
「……なんや、そない驚かんでええやん」
そういえば、細かい年齢を聞いた覚えはなかった気がする。
ミナナギの一族は長命らしいってのは知ってたけど、最近では希少種族だからあまり知る機会がないんだよな……
「じゃ、じゃあ其方はいま百二十、とでも?」
「え? え? え? セブエイターンさんって今そんな年齢なんですか??」
「妾が最後にあった時点では五十前後。少なく見積もってそれくらいになるわ」
「あー、大体あってるわ。今は…… 百三十六くらいやね」
うわ。想像をはるかに超えるな。
でもアレの時のイレーナさんは、俺たちで言うところの十代前半なみの体格だった気がする。とても三桁の年齢とは思えない。
……そういえば。
「……イレーナさんって、確かあの時処女でしたよね?」
「せやで! めっちゃ痛かったわ!」
「それじゃあ四十で処女散らしたラスキーさんのこと笑えないんじゃないですか?」
「何言うてんねん! ともに同じ男を愛する女同士、ライバル意識はあっても笑うなんてことせぇへんわ!」
く、魔法の効力があるからって赤裸々なセリフなはずなのになんの躊躇なく口にしてるな?
……って、よく見たら耳が真っ赤になってる。あれで百三十は嘘だろ。
「ディグラッドは、初めて抱かれてもよいと思えた男性なのだ。それは妾のなかに間違いなく生まれた想い。嘘ではないと思っておる」
うん、まだ砂時計は終わってないから本当の事だと思う。
「あの、ラスキーさん? なんでディグをそこまで?」
「わからん」
ベルの渾身の質問を、簡単に躱してしまう。
しかし、決して言葉を濁しているわけでも、嘘を言ってるわけでもないのはこの部屋にかけられた魔法を考えればわかることだ。
本当に分からないのだろう。
「ふむ、自分でもわからんというのは事実なのだが、あえて言うなら…… その、其方らの輪に入ってみたい、と思った、くらいやもしれぬ」
「私たちの、――輪?」
「極端な言い方ではあるが、『無限の大地』のパーティは昔から入れ替わりが多かった。優秀な人間を集めて最強の組織たれ、という無言のプレッシャーが常に背中から襲い掛かってきておった」
「――うん、ありそう」
「だが、其方らはディグラッドを中心として肉体関係を持ちながらも、なぜか仲違いせず関係を続けているのか、全く分からなかった」
「ていうかなんで肉体関係があるってさらっと知ってるんですか」
「妾の力を甘く見るでないわ」
「覗き! 覗きでござるぞ!」
「だったらせめてもう少し夜も更けた頃に始めぬか! 筒抜けぞ!」
いや『妾の力』関係ないじゃん。
「……まあ、抱かれて分かったわ。其方の魅力がな」
「ぜひ俺がもてる理由を教えてください」
「嫌だ。教える気にならぬ」
「なんでですか!」
「少なくとも、それが其方の魅力として妾は惹かれておる。増えゆくライバルを減らすことと天秤にかけてでも其方が知ることではないわ」
ラスキーさんの言葉に全員が頷く。
……そりゃ、一度肌を重ねたからにはきちんと最後まで面倒見るつもりだけど、これ以上増えるのは俺にとっても他の皆にとっても問題じゃないのかよ。
「――まだ半分もいってない」
砂時計を見てマイナさんがぽつりと呟く
「俺はできるだけ黙りたいな」
「ディグちゃんはみんなの中で―― 誰が好き?」
「マイナさんその質問は一番ヤバいからやめましょうよ」
「聞きたい」
「聞きたい」
「聞きたい」
「聞きたいでござる」
「言え」
俺はいたたまれずにクリストリスに視線を落とす。無邪気に笑う彼女の笑顔はやはり癒しだ。
「出来たら玉虫色の回答でお茶を濁したい…… っていう事自体この部屋では無理なんだよなぁ」
「そ、某としては、それもなかなか悪くないと思ってるでござるよ」
「え、ミサオさんどうして? ディグならもっと気の利いた言葉で返してくれるよ?」
ベル、確かにそう思ってるけど、この部屋じゃ逆にダメージだよ……
「一番…… 興奮するのはベルかな」
「やった、一ば…… 興奮?」
「幼なじみでお風呂すら一緒に入ったことあるベルとスるときの背徳感はやっぱベルが一番だと思う」
「そ、そう?」
ベルは微妙な顔だ。
だけど気持ちの中での一番なんか答えられるはずがない。
俺は、行きてこの迷宮を出たいからな。
「ミサオさんは、やっぱりこの辺の人にはないエキゾチックな魅力に興奮しますね」
「え、えきぞちっく?」
「ファルアスト領の人々にはない雰囲気が好きです」
「な、なるほど」
「イレーナさんも、やっぱりミナナギとしての魅力があるうえに、その年齢にそぐわない幼さがたまんないです」
「お、幼さかいな? まあ、ほめられて悪い気はせぇへんけど」
「独特のジッポン訛りもですけど、響きが新鮮でアレの声もきっとすごいこと言ってると思うとたまんないですね」
「さ、さよか。……なんか今更恥ずかしいわ」
「マイナさん……」
「――私は、どう思ってる?」
「マイナさんは、抱いてるとき背徳感がヤバいです」
「背徳―― 感?」
「幼い頃から知ってるという点ではベルもですけど、やっぱり『当時のお姉ちゃん』がその時のままいることの背徳感ですよ。まるで数年前の自分に戻ったかのような感覚です」
「そ、そう――」
一気に喋りきると、空気が肺から抜けきったので大きく深呼吸する。
「そのなかであえて一番を選ぶなら、ベルしかいないと思う」
「ふぇ、ぁ、やっぱあたし?」
「ベルが『誰を好きになってもいい。その中にあたしが入りさえすれば』っていうのがなかったら、きっとベルとしかヤってないだろうからな!」
正直な本音しか言えないからこそ、今のうちにいう。
めちゃくちゃ卑怯でずるい言い方だ。
「おい、忘れてはおらぬか」
「はい?」
「妾は! 妾はどうなのだ!?」
「えっ!? ラスキーさんもカウントしていいんですか!??」
「ええいもうよい!」
俺の言葉に業を煮やした彼女は、おもむろに俺の顎を掴むと無理やり唇を重ねてきた。
舌の動きもたどたどしいまま俺の口内に侵入しては、態度とは裏腹に挙動不審な舌が唇の上に鎮座する。
「んっ…… んむ、ん……」
要領を得たのか、そっと俺の舌を見つけて絡め取ると、そのまま唾液ごと自分の口内に吸い上げる。勢いよく取られた唾液が口の外にあふれるが、彼女はお構い無しだ。
「ぷぁ…… シングルクラスを舐めるからこういうことになる」
ぷつん、と何かが切れた。
「じゃあ教えてください。ラスキーさんのこと」
「へぇ、んっ!??」
俺は彼女の薄い布を剥ぎ取ると、そのままテーブルに押し倒した。いくつかのカップは音を立てるが倒れるまでには至らない。
「俺も、もう色々我慢の限界なんですよ。分かるでしょう?」
「し? 知らぬ知らぬ!」
「じゃあ分かるまで教えてあげますよ!!」
「あ、ずるい! あたしも!」
「わっちも参加や! ラスキーはんだけはズルいわ!」
「某も教えてほしいことはまだあるのでござるが…… 合間失礼するでござる」
「――だーめ。みんな一緒。もちろん私も」
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ただ言の葉の砂時計が器から溢れるまで全員の「知らないこと」をこってり聞き出したのは覚えている。
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——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
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【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
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