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10話(2)

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 この村に逃げ込んできたゴブリンが18人。そのうち5人はケガによってそのまま死んでしまった。私達以外の村に逃げ込んだゴブリンもいるだろうし、まだ森をさまよっている子もいるだろうけど、そんなに期待しないほうがいいと思う。


 だから現在この村には逃げ込んできたゴブリンも含めて40人くらいのゴブリンがいる。ただこの数はケガ人や子ども、老人を含めているので、狼と戦えるゴブリンの数は隣村よりも、もっと少なくなる。


 元々50人もゴブリンがいた村を壊滅させる集団だ。こっちにこられたらひとたまりもないだろう。さらに悪いことにこの村は隣村からそこまで離れていない。群れの巣にもよるが、次に襲われるのがここであるという可能性は高い。


 みんな言わないだけで理解しているのだろう。それにいまここに集まっている人たちもその可能性を考慮してこれからどうするかを話し合っているみたいだ。


 「どうするリーダー。戦っても勝てないぞ」


 「だが、動けない奴もいる。見捨てるなどできるか。それにどこにいくというのだ」


 「だが、ここにいても全滅は時間の問題だろう」


 ゴブリン達が興奮しながら今後について話し合っている。私はそんな会話を聞き流しながら洞窟を出た。ほんとうは会議に参加して一緒に今後のことを考えた方がよいのだろうが気分がのらなかった。


 ・・・木の実を持ち帰る際、シルバーウルフに噛みつかれ叫ぶ仲間の姿と洞窟にのこされたちいさな赤ちゃんの手の光景が頭の中に映像としてながれてくる。


 一番よいのは逃げることだと思う。たくさんのゴブリンを見捨てるはめになるし、今後の保障は一切なけれど、全滅は確実に回避できるだろう。論理的に考えれば、それが最善。


 でも、それは私は嫌だった。例え逃げたとしても、逃げた場所で私達はきっと別の何かに怯えながら生きなければいけなくなる。同じような悲しみを、恐怖を感じ続けながら、仲間を見捨てて生き延びるの?そんなことはしたくない。そんな生活は辛いだけだよ。


 ゴブリンは弱い。弱いから強い奴に食べられてもしかたがない。そんな理不尽な状況そのものをぶち壊してやりたい。


 でも、どうする?シルバーウルフは強くてゴブリンなんかじゃ敵わない。頑張ろうといくら息込んだ所で覆る戦力差じゃない。


 どれだけ走ろうとも速度では敵わない。
 それだけ鍛えようとも力でも敵わない。


 不利な戦いをしてはだめだ。勝つためにはこちらの得意を押しつけてやる必要がある。ゴブリンがシルバーウルフに勝っているもの、私達の得意。


 ・・・そうだ、やっぱり道具だ。道具をつくろう。


 元々ゴブリン達は簡易な柵くらいはつくれたのだ。それに教えればちゃんと土器も作り扱おうとしてくれている。そして道具を作って使うことはシルバーウルフにはできないことだ。道具を作り、使う。それが私達の得意分野。


 うん、そうなったら急がないといけない。あまり時間は残されていないのだ。覚えていろよ、オオカミども。弱い奴の弱い奴なりの戦い方をお前達に教えてやる。
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