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第4殿 迷宮の向こう側へ
第77洞 俺たちの故郷へ
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「な、なにあれ!?」
「うっわぁ……」
誰かは悲鳴を、誰かは嬉しそうな、そんな賛否両論の声があちこちから上がる。
それは明らかにヒトのサイズと異なり、しかし同じような機能を持つかのように脈打っている。
「ふ、ふふ、ふっふっふはははははは……」
それに気づいたか、あるいは今、目が覚めたのか。
シンボルを持つ主がゆっくりと頭をもたげた。うっすらと笑みを浮かべつ奇妙な起き上がり方で身を起こし、己の体に起こった変化に心なしか満足げだ。
「ようやく『接続』が終わった。これで余の肉体が完全な形で支配下に収まった、というわけだ」
「あっ、俺が奪った分!?」
恐らく俺たちがここへ来る際に使った原初の肉体が、ヴァルギーナの支配下に堕ちたのだろう。あのデカイのはその証拠というわけだ。
「陽と陰。二つの性が合わさって初めて余の力は完全なものになり――」
「――さ せ な い !」
ふわりと陰が舞った。
一人の少女がヴァルギーナの頭上から舞い降りると、自身の中へヴァルギーナのシンボルを落下に任せてずるりと一気に沈み込ませた。
「んぐううおおおおほおあああぁぁぁっっ!!」
「く、クリスちゃん!?」
「クリストリス!!!」
「ふふん、待ってたわお母様! あなたが肉体の制御権を奪取する瞬間、私の支配を緩めるこの時を!!!」
「ん、っぐ! は、離れろっ、このゴミが! んぁぎゅううぅぅ!!??」
クリストリスは振り払おうと腰を振るヴァルギーナに振り落とされないと、足を絡めてさらに深くねじ込む。その動きが逆にクリストリスのナカにはいってしまったモノに強烈な刺激を与えてしまい、さらにヴァルギーナは悶絶する。
「お父様、一つ、嘘をつきました。私のこの体はお母様―― ヴァルギーナから生まれ、その精神はヴァルギーナが組み立てました。未来から来たわけではありません」
徐々に娘の息が上がる。俺の目から見えない角度で何か行われているようだ。……くそ、体が動かない!
「だけど、この魂…… お父様の娘としての魂は、この時のためにやってきました!」
「な、なんだって!?」
「ふ、ふざけるな! 余であってもそんなことは……」
「ええ、そう。けど、お父様は繋いでくれた。血の継承を」
クリストリスがぐにゃりと歪む。それは勇者だけが持つ力の証。かつて勇者が魔王の力を削ぎ、肉体と精神を分け隔てた時に使った力だ。
魔王の力を打ち消して、自らが……
自らが、魔王となって肉体を乗っ取る力。
「ま、待て! クリストリス! その力をそのまま使えば!」
過去、勇者は魔王の肉体を乗っ取った後、あの原初の迷宮へと一人降り立ちその肉体を封印した。その後はレスクス城であった通りだ。
つまり―― 死ぬ。
「いいんです! ……いいんです。どうせ、生き残ることはできません。命を燃やし尽くして、本当の平和な世界を、お父様たちが皆さんと過ごせることが私の願いです!」
母娘の繋ぎ目から赤い印が地面へと伝う。しかし、それは床に触れる前にかすれて消える。既に彼女たちはこの世界の住人ではないのだ。
「クリスちゃん、体が……」
「私の最後の力で、お母様を『世界の外側』へ連れて行きます。私が勇者の力を行使すれば、この時代における迷宮の力と反発してこうなることは、分かっていました」
ベルが俺を見る。その悲痛な顔に俺はただ首を縦に振ることしかできない。事前に教授と話していた流れとは違った形ではあるが、我々は彼女と生きる時間を異にする存在だ。どこかでこうなることは分かっていた。
でも、俺の頬を伝うしょっぱい水は、そんな理不尽を理解してくれない。
「お父様、信じてくれてありがとう。育ててくれてありがとう」
「ええい、くそ、力が、抜けっ! 離せ、離れんか! うおおおおおお!!! んぐっ!?」
徐々に二人の姿が眩い光を放ちつつ消えていく。周囲の光が、クリストリスの放つ引力に歪められて吸い込まれては乱反射してまた輝く。
「なんで…… こんなにきれいなのに」
俺は掛ける言葉が見つからない。
彼女でなければ、この戦いの勝利は成せない。もうあの力を取り戻したヴァルギーナを倒せるものは、もうここにいないのだから。
「クリスちゃん!」
ベルが叫ぶ。
片腕はクリストリスに向かって、もう片方は自分のお腹を押さえながら、ひときわ大きな声で彼女に伝えた。
「絶対、あたし、あなたを産むから! またあなたに会うから!!」
クリストリスは、ニコッと微笑んだ。
口は何かを伝えようと動いていたが、もう何も聞こえない。言えなかったのか、あるいはもう届かないのか。
しかしそれでもクリストリスは満足げに微笑んだ。その時目じりに浮かんだ彼女の涙が顎を伝い、今度はぽたり、と地面に落ちた。
「……」
ぷつん、と空間が閉じた。
後に残されたのは、ひんやりとした空気だけ。
「……おわ、った?」
気が付くとその場にいた全員がただ泣いていた。ほんのわずかな間だったけど、クリストリスが残したものは、確かにここに有った。
それだけで、俺はなんとなくまた会える気がした。
「――ディグちゃん、これからどうする?」
若干鼻声のマイナさんが俺に声をかけてきた。
俺は空を仰ぎ見る。机の上でよく見る見慣れた地形に嬉しいような怖いような感情が胸をいっぱいにする。俺たちは、あの大地に戻らないといけない。
「帰れるかな? 俺たち」
「それより、この迷宮はどないなってんねん。浮かんでるんやろ? 核になっとった魔王も居らんくなったし、放っとくわけにもいかんし……」
イレーナさんの言う通りだ。
帰るだけなら、俺が転送円を開けてしまえば解決する。とはいえこんなに離れた状態で地上に繋がるかどうかは分からないが。
問題は、この迷宮をこのままにしていいかどうかだ。
「放置は―― しない方がいい。できるだけ、ギルドの管理下に置くべき」
「そうは言うでござるが、これをもう一度地上に戻すには迷宮が生きていないと難しいでござる。某らではこの迷宮を動かすことなど不可能である故……」
「死亡した既存の迷宮を生き返らせるというのか? 聞いたことのない話ぞ」
俺も聞いたことがない。
『ぼくも知らないな。キミがまた産めばいいんじゃないか?』
「馬鹿言うな。そもそもクリストリスだって外部から入ってきたんだ。そうそう核が俺の中に……」
あったわ。
そういえば、まだ俺のタマの中に一個、残ってるはず。
「な、なあベル」
「なに?」
「ちょっと、だしてほしいものがあるんだけど」
「何をだせばいいの?」
「ココの中に入ってるやつ」
俺は自分の股間を指す。
「……あんたねぇ」
「違うって! いやめちゃくちゃその通りなんだけど、そう言う意味じゃなくて、外科的に取り出してほしいんだって!」
「……え? 中身を直接裂いて、ってこと?」
「そうそうそうそう!!」
「正気? クリスちゃんに会えなくなるわよ?」
「だから、そっちじゃなくてこっちの方だよ! ちょっと前にランビルドに迷宮の種をここに植えられたんだって!」
ベルはいぶかしげに俺の袋をまさぐる。ころころと何度か左右を触り比べて片方が明らかに別の形状をしているのに気が付いてくれた。
……まあ、普段も触って比べるなんてことはしないしな。
「ほんとだ。なんで気が付かなかったんだろ?」
「え、本当なの? 妾にも確認させよ」
「どれどれ、ふむふむ?」
「ディグ殿、硬くされると、ちょっと、困るでござるよ」
「じゃあみんなで触らないでくださいよ!」
「だってずるいやん。なくなるんならわっちも触っときたいし」
ひとしきりみんなが触った後で、ようやくベルが摘出の準備に入る。
俺はあられもないポーズで下半身を晒し、夜中の戦いよりも恥ずかしい状態を余儀なくされた。
「覚悟はいい?」
「もともとなくなってたんだし、仕方ないよ」
「やっぱり取っちゃうと量が減ったり―― するのかな?」
「そもそも迷宮の種は人の種を作ったりしてないはずだから、ディグはずっと一個であの量を作ってたことになるわね」
「一個で、あの量を!? ……流石でござる」
「早くして! なんだか怖い!」
ベルは自分のマナを鋭いナイフに変えて俺の袋に切れ目を入れる。すると、袋に収まっていた種はまるで今出ることを知っていたかのようにすんなりとベルの手のひらに転がり落ちた。
「……これはこれで拍子抜けだわ」
「――なんか詰めとく?」
「そのまま! そのままで!」
傷口を魔法で繋いで、俺はようやく卑猥なポーズから解放される。
ベルがもつその種は以前俺がロレンシナで捕まったときのもので、俺に植え付けた時の状態のままでそこにあったようだ。ランビルドに植え付けられた時のまま、何も変わらない形をしていた。
「へぇ、これが種なんだ。ひんやりしてるし変な形してる」
「あまり長く持つと侵されるぞ。早く迷宮に植えよ」
「えっ!? それはヤだな……」
ベルはラスキーさんの助言通りさっさと床に種を植える。すると、先ほどヴァルギーナを襲った白い触手が再び何本か飛び出し、種のあった場所を掘り返しては飲み込んでそこそこ大きなへこみを作り出した。
「うまく、いったのか?」
しばらく待つと、再びそのへこみから白いものが飛び出してきた。触手かと一瞬身構えたが、触手ほど細くはなく、また腰のあたりまで出っ張るとピタリと伸びるのが止まってしまう。
「うわっ!? って、触手にしてはでかくないか?」
それは人の下半身ほどある大きさの突起物で、巨大な桃のような様相をしていた。
軽く触ってみるとほのかに温かく、触り心地もすべすべてとても気持ちいい。
だが、これをどうすればいいかは俺には見当がつかない。
「……ねえ、これって」
「妾らのにそっくりではないか」
「ってことは、ディーやんの出番やな?」
「――私たちでは無理そう」
「ディグ殿、ここはひとつ、ずぶっと!」
……やっぱりそうなるの?
「ちょ、ちょっと待ってくださいね。そんなすぐにベストな状態にはならなくて……」
俺はその白い突起物に手を添える。
『きゃっ! どこを触ってるんですか!』
「うわぁ! ごめんなさい!」
って、もう起動してるじゃん。
「あー、えー、と、空の迷宮さん?」
『はい、なんですか?』
「俺たち、あの地上に帰りたいんだけどできる?」
『地上、ですか?』
「そう!」
『どちらのほうですかね?』
「どちらって……」
俺は再度空を仰ぎ見る。
「――へえ、大陸がいくつかあるよ?」
「え、え、え?? 某らの住む大陸はどれでござる?」
「これ、何気に大発見ではないか? ギルドにどう報告するべきか……」
頭上に浮かぶ世界の形はすっかり遠く、小さくなっていた。
俺たちの住んでいた大陸以外に、見えるだけで三つはある。もちろん、帰るのは……
「あの大陸。この迷宮が生まれた、俺たちの故郷がある場所だ」
『了解です。それじゃあ……』
「帰ろう、俺たちの世界に!」
『種の注入をお願いします~』
……結局そうなるんじゃんか!!
「うっわぁ……」
誰かは悲鳴を、誰かは嬉しそうな、そんな賛否両論の声があちこちから上がる。
それは明らかにヒトのサイズと異なり、しかし同じような機能を持つかのように脈打っている。
「ふ、ふふ、ふっふっふはははははは……」
それに気づいたか、あるいは今、目が覚めたのか。
シンボルを持つ主がゆっくりと頭をもたげた。うっすらと笑みを浮かべつ奇妙な起き上がり方で身を起こし、己の体に起こった変化に心なしか満足げだ。
「ようやく『接続』が終わった。これで余の肉体が完全な形で支配下に収まった、というわけだ」
「あっ、俺が奪った分!?」
恐らく俺たちがここへ来る際に使った原初の肉体が、ヴァルギーナの支配下に堕ちたのだろう。あのデカイのはその証拠というわけだ。
「陽と陰。二つの性が合わさって初めて余の力は完全なものになり――」
「――さ せ な い !」
ふわりと陰が舞った。
一人の少女がヴァルギーナの頭上から舞い降りると、自身の中へヴァルギーナのシンボルを落下に任せてずるりと一気に沈み込ませた。
「んぐううおおおおほおあああぁぁぁっっ!!」
「く、クリスちゃん!?」
「クリストリス!!!」
「ふふん、待ってたわお母様! あなたが肉体の制御権を奪取する瞬間、私の支配を緩めるこの時を!!!」
「ん、っぐ! は、離れろっ、このゴミが! んぁぎゅううぅぅ!!??」
クリストリスは振り払おうと腰を振るヴァルギーナに振り落とされないと、足を絡めてさらに深くねじ込む。その動きが逆にクリストリスのナカにはいってしまったモノに強烈な刺激を与えてしまい、さらにヴァルギーナは悶絶する。
「お父様、一つ、嘘をつきました。私のこの体はお母様―― ヴァルギーナから生まれ、その精神はヴァルギーナが組み立てました。未来から来たわけではありません」
徐々に娘の息が上がる。俺の目から見えない角度で何か行われているようだ。……くそ、体が動かない!
「だけど、この魂…… お父様の娘としての魂は、この時のためにやってきました!」
「な、なんだって!?」
「ふ、ふざけるな! 余であってもそんなことは……」
「ええ、そう。けど、お父様は繋いでくれた。血の継承を」
クリストリスがぐにゃりと歪む。それは勇者だけが持つ力の証。かつて勇者が魔王の力を削ぎ、肉体と精神を分け隔てた時に使った力だ。
魔王の力を打ち消して、自らが……
自らが、魔王となって肉体を乗っ取る力。
「ま、待て! クリストリス! その力をそのまま使えば!」
過去、勇者は魔王の肉体を乗っ取った後、あの原初の迷宮へと一人降り立ちその肉体を封印した。その後はレスクス城であった通りだ。
つまり―― 死ぬ。
「いいんです! ……いいんです。どうせ、生き残ることはできません。命を燃やし尽くして、本当の平和な世界を、お父様たちが皆さんと過ごせることが私の願いです!」
母娘の繋ぎ目から赤い印が地面へと伝う。しかし、それは床に触れる前にかすれて消える。既に彼女たちはこの世界の住人ではないのだ。
「クリスちゃん、体が……」
「私の最後の力で、お母様を『世界の外側』へ連れて行きます。私が勇者の力を行使すれば、この時代における迷宮の力と反発してこうなることは、分かっていました」
ベルが俺を見る。その悲痛な顔に俺はただ首を縦に振ることしかできない。事前に教授と話していた流れとは違った形ではあるが、我々は彼女と生きる時間を異にする存在だ。どこかでこうなることは分かっていた。
でも、俺の頬を伝うしょっぱい水は、そんな理不尽を理解してくれない。
「お父様、信じてくれてありがとう。育ててくれてありがとう」
「ええい、くそ、力が、抜けっ! 離せ、離れんか! うおおおおおお!!! んぐっ!?」
徐々に二人の姿が眩い光を放ちつつ消えていく。周囲の光が、クリストリスの放つ引力に歪められて吸い込まれては乱反射してまた輝く。
「なんで…… こんなにきれいなのに」
俺は掛ける言葉が見つからない。
彼女でなければ、この戦いの勝利は成せない。もうあの力を取り戻したヴァルギーナを倒せるものは、もうここにいないのだから。
「クリスちゃん!」
ベルが叫ぶ。
片腕はクリストリスに向かって、もう片方は自分のお腹を押さえながら、ひときわ大きな声で彼女に伝えた。
「絶対、あたし、あなたを産むから! またあなたに会うから!!」
クリストリスは、ニコッと微笑んだ。
口は何かを伝えようと動いていたが、もう何も聞こえない。言えなかったのか、あるいはもう届かないのか。
しかしそれでもクリストリスは満足げに微笑んだ。その時目じりに浮かんだ彼女の涙が顎を伝い、今度はぽたり、と地面に落ちた。
「……」
ぷつん、と空間が閉じた。
後に残されたのは、ひんやりとした空気だけ。
「……おわ、った?」
気が付くとその場にいた全員がただ泣いていた。ほんのわずかな間だったけど、クリストリスが残したものは、確かにここに有った。
それだけで、俺はなんとなくまた会える気がした。
「――ディグちゃん、これからどうする?」
若干鼻声のマイナさんが俺に声をかけてきた。
俺は空を仰ぎ見る。机の上でよく見る見慣れた地形に嬉しいような怖いような感情が胸をいっぱいにする。俺たちは、あの大地に戻らないといけない。
「帰れるかな? 俺たち」
「それより、この迷宮はどないなってんねん。浮かんでるんやろ? 核になっとった魔王も居らんくなったし、放っとくわけにもいかんし……」
イレーナさんの言う通りだ。
帰るだけなら、俺が転送円を開けてしまえば解決する。とはいえこんなに離れた状態で地上に繋がるかどうかは分からないが。
問題は、この迷宮をこのままにしていいかどうかだ。
「放置は―― しない方がいい。できるだけ、ギルドの管理下に置くべき」
「そうは言うでござるが、これをもう一度地上に戻すには迷宮が生きていないと難しいでござる。某らではこの迷宮を動かすことなど不可能である故……」
「死亡した既存の迷宮を生き返らせるというのか? 聞いたことのない話ぞ」
俺も聞いたことがない。
『ぼくも知らないな。キミがまた産めばいいんじゃないか?』
「馬鹿言うな。そもそもクリストリスだって外部から入ってきたんだ。そうそう核が俺の中に……」
あったわ。
そういえば、まだ俺のタマの中に一個、残ってるはず。
「な、なあベル」
「なに?」
「ちょっと、だしてほしいものがあるんだけど」
「何をだせばいいの?」
「ココの中に入ってるやつ」
俺は自分の股間を指す。
「……あんたねぇ」
「違うって! いやめちゃくちゃその通りなんだけど、そう言う意味じゃなくて、外科的に取り出してほしいんだって!」
「……え? 中身を直接裂いて、ってこと?」
「そうそうそうそう!!」
「正気? クリスちゃんに会えなくなるわよ?」
「だから、そっちじゃなくてこっちの方だよ! ちょっと前にランビルドに迷宮の種をここに植えられたんだって!」
ベルはいぶかしげに俺の袋をまさぐる。ころころと何度か左右を触り比べて片方が明らかに別の形状をしているのに気が付いてくれた。
……まあ、普段も触って比べるなんてことはしないしな。
「ほんとだ。なんで気が付かなかったんだろ?」
「え、本当なの? 妾にも確認させよ」
「どれどれ、ふむふむ?」
「ディグ殿、硬くされると、ちょっと、困るでござるよ」
「じゃあみんなで触らないでくださいよ!」
「だってずるいやん。なくなるんならわっちも触っときたいし」
ひとしきりみんなが触った後で、ようやくベルが摘出の準備に入る。
俺はあられもないポーズで下半身を晒し、夜中の戦いよりも恥ずかしい状態を余儀なくされた。
「覚悟はいい?」
「もともとなくなってたんだし、仕方ないよ」
「やっぱり取っちゃうと量が減ったり―― するのかな?」
「そもそも迷宮の種は人の種を作ったりしてないはずだから、ディグはずっと一個であの量を作ってたことになるわね」
「一個で、あの量を!? ……流石でござる」
「早くして! なんだか怖い!」
ベルは自分のマナを鋭いナイフに変えて俺の袋に切れ目を入れる。すると、袋に収まっていた種はまるで今出ることを知っていたかのようにすんなりとベルの手のひらに転がり落ちた。
「……これはこれで拍子抜けだわ」
「――なんか詰めとく?」
「そのまま! そのままで!」
傷口を魔法で繋いで、俺はようやく卑猥なポーズから解放される。
ベルがもつその種は以前俺がロレンシナで捕まったときのもので、俺に植え付けた時の状態のままでそこにあったようだ。ランビルドに植え付けられた時のまま、何も変わらない形をしていた。
「へぇ、これが種なんだ。ひんやりしてるし変な形してる」
「あまり長く持つと侵されるぞ。早く迷宮に植えよ」
「えっ!? それはヤだな……」
ベルはラスキーさんの助言通りさっさと床に種を植える。すると、先ほどヴァルギーナを襲った白い触手が再び何本か飛び出し、種のあった場所を掘り返しては飲み込んでそこそこ大きなへこみを作り出した。
「うまく、いったのか?」
しばらく待つと、再びそのへこみから白いものが飛び出してきた。触手かと一瞬身構えたが、触手ほど細くはなく、また腰のあたりまで出っ張るとピタリと伸びるのが止まってしまう。
「うわっ!? って、触手にしてはでかくないか?」
それは人の下半身ほどある大きさの突起物で、巨大な桃のような様相をしていた。
軽く触ってみるとほのかに温かく、触り心地もすべすべてとても気持ちいい。
だが、これをどうすればいいかは俺には見当がつかない。
「……ねえ、これって」
「妾らのにそっくりではないか」
「ってことは、ディーやんの出番やな?」
「――私たちでは無理そう」
「ディグ殿、ここはひとつ、ずぶっと!」
……やっぱりそうなるの?
「ちょ、ちょっと待ってくださいね。そんなすぐにベストな状態にはならなくて……」
俺はその白い突起物に手を添える。
『きゃっ! どこを触ってるんですか!』
「うわぁ! ごめんなさい!」
って、もう起動してるじゃん。
「あー、えー、と、空の迷宮さん?」
『はい、なんですか?』
「俺たち、あの地上に帰りたいんだけどできる?」
『地上、ですか?』
「そう!」
『どちらのほうですかね?』
「どちらって……」
俺は再度空を仰ぎ見る。
「――へえ、大陸がいくつかあるよ?」
「え、え、え?? 某らの住む大陸はどれでござる?」
「これ、何気に大発見ではないか? ギルドにどう報告するべきか……」
頭上に浮かぶ世界の形はすっかり遠く、小さくなっていた。
俺たちの住んでいた大陸以外に、見えるだけで三つはある。もちろん、帰るのは……
「あの大陸。この迷宮が生まれた、俺たちの故郷がある場所だ」
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