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第14話 美女を思い切り抱き締める
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まさかの親睦会中に新しい仲間を迎えるという展開を終え、俺達は現地解散した。
ラメセスもコンスタスも、それぞれこの街に自分の住まいがある。
また明日の10時にギルドに現地集合することで落ち着いた。
俺はというと、実家に戻るつもりはない。
もう自立してしまった身としては、自分で生活し、ひとりの冒険者として生き抜いていきたいのだ。
今からでも泊まれる宿屋でも探そう。
「で、シャロットはどうして俺の隣を歩いているのかな?」
ひとりで宿屋に行くつもりだった。
なんとなく、異世界をひとりで生き抜くことに憧れを抱いていたからだろう。別に美女とふたりで、なんてミジンコも思ってない。
シャロットは俺の腕をしっかりホールドし、柔らかい胸で包んでいる。
なんだろう?
もう彼女を親友と認識してしまっているせいか、まったく聖剣エクスカリバーが反応しない。それに、心臓の鼓動も平常運転だ。
今日の朝の時点ではまだドキドキしてたのに。
これが慣れというものの恐ろしさなのかもしれないな。
「勿論、これからは毎日一緒ですよ。それにしても、レッドくんは少々浮気っぽいみたいですね」
「なぜ?」
「たった1日でふたりもパーティに入れるだなんて、男たらしだと思います」
「仕方ないだろ。入りたいって言ってきたし、強いし。断る理由なんてないじゃないか」
俺の超正論に、頬を膨らませるシャロット。
しかしながら、俺はこれで懲りたとは思いません。
彼女はこれしきで終わる女ではないのだ。
「私はレッドくんのことが大好きなので、あなたの選択は尊重します。ですが、今日は私以外の人と話した分、構ってくれていない時間が増えた、ということですよね?」
絶対彼女にしたくない系女子。
たとえ美女でも、清楚系でも、いい匂いでも、自分に好意を向けてくれていても、嫌だ。ヤンデレとかメンヘラとかって、本当にいるんだな。
「ですから、責任を取って今後は同じベッドで寝てもらいます」
「わかった」
どうにでもなれと頷く俺。
何を言っても聞いてもらえないだろう。
だったらここはオーケーしておいて、油断したところで逃げ出せばいい。
「ちなみに、今日は罰として、私と手錠で繋がれた上に服を脱がされた状態で寝てもらいますので」
「──ッ」
俺は全速力で走り出した。
かけっこなら負けることはない。
当然シャロットも足は速く、学院の女子の中では飛び抜けていたものの、それはあくまで女子の中での話。男子が加われば、せいぜい10位くらいだ(それでもめっちゃ凄いけど)。
俺はいつも1位だった。
でも──。
「うああああ!」
全身に電撃が走る。
筋肉が悲鳴を上げ、脳が一時的にパニックを起こす。
手足が痺れているので、体を思うように動かせない。力が入らない。人形のように倒れ、勝ち誇った笑みのシャロットを見上げる。
今の俺の顔には、初めてともいえる憎しみが浮かんでいるだろう。
俺は鍛えているので、簡単に死にはしない。
電撃をこの程度浴びたくらいで、死ぬことはないし、後遺症が残ることもないと思う。
でも、痛いのは痛い。
それはこの女の仕業なのかぁぁぁぁああああ!
「何してくれてんだぁぁぁぁああああ!」
前世を含め、ここまで感情的にキレたことはない。
なんだかすっきりした。
いつか本気でシャロットを怒鳴りたいとも思っていたし。てか、今の俺、結構クズなこと言ってない?
「愛の束縛魔法です」
俺を見下ろす金髪の美女は、想像以上の狂人だった……。
快晴の時の青空のように透き通っていた碧眼の奥には、ヤンデレに目覚めた紫の闇が燃えている。その恐ろしい闇でさえもハートマークになっていることがさらに恐怖を引き立てた。
俺、このままナニされるんだろう?
悔しい!
俺だってできるものならシャロットに怒りの爆撃魔法をぶち込んでやりたい。
でも、女性に暴力を振るうなんていうのは、本当のクズがすることだ。我慢するしかない。
男女平等であるべき世の中。
女性の社会的地位は低い、なんて言われている。確かに、それを平等にすることは大切だ。
男女関係なく、正当に評価すべきだ。
でも、俺が言いたいのは、こういう時に限って女性の権利がどうとか、男としてどうとかいう概念があるのは、問題大アリだということだっ!
レディファースト、とか。
「お前が男だったら剣で斬ってたところだ」
とりあえず、思い切り睨んでおく。
「か弱い女性を気遣うレッドくん、素敵ですね」
「うるさいわっ!」
「ダーリン、宿屋に行きましょうか」
──屈辱。
この一言に尽きる。
***
安く泊まれそうな宿屋は案外すぐに見つかった。
朝食も付いているらしい。
それに加え、銭湯も自由に入れるようだった。この世界でもこんな極楽をしていいのか。
今ふと思った。
冒険者として、いっそのこと本当に旅に出るのはどうか。
自分の好きな『英雄物語』の世界を自由に探索できるのは最高じゃないか。
「ふたり部屋で、ダブルベッドでお願いします」
「いえ、ひとり部屋をふたつ」
「レッドくん、私の提案の方が安く済むことはわかっていますよね? あなたに拒否権はありません」
「かしこまりました。では、楽しい夜をお過ごしください」
「任せてください!」
何が任せてください、だ。
ていうか受付の人も俺の意見は完全に無視していたし。
「私と同じ部屋で、同じ寝台で寝ることが嫌なのですか? こんな美女と一緒に寝れるんですよ」
「あれ?」
ふと思った。
俺は何が嫌なのか。
確かに、美女と一緒に寝るというのは最高のシチュエーション。どうして拒否しているんだ、俺。
シャロットのことは嫌いじゃないし、親友のじゃれ合いだと思えば……。
それに俺はヘタレじゃない。前世でそれなりに経験している。恐れることもない。
でも、俺は……。
「違うな」
「?」
「俺はこんなことのために転生したんじゃない。この状況に流されてしまったら、いかにも普通っぽくはないか……」
「転生とか、何を言って──」
「シャロット、すまない」
「え!?」
自分達の部屋に向かう途中、俺は激しく彼女を抱き締めた。
情熱的に、いかにも恋人っぽく。
シャロットは突然の好きな人からの抱擁に体温を上げ、その急激なヒートショックによって気絶した。
「これだけ愛している人に抱きつかれたら、こうなるよな。罪な男だぜ。イケメンは辛い」
誰かに聞かれたら絶対イタい台詞を堂々と吐く。
そのまま気絶したシャロットを抱え、部屋の中、ベッドに運び込んだ。
寝息を立ててスースー眠る様子を見て、ほっとする。その姿は凄く可愛かった。
「俺は真の愛を求めているんだっ。セルシよ、待っていてくれ!」
またアカン台詞を呟き、この宿屋自体から、俺ことレッド・モルドロスは去った。
《次回断章2 孤独の美少女》
ラメセスもコンスタスも、それぞれこの街に自分の住まいがある。
また明日の10時にギルドに現地集合することで落ち着いた。
俺はというと、実家に戻るつもりはない。
もう自立してしまった身としては、自分で生活し、ひとりの冒険者として生き抜いていきたいのだ。
今からでも泊まれる宿屋でも探そう。
「で、シャロットはどうして俺の隣を歩いているのかな?」
ひとりで宿屋に行くつもりだった。
なんとなく、異世界をひとりで生き抜くことに憧れを抱いていたからだろう。別に美女とふたりで、なんてミジンコも思ってない。
シャロットは俺の腕をしっかりホールドし、柔らかい胸で包んでいる。
なんだろう?
もう彼女を親友と認識してしまっているせいか、まったく聖剣エクスカリバーが反応しない。それに、心臓の鼓動も平常運転だ。
今日の朝の時点ではまだドキドキしてたのに。
これが慣れというものの恐ろしさなのかもしれないな。
「勿論、これからは毎日一緒ですよ。それにしても、レッドくんは少々浮気っぽいみたいですね」
「なぜ?」
「たった1日でふたりもパーティに入れるだなんて、男たらしだと思います」
「仕方ないだろ。入りたいって言ってきたし、強いし。断る理由なんてないじゃないか」
俺の超正論に、頬を膨らませるシャロット。
しかしながら、俺はこれで懲りたとは思いません。
彼女はこれしきで終わる女ではないのだ。
「私はレッドくんのことが大好きなので、あなたの選択は尊重します。ですが、今日は私以外の人と話した分、構ってくれていない時間が増えた、ということですよね?」
絶対彼女にしたくない系女子。
たとえ美女でも、清楚系でも、いい匂いでも、自分に好意を向けてくれていても、嫌だ。ヤンデレとかメンヘラとかって、本当にいるんだな。
「ですから、責任を取って今後は同じベッドで寝てもらいます」
「わかった」
どうにでもなれと頷く俺。
何を言っても聞いてもらえないだろう。
だったらここはオーケーしておいて、油断したところで逃げ出せばいい。
「ちなみに、今日は罰として、私と手錠で繋がれた上に服を脱がされた状態で寝てもらいますので」
「──ッ」
俺は全速力で走り出した。
かけっこなら負けることはない。
当然シャロットも足は速く、学院の女子の中では飛び抜けていたものの、それはあくまで女子の中での話。男子が加われば、せいぜい10位くらいだ(それでもめっちゃ凄いけど)。
俺はいつも1位だった。
でも──。
「うああああ!」
全身に電撃が走る。
筋肉が悲鳴を上げ、脳が一時的にパニックを起こす。
手足が痺れているので、体を思うように動かせない。力が入らない。人形のように倒れ、勝ち誇った笑みのシャロットを見上げる。
今の俺の顔には、初めてともいえる憎しみが浮かんでいるだろう。
俺は鍛えているので、簡単に死にはしない。
電撃をこの程度浴びたくらいで、死ぬことはないし、後遺症が残ることもないと思う。
でも、痛いのは痛い。
それはこの女の仕業なのかぁぁぁぁああああ!
「何してくれてんだぁぁぁぁああああ!」
前世を含め、ここまで感情的にキレたことはない。
なんだかすっきりした。
いつか本気でシャロットを怒鳴りたいとも思っていたし。てか、今の俺、結構クズなこと言ってない?
「愛の束縛魔法です」
俺を見下ろす金髪の美女は、想像以上の狂人だった……。
快晴の時の青空のように透き通っていた碧眼の奥には、ヤンデレに目覚めた紫の闇が燃えている。その恐ろしい闇でさえもハートマークになっていることがさらに恐怖を引き立てた。
俺、このままナニされるんだろう?
悔しい!
俺だってできるものならシャロットに怒りの爆撃魔法をぶち込んでやりたい。
でも、女性に暴力を振るうなんていうのは、本当のクズがすることだ。我慢するしかない。
男女平等であるべき世の中。
女性の社会的地位は低い、なんて言われている。確かに、それを平等にすることは大切だ。
男女関係なく、正当に評価すべきだ。
でも、俺が言いたいのは、こういう時に限って女性の権利がどうとか、男としてどうとかいう概念があるのは、問題大アリだということだっ!
レディファースト、とか。
「お前が男だったら剣で斬ってたところだ」
とりあえず、思い切り睨んでおく。
「か弱い女性を気遣うレッドくん、素敵ですね」
「うるさいわっ!」
「ダーリン、宿屋に行きましょうか」
──屈辱。
この一言に尽きる。
***
安く泊まれそうな宿屋は案外すぐに見つかった。
朝食も付いているらしい。
それに加え、銭湯も自由に入れるようだった。この世界でもこんな極楽をしていいのか。
今ふと思った。
冒険者として、いっそのこと本当に旅に出るのはどうか。
自分の好きな『英雄物語』の世界を自由に探索できるのは最高じゃないか。
「ふたり部屋で、ダブルベッドでお願いします」
「いえ、ひとり部屋をふたつ」
「レッドくん、私の提案の方が安く済むことはわかっていますよね? あなたに拒否権はありません」
「かしこまりました。では、楽しい夜をお過ごしください」
「任せてください!」
何が任せてください、だ。
ていうか受付の人も俺の意見は完全に無視していたし。
「私と同じ部屋で、同じ寝台で寝ることが嫌なのですか? こんな美女と一緒に寝れるんですよ」
「あれ?」
ふと思った。
俺は何が嫌なのか。
確かに、美女と一緒に寝るというのは最高のシチュエーション。どうして拒否しているんだ、俺。
シャロットのことは嫌いじゃないし、親友のじゃれ合いだと思えば……。
それに俺はヘタレじゃない。前世でそれなりに経験している。恐れることもない。
でも、俺は……。
「違うな」
「?」
「俺はこんなことのために転生したんじゃない。この状況に流されてしまったら、いかにも普通っぽくはないか……」
「転生とか、何を言って──」
「シャロット、すまない」
「え!?」
自分達の部屋に向かう途中、俺は激しく彼女を抱き締めた。
情熱的に、いかにも恋人っぽく。
シャロットは突然の好きな人からの抱擁に体温を上げ、その急激なヒートショックによって気絶した。
「これだけ愛している人に抱きつかれたら、こうなるよな。罪な男だぜ。イケメンは辛い」
誰かに聞かれたら絶対イタい台詞を堂々と吐く。
そのまま気絶したシャロットを抱え、部屋の中、ベッドに運び込んだ。
寝息を立ててスースー眠る様子を見て、ほっとする。その姿は凄く可愛かった。
「俺は真の愛を求めているんだっ。セルシよ、待っていてくれ!」
またアカン台詞を呟き、この宿屋自体から、俺ことレッド・モルドロスは去った。
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