【完結】メインヒロインとの恋愛フラグを全部ブチ壊した俺、サブヒロインと付き合うことにする

エース皇命

文字の大きさ
5 / 39
プロローグ

第5話 天然兼ボーイッシュ兼オタクのヒロイン

しおりを挟む
「問題になるかもしれないし、女子トイレ行った方がいいよ」

「……」

「もう1回聞くけど、なんで男子トイレに?」

 休み時間にトイレに逃げ込もうとしたら、自分を男だと言い張る系ヒロインに出会ってしまった。

 それも男子トイレで。

 彼女の名前は空賀くが栗涼くりす

 ボーイッシュで清涼感のあるサブヒロインである。
 クラスは隣だ。
 2年A組。

 爽やかショートカットの美少女で、中性的な顔立ち。

 イケメンの風格があるので、女子生徒からとても人気だ。

 何度か廊下ですれ違ったことはあるものの、モブの俺が彼女と話すことはなかった。
 ドラマでは夏休み以降に接触するサブヒロイン。

 実はアニメ・漫画オタクの空賀は、俺が彼女の推しキャラのグッズを持っていたことを知って気になり始める……。

「興味があったんだ」

 空賀がどんなヒロインなのか勝手に回想していると、顔を紅潮させたままの空賀が恥ずかしそうに言ってきた。

 凄く可愛い。

 付き合いたい。

「ボクは中性的だから、男子トイレに入っていてもバレないかもしれないと思って」

「なるほど。それで男子トイレに」

 納得する流れだが、全然納得できない。

 頭がおかしいとしか言いようがない。

「そもそも、みんな空賀さんが女子だって知ってると思うよ」

「そうなのかな?」

「いや、そうでしょ」

 思い出した。

 コイツはヒロインの中で最も頭が悪い。
 普通の人間が考えられるようなことも、彼女の頭は思い付かない。

 いつも寝てばかり猫系ヒロイン猫音子ねねこさんに学力で遥かに劣っている。

「でもボク、たまに街とか歩いてたら女子からキャーキャー言われるし、この前女友達から告白されて――」

「わかったから、早くここを脱出した方がいいと思うけど」

 これは助け舟だ。

 もしこの状況で俺以外の男子生徒がトイレに来たら、空賀が頭のおかしい変態だっていうことがバレてしまう。

 いや、もしくは俺が無理やり男子トイレに引き連れたとか勝手に言われて、被害を受けることになる?

 その方が可能性が高いような気がしてきた。

 俺はモブだし、他の連中もモブだ。
 モブとモブの間に信頼はない。

 悲しいが、それが現実。

 いつでもヒロインが優遇される。

「俺やっぱ、見なかったことにして教室戻るね」

 元々トイレしたかったわけじゃないし、問題ない。

「待って」

「ん?」

「なんでボクの名前知ってたの?」

「そりゃあ、結構有名だし?」

 嘘じゃない。

 実際のところ、彼女は男子からもそこそこ人気だ。ああいうボーイッシュな女子が一定数の男子に刺さるのは世界の常識。

「そうなの?」

「そうそう。じゃあまたね」

 問題に巻き込まれないために、トイレを去りたい俺。

 しかーし、そんな俺をガシッとつかんで離さない空賀。

 ボーイッシュガールとはいえ、彼女はやっぱり女の子で、肌もすべすべだし、柔らかい。
 付き合いたい。

「その腕時計、『ダンラブ』に出てくるヤツだよね?」

 何を言われるのかと思えば、俺の腕時計に関することだった。

 『ダンラブ』っていうのはエース皇命こうめいのライトノベル、『ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)』のことだ。
 俺の腕時計は、主人公の黒瀬くろせ才斗さいとたち主要キャラが身につけている特殊な腕時計と同じデザインのものだった。

 抽選で手に入れた限定アイテム。

 ついに気付いたか……。

「まあ、そうだけど」

 相手の食い付きに対し、さほど気にしてない素振りを見せる。

「じゃあ、『ダンラブ』好きなの?」

「それなりには」

「ほんとに!?」

 完全に目を輝かせた空賀。

 これでちゃんとした接点ができたぞ。
 あとは距離をどんどん縮めていくのみ。

 最近『ダンラブ』を読んでなかったので、しっかり読み直して空賀のオタク会話に対抗しよう。

「ボクの推しは龍河りゅうが様なんだけど……えーっと……キミ……名前は?」

 そうなるよね。
 ヒロインである空賀がモブの名前を覚えているわけがない。一応、モブという名のラノベ主人公なんだが。

「俺は風野かぜの白狼しろう

「白狼! あ、ボクのことは栗涼でいいよ」

「わかった」

「それで、白狼の推しキャラは?」

「あー、俺は剣騎けんきかな」

「いいよね! 【ウルフパック】の冒険者って、みんなかっこよくて――」

 話が盛り上がってきて嬉しいんだが、そろそろトイレを明け渡した方が良さそうだ。

『ごめん』

 すっと横を通っていく男子生徒。

 同じクラスだと思うが、名前は覚えてない。なぜから、彼もまたモブだから。

 いかにもモブらしく、ごめんの一言で俺と栗涼が生み出すヒロインとの交流イベントを通過した。

「それじゃあ、ボク、そろそろ行くね」

「え、あ、うん」

 急な切り替え。

 俺が困惑していると、ささっと自然な感じで男子トイレを出ていった。
 凄いね。

 ついでに通りすがる女子生徒から変な目で見られていたような気もするが、頭が空っぽの栗涼は気付いていなかった。



 ***



 夏休み明け初日。

 この1日で、全てのヒロインとの接触を終えた。

 問題はここからである。

 早速明日からは、体育祭に向けての練習が始まると聞いた。朝から放課後まで、クラスメイトと一緒に過ごすことになる。

 それはつまりメインヒロインの水越みずごしとの恋愛イベントが起きる可能性があるということ。

 作者の気まぐれで水越とダンスのペアを組まされたり、偶然同じ競技にエントリーしていたり……。

 俺に与えられた任務は過酷だ。

 メインヒロインとの恋愛イベントを全て回避し、3人のサブヒロインとの恋愛イベントを積極的に起こさなくてはならない!

 明日からの過酷な学校生活を前に、俺の胸は高鳴るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

恋人、はじめました。

桜庭かなめ
恋愛
 紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。  明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。  ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。 「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」 「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」  明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。  一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!  ※夏休み小話編2が完結しました!(2025.10.16)  ※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想などお待ちしています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。

久野真一
青春
 羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。  そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。  彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―  「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。  幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、  ある意味ラブレターのような代物で―  彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。  全三話構成です。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処理中です...